第三十三話『聖神晶《ホーリークリスタル》は一人分、知力1は譲る気ゼロ』

 ぼくたちはバイオン司教と共にマルーク教国へと馬車で向かっていた。


「本当にいくつもりですかディルさま」 

 

「ああ、わらわの力を見せつけてやるのだ」  


「見せつけてどーする! あなたは女神でしょ! 相手は本物の聖女ですよ!」


「ん?」


 ディルさまはキョトンとしている。 どうもわかってないようだ。


(......だめだ、知力が減って説明がより難しくなった。 でもおかしいな、もう大量消費がなくなったはずなのに、ディルさまが力を失っているなんて) 


「ディルさま、力はどうですか?」


「ふむ、元気もりもりだ!」


(やっぱだめだ)


「バイオン司教、私はディルティナ教のことをよくしらないので説明をおねがいします」


 カレンがそう聞いた。


「ええ、まず主神、女神ディルティナがおわします。 その下に三柱神、正義の神ロンディオス、愛情の神マルメイア、平等の神ブルングルムがいます」


「へー」


「各国を旅する冒険者さまですと、各地にある神の像はご存じではないですか?」


「ああ、そういえば、石像が町の中央なんかによくあったっけ?」


「そうです。 それぞれの町が自分達を守護する神をまつっておるのですよ」


(そういえば、町で見かけたな)


「バイオン司教、マルーク教国は商人ギルドの影響をうけなかったのですか?」


「あのものたちからの寄付などは拒否しておりました。 商人たちはとても強欲で、清廉、自制、知性を求める我が教の教えと真逆の存在ゆえ」


 そうバイオン司教は怪訝な顔をした。


「ふむ、それでこそディルティナ教よ」


 そう菓子を食い散らかしながら、ディルさまがいった。


(ディルさまはその中のひとつもないだろ。 でも三柱の神か......)


「ディルさま、他の神がいるんですか......」


「いや、わらわ以外の神はしらぬ。 おそらく人々の願望であろうな」


(そうなのか...... 人の願望の神)


「それにしても、メルディ姫までなぜついてきたのですか?」


「いいですの。 城にこもりっきりはたいくつですの」


「そういえば、フリージアさんは? わざわざ忙しいのに呼んでお礼も言えなかった」


「父上とお話ししてましたですの。 支援を約束して今は国にお帰りになりましたの。 あなたには感謝しておりましたですの」


「......そうか、よかった」


「ああ見えて参りました。 あれがマルーク教国です」


 白い壁に囲まれた都市が見えてきた。


「ここが、マルーク教国か......」


 確かに宗教国家らしく、統一感のある白い建物が整然とならぶ。 道にはごみもない。 よくいえば美しく、悪くいえば無機質でもあった。


「あの白い町ににてるね」


(ああ、たしかにミルソダスの町ににているな)


 歩いている人々は姿勢よく、白い服をきて私語もなく歩いている。


「もうすぐ大教会につきます」


 町の中央に巨大な教会が見えてきた。  



「こちらです」


 馬車を降りるとバイオン司教につれられ巨大な教会へとはいる。 周りには信者が列をなしていて、静かに礼拝していた。


「ここが、ディルティナ教の教会か」


「ふふん、すごいであろう」


 ディルさまが胸を張り、鼻高々だ。


(たしかに主神といわれるだけのことはある。 でも本人がこんなだと信者がしれば脱会者が殺到するだろうな)


「あちらに最高司教のワルシャーンさまがいらっしゃいます」


 そうバイオン司教がいう奥の聖堂では、一人の司教が集まる信者の前で話をしていた。


「いま、この世界は我欲と不浄が支配しております。 ディルティナさまの多大なる慈愛と恩寵をもってかろうじて我らは生かされております」


「ふむ、なかなかいいことをもうすな」


 そう菓子をバリバリと食べながらいった。


(慈愛と恩寵じゃなくて自己愛のお調子者だろ)


 説教が終わり、ぼくたちは奥の部屋に招かれワルシャーンに紹介された。



「なんと、これをこの少女が......」


 聖職者らしく厳格さを漂わせるワルシャーン最高司教はディルさまが作り出した魔力結晶をみて、眉をひそめる。


「ええ、私がこの目でみましたゆえ、間違いありません」


(まさか、またディルさまの奇跡をみせないといけないのか。 このままだと知力がゼロになってしまう)


「......ふむ、バイオン司教が嘘をつくはずもない。 ならば奇跡なのでしょうな」


 そう静かにこたえた。

 

(たすかった知力ゼロにはならずにすんだ)


「しかし、彼女もまた奇跡を起こす。 二人の聖女が並び立つなど今までなかったことだ」


 ワルシャーン最高司教も困惑の表情をみせる。


(いや、こっちは偽物なんですけど......)


「あのワルシャーンさま。 その聖女さまはどんな奇跡を、起こしたんですか?」


 カレンがきくと、ワルシャーン最高司教は窓のそとをみた。


「ええ、病のものを癒して回っておられます」


(こっちのより、向こうのがうえっぽい!)


「ワルシャーンさま、一体どうすればよいのでしょうか?」


 バイオン司教は困った顔でワルシャーン最高司教に問いかけた。


「......ふむ、二人の聖女か」


「二人いてはダメなのですの?」


「ええメルディさま、ディルティナ教に伝わる巨大な魔力結晶【聖神晶】《ホーリークリスタル》があります。 それを継がれるのが聖女...... その聖神晶ホーリークリスタルはとても大きな力をおこせますので、二人ではこまるのです」


「よしディルさまここは辞退しましょう」


「なんでだ!? それがあればわらわは、かなり力を取り戻せるのだぞ!」


「ここは自重してください! 相手のほうがふさわしいですよ!」


「なにがだ!! 女神たるわらわの方がふさわしかろうが!」


 ディルさまが叫んだ。


 

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