第4話『のっぺらぼう』
1. 『のっぺらぼう』終電の女
終電のホーム。向かいに立つ女。顔が、ない。は?いや、あるでしょ。影になってるだけ。でも振り向いても、ない。つるんとしてる。卵みたい。気持ち悪い。目を逸らす。また見る。やっぱりない。眉も鼻も口も。なんで普通に立ってるの?周りの人は気づいてない?私だけ?疲れてるのかな。帰ろう。でも背中がぞわぞわする。
2. 『のっぺらぼう』見間違い?
昨日のあれ、なんだったんだろう。疲れてたし。残業続きで幻覚とか?ありえる。顔のない人なんているわけない。マネキンと見間違えた?でも動いてたし。服も普通だったし。OLっぽい紺のコート。ヒールの音も聞こえた。生きてる人間。ただ顔だけが。いやいや、考えすぎ。今日は早く帰ろう。ゆっくりお風呂入って寝よう。
3. 『のっぺらぼう』同じコートの女
また いた。同じコート。同じ場所。顔は、やっぱりない。つるつる。肌色の何か。顔があるべき場所に肌色の曲面。髪はある。黒くて長い。私と同じくらい。背格好も似てる。でも顔だけが。怖い。なんで誰も気づかないの?すれ違う人たち、普通に歩いてる。私がおかしいの?でも確実にない。顔が、ない。
4. 『のっぺらぼう』振り向かないで
今日も同じホーム。来る前から分かってた。いる。でも見たくない。視界の端に紺のコート。顔は見ない。絶対見ない。でもなんでか体が向いちゃう。ダメ、見るな。足早に反対側へ。階段を上がる。振り返りたい衝動。我慢。でも足音が。カツカツって。ついてきてる?振り向かない。振り向いたら、何かが終わる気がする。
5. 『のっぺらぼう』エレベーターで二人
会社のエレベーター。乗ったら、いた。顔のない女。逃げられない。扉が閉まる。二人きり。息が詰まる。顔を見ないようにスマホ見る。でも画面に映る。真後ろに立ってる。顔の部分だけぼやけてる。いや、ぼやけてるんじゃない。ないんだ。10階まで永遠に感じる。やっと着いた。飛び出す。振り返ると、もういない。
6. 『のっぺらぼう』鏡に映らない顔
トイレの鏡。手を洗ってたら隣に来た。あの女。鏡を見る。私の顔は映ってる。でも隣の女の顔だけ、ない。体は映ってる。服も髪も。でも顔の部分だけ、何もない。透明じゃない。ただ、映らない。でも直接見るとつるつるの肌色。鏡が壊れてる?違う、私は映ってる。じゃあなんで?手が震えて水をこぼした。
7. 『のっぺらぼう』触れた手
電車で隣に座られた。逃げたいけど満員。腕が触れる。冷たい。でも人間の温度。つり革を掴む手が見える。普通の手。指輪もしてる。ネイルも。普通の女性の手。でも顔を見ると、ない。なんでそんな普通にしてられるの?新聞読んでる。どこで見てるの?目がないのに。でも確かにページをめくってる。理解できない。
8. 『のっぺらぼう』同じ香水
気づいてしまった。あの女、私と同じ香水つけてる。すれ違うたびに香る。間違いない。去年の誕生日に彼氏にもらったやつ。限定品のはず。なんで同じ?偶然?でも他にも同じものが。バッグも見覚えがある。靴も。まるで私の持ち物を真似してる。いや、真似?それとも。怖い考えが浮かぶ。違う、考えすぎ。
9. 『のっぺらぼう』カフェの隣席
行きつけのカフェ。いつもの席。コーヒー飲んでたら隣に座られた。あの女。もう驚かない。でも不快。私の場所なのに。注文する声が聞こえる。「同じものを」って。は?私と同じ?実際、同じものが運ばれてきた。飲む仕草。でも口がないのに。カップを顔に近づけて、傾けて。でもどこに入ってるの?消えてる。コーヒーが消えてる。
10. 『のっぺらぼう』話しかけられた
「あなた、私に似てるわね」声が聞こえた。どこから?口がないのに。でも確かに聞こえた。振り向く。顔のない面がこっちを向いてる。向いてるって分かる。なんで?「特に顔が」は?顔?どの口が言ってるの?「そのうち分かるわ」何が?聞き返したいけど声が出ない。女は立ち上がって去っていく。私、震えてる。
11. 『のっぺらぼう』友達の反応
「最近顔色悪いよ」ランチで友達に言われた。顔色?普通だと思うけど。「なんか薄い感じ」薄い?どういう意味?「疲れてる?」まあ、疲れてるけど。「化粧も薄くない?」え、いつも通りだよ。鏡を出して確認。あれ?確かに薄い。ファンデーション塗ったのに。「大丈夫?」大丈夫じゃないかも。最近変なこと多いし。
12. 『のっぺらぼう』化粧が落ちる
朝、完璧にメイクした。ファンデ、チーク、アイシャドウ、口紅。でも会社着いたら「今日すっぴん?」って。は?トイレで確認。落ちてる。全部落ちてる。化粧直し。でも昼にはまた。「顔色悪いよ」って。なんで?ウォータープルーフなのに。夕方にはもう諦めた。どうせ落ちる。つけても無駄。顔が化粧を拒否してる。
13. 『のっぺらぼう』写真がぼやける
インスタに自撮りアップしようとした。でも顔がぼやける。ピントが合わない。背景ははっきり映るのに。違うアプリでも同じ。友達との写真見返したら、私の顔だけぼんやり。最近のも昔のも。デジタルも紙焼きも。なんで?スマホ壊れた?でも他の人の顔は普通に映る。私の顔だけ。認識されない。カメラが私の顔を拒否してる。
14. 『のっぺらぼう』彼氏の視線
デートなのに彼氏が目を見てくれない。ずっと下向いてる。「どうしたの?」「いや、なんでも」嘘でしょ。「私の顔、どこか変?」「...変じゃないよ」でも見ない。食事中も映画でも。手は繋いでくれる。でも顔は見ない。「ねえ、こっち見て」「...うん」一瞬だけ視線が合う。でもすぐ逸らされる。何を見たの?
15. 『のっぺらぼう』母の電話
「あんた?」母からの電話。声が違うって。「風邪?」ううん、元気だよ。「なんか違う」何が?「声じゃないみたい」は?私の声だよ。「知らない人みたい」ひどい。実の娘なのに。「顔見せに帰ってきなさい」顔?なんで急に顔?「心配だから」心配されることなんて。でも母の声も震えてる。何か感じ取ってる?
16. 『のっぺらぼう』免許証の顔
財布の中の免許証。顔写真が薄れてる。3年前に撮ったやつなのに。輪郭はある。でも顔のパーツが薄い。目も鼻も口も、あるようなないような。更新はまだ先なのに。パスポートも確認。同じ。学生証も。すべての証明写真が薄れてる。私を証明するものが消えていく。私は誰?この薄れた顔の人は誰?
17. 『のっぺらぼう』朝の儀式
毎朝、顔を確認する。目がある?ある。鼻は?ある。口は?ある。でも昨日より薄い気がする。輪郭をなぞる。ちゃんとある。でも不安。5分おきに鏡を見る。変わってない?大丈夫?会社でもトイレに行くたび確認。同僚に変に思われてるかも。でもやめられない。確認しないと、消えちゃいそうで。
18. 『のっぺらぼう』顔を触る癖
無意識に顔を触ってる。鼻があるか、口があるか。指で確かめる。仕事中も、電車でも。「それ、癖?」同僚に指摘された。癖じゃない。確認。でも説明できない。顔がなくなりそうなんて言えない。でも触らずにいられない。ほっぺた、おでこ、あご。全部ある。でも不安。触覚だけが頼り。見た目はもう信じられない。
19. 『のっぺらぼう』マスクが手放せない
マスクしてると安心。顔を隠せる。薄れてても分からない。「まだ花粉症?」って聞かれる。「うん」って嘘つく。本当は顔を見られたくない。家でも外でもマスク。彼氏とのデートでも。「息苦しくない?」苦しい。でも顔を見られる方が苦しい。寝る時も外せない。夢の中で顔がなくなりそうで。
20. 『のっぺらぼう』あの女がまた
どこに行ってもあの女がいる。顔のない女。スーパーで、駅で、公園で。ストーカー?でも向こうから近づいてこない。ただ、いる。視界の端に紺のコート。もう見慣れた。怖くない。いや、怖い。でも諦めた。逃げても無駄。この街のどこかに必ずいる。私を見てる。顔がないのに見てる。何を待ってるの?
21. 『のっぺらぼう』朝起きたら
鏡を見て叫びそうになった。顔が、薄い。透けてる?いや、薄い。目も鼻も口も、輪郭だけ。中身がない。触ると確かにある。でも見た目は薄い。水彩画を水で薄めたみたい。化粧で隠そう。でも乗らない。ファンデーションが顔をすり抜ける。仕事、休もう。でも理由は?「顔が薄いので」なんて言えない。
22. 『のっぺらぼう』化粧で描く顔
もう下地なんていらない。顔に直接描く。眉ペンシルで眉を。アイライナーで目を。口紅で唇を。まるで絵。のっぺらぼうの上に顔を描く。これでいい。これで人間に見える。でも汗で流れる。描き直す。また流れる。防水使っても無駄。私の顔は何も受け付けない。でも描かないと。顔がないと外に出られない。
23. 『のっぺらぼう』同僚の沈黙
誰も私を見ない。話しかけても上の空。「聞いてる?」「あ、ごめん」でもまた無視される。存在感が薄れてる。会議でも発言をスルーされる。「さっき言ったんですけど」「え?誰か何か言った?」私だよ。ここにいるよ。手を振っても気づかれない。透明人間じゃない。ただ、認識されにくいだけ。顔がないから?
24. 『のっぺらぼう』名前を忘れられる
「あれ、君、誰だっけ」上司に言われた。3年も働いてるのに。「〇〇です」「ああ、そうだっけ」そうだっけじゃない。毎日顔合わせてるのに。同期も「名前なんだっけ」って。ひどい。でも責められない。私も自分の名前に違和感。本当にこの名前?昔からこの名前?確信が持てない。私は誰?
25. 『のっぺらぼう』声も変わる
電話で「どちら様ですか」って聞かれた。友達なのに。声が違うって。自分でも気づいてた。録音聞いたら別人みたい。高いような低いような。人間の声じゃないような。機械音声?でも私は普通に喋ってる。つもり。でも相手には違って聞こえる。顔だけじゃない。声も私じゃなくなってる。じゃあ私は何?
26. 『のっぺらぼう』手が透ける
顔の次は手。指先から透け始めた。向こうが見える。でも触れる。機能する。でも見た目は透明。ガラスみたい。手袋で隠す。でも暑い。「なんで手袋?」って聞かれる。「冷え性で」って嘘。本当は見られたくない。透けた手。次は腕?足?全身?いつか全部透明になる?見えない存在になる?
27. 『のっぺらぼう』服だけが歩く
鏡に映る私。服だけ。顔も手も映らない。浮いてる服。ホラー映画みたい。でも現実。写真もそう。服だけが写る。集合写真は私の部分だけ服。「加工した?」って聞かれる。してない。これが今の私。服を着た透明人間。いや、透明じゃない。のっぺらぼう。存在するけど見えない。矛盾した存在。
28. 『のっぺらぼう』記憶の中の私
アルバムを見る。子供の頃の写真。あれ?顔が薄れてる。さっきまであったのに。ページめくるたびに薄くなる。赤ちゃんの写真も。七五三も。卒業式も。全部。過去の私が消えていく。思い出の中の顔も曖昧に。私ってどんな顔だっけ?思い出せない。元々なかったような気さえする。
29. 『のっぺらぼう』誰かの顔を借りたい
街行く人の顔が羨ましい。目があって、鼻があって、口がある。当たり前のことが羨ましい。あの顔がほしい。この顔でもいい。誰でもいいから顔をください。マネキンの顔でもいい。絵の顔でも。とにかく顔がほしい。でも無理。私にはもう顔がない。取り戻せない。じゃあ奪うしかない?
30. 『のっぺらぼう』のっぺらぼうの群れ
気づいたら街中にいる。顔のない人たち。最初は一人だった。あの女だけ。でも今は。スーツ姿の男性。制服の学生。エプロンの主婦。みんな顔がない。でも普通に生活してる。買い物して、仕事して。誰も驚かない。これが普通になった。私も その一人。特別じゃない。ただの、のっぺらぼうの一人。
31. 『のっぺらぼう』もう怖くない
慣れた。顔がないこと。最初は恐怖だった。でも今は。朝起きて、つるんとした顔。それが私。鏡を見ても動じない。化粧もしない。する場所がない。でもいい。楽かも。目を気にしなくていい。鼻を気にしなくていい。口紅の色で悩まない。すっぴんもメイクも関係ない。だって顔がないから。
32. 『のっぺらぼう』便利な顔のなさ
気づいた。顔がないって便利。表情を読まれない。嘘がバレない。愛想笑いしなくていい。泣いてもバレない。怒ってもバレない。ポーカーフェイスの極致。相手は私の感情が分からない。でも私は相手の顔が見える。一方的に有利。これはこれで。新しい生き方かも。
33. 『のっぺらぼう』盗む練習
他人の顔を観察する。どんな目?どんな鼻?記憶する。家で練習。顔に描いてみる。あの人の目。この人の口。組み合わせる。私だけのオリジナル顔。でもすぐ消える。定着しない。私の顔は何も受け付けない。でもめげない。いつか完璧な顔を作る。誰のでもない、私の顔を。
34. 『のっぺらぼう』あの女は私
理解した。最初に見た顔のない女。あれは私だった。未来の私。時間がループしてる?それとも予知?分からない。でも確信がある。あの紺のコート、今私が着てる。同じ香水、同じバッグ。すべて一致する。じゃあ私も誰かに恐怖を与えてる?過去の私に?ループは続く。顔のない女の連鎖。
35. 『のっぺらぼう』増殖する私たち
集まり始めた。顔のない者たち。公園に、カフェに、駅に。言葉は交わさない。必要ない。顔がなくても分かり合える。同じ境遇。同じ喪失。群れる必要はない。でも引かれ合う。磁石みたいに。今日は10人。明日は20人。増えていく。顔のない街になる日も近い。
36. 『のっぺらぼう』新しい言語
話さなくても通じる。顔のない者同士。テレパシー?違う。もっと原始的。振動?熱?分からない。でも確実に通じる。「寂しい」「怖い」「でも平気」感情が直接伝わる。言葉はいらない。顔もいらない。新しいコミュニケーション。進化?退化?どっちでも いい。通じればいい。
37. 『のっぺらぼう』昼間も堂々と
もうマスクもしない。隠さない。のっぺらぼうの顔で街を歩く。最初は視線を感じた。でも今は。誰も見ない。見ても反応しない。日常になった。顔のない人。珍しくない。コンビニで買い物。普通に接客される。「ありがとうございました」顔がなくても客は客。人は人。
38. 『のっぺらぼう』顔のある人が怖い
逆転した。顔のある人を見ると不安になる。目が合う。表情がある。読めない。何考えてる?怒ってる?笑ってる?分からない。複雑すぎる。顔のない方がシンプル。余計な情報がない。ピュア。顔のある人は情報過多。疲れる。できれば関わりたくない。同類といる方が楽。
39. 『のっぺらぼう』私は誰でもない
名前も顔も意味がない。私は私じゃない。誰でもない。でも存在してる。矛盾?いや、自由。縛られない。「〇〇さん」と呼ばれても反応しない。それは過去の名前。今の私に名前はない。顔もない。ただ、いる。それだけ。それ以上でも以下でもない。究極の自由。
40. 『のっぺらぼう』顔を分けあう
新しい遊び。今日はどの顔にする?のっぺらぼう同士で相談。「昨日の女性の顔、良かったよ」「じゃあ今日はそれ」イメージを共有。みんなで同じ顔。明日は別の顔。日替わり。飽きない。無限のバリエーション。固定された顔より面白い。これが新しい生き方。
41. 『のっぺらぼう』感染する顔なし
触れた人の顔が薄れる。握手した人。肩が触れた人。気づいてない。でも確実に薄れてる。1週間後にはのっぺらぼう。申し訳ない?いや、仲間が増えて嬉しい。顔のない世界。平等な世界。美醜もない。年齢も分からない。ただ人間。それだけ。理想的かも。
42. 『のっぺらぼう』街の顔が消える
看板のモデルの顔が消えた。ポスターも。広告も。人物の顔だけない。でも誰も気にしない。商品だけ見ればいい。顔は不要。邪魔な情報。マネキンも顔なし。それが普通。顔のない街。効率的。必要な情報だけ。余計な感情を排除。これが進化した都市。
43. 『のっぺらぼう』最後の顔
まだ顔のある人を探す。レア。天然記念物。見つけた。おじいさん。しわくちゃの顔。美しい。複雑。情報の塊。写真撮りたい。でも撮れない。カメラが認識しない。記憶に焼き付ける。最後の顔。もうすぐ消える。貴重。でも邪魔。統一されない。早く仲間に。
44. 『のっぺらぼう』鏡の廃棄
もう鏡はいらない。確認する顔がない。家中の鏡を捨てた。すっきり。見なくていい。確認しなくていい。不安もない。あるがまま。見た目を気にしない生活。楽。本当に楽。なんで今まで鏡に縛られてたんだろう。顔に縛られてたんだろう。解放された。
45. 『のっぺらぼう』名前も消える
自分の名前が出てこない。あれ?なんだっけ。思い出せない。書類にも書けない。サインもできない。でもいい。名前なんて記号。なくても生きていける。「あなた」「わたし」それで十分。個を識別する必要がない。みんな同じ。のっぺらぼう。区別は無意味。
46. 『のっぺらぼう』誰が誰だか
もう見分けがつかない。彼氏も友達も同僚も。みんなのっぺらぼう。声も似てきた。歩き方も。個性が消えた。でも問題ない。誰が誰でも。大事なのは今、ここにいること。過去の関係性は無意味。新しい関係。顔のない者同士の。
47. 『のっぺらぼう』新入社員
新しい子が入ってきた。最初から顔がない。生まれつき?聞かない。聞く必要がない。当たり前だから。顔のない世代。私たちは過渡期。彼らは完成形。羨ましい。悩まなくていい。最初からのっぺらぼう。それが normal
。未来の標準。
48. 『のっぺらぼう』これが普通
いつから顔があったんだっけ。思い出せない。写真を見ても顔はない。昔からない。それが普通。みんなそう。顔?なにそれ。必要?ない。今のままで十分。機能してる。生きてる。それ以上何が必要?顔なんて過去の遺物。進化の過程で捨てたもの。
49. 『のっぺらぼう』快適な無顔
ストレスがない。表情作らなくていい。感情を隠さなくていい。いや、隠す必要がない。読まれないから。プライバシーが守られてる。内面だけで勝負。見た目じゃない。中身。でも中身も似てきた。均一化。それでいい。争いもない。平和。のっぺらぼうの楽園。
50. 『のっぺらぼう』あなたの顔は?
ねえ、あなた。そう、画面の向こうのあなた。今、鏡見て。ちゃんと顔、ある?目は?鼻は?口は?はっきり見える?ぼやけてない?大丈夫?本当に?さっきより薄くなってない?確認して。もう一度。あれ?さっきと違う?気のせい?でも確かめて。毎日。顔があるうちに。なくなる前に。もう始まってるかもよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます