第13回 聖前夜

「もうすぐクリスマスね。今年は美紀が受験だけど、どうする。」

朝食の時、私は、何気なく母、そして妻の顔をして雄二に尋ねた。

「夕方、話がある今日は早く帰る。」

「君たちも同席するんだ。」

そう、娘たちにも声をかけた。

その日は、落ち着かない気持ちで過ごした。小倉からLIMEが

「明日もいっぱい愛し合いましょう。新しいオモチャも。」

と入っていたが返信する気が起きなかった。


 夕食前、家族全員がそろった。

「話って・・・。」

「スマホを出して。」

おそるおそる、テーブルの上に出す。

「これは、預かる。緑、君は、浮気をしているね。」

「え?」

心臓が止まりそうになった。息が詰まる。

「いえ、あの・・。」

「認めなくてもいい。証拠はそろっているから。」

「こ、子どもたちがいるから。」

すると

「ママ、先に気が付いたのは私たちだから。」

「え?」

「化粧が濃くなる、パートの帰りが遅い、おしゃれにもなんか気を使っちゃってアクセサリーなんてつけて。」

思わず、小倉からもらったブレスレットを手で隠す。

「私たちの学校の予定も、前は完璧に覚えていたのに、全然頭にはいってないかんじだったし。」

「真紀が部活が急になしになった時、家に誰もいなくて、帰ってきたママがすごく驚いた顔したって。それで、パパにママおかしいよって教えたの。」

娘たちにも気付かれていた。足がブルブルと震える。

「何か言う事ある?」

雄二が表情を変えずに言った。

「ご、ごめんなさい。」

「とりあえず、この家を出てってもらえるかな。受験を控えた大事な時期に、不倫している母親が家にいて、いいはずないだろう。」

「で、でも・・・行くところが。」

必死で縋ろうとした、

「大丈夫だ、もう、迎えは来ている。」

ガチャリとドアが開いて、私の両親が入ってきた。

「あんた何やってんの!」

「雄二さん、すみませんでした。連れて帰ります。」

「すみません。」


 私は、呆然としたまま、両親に連れられて実家に帰った。



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