第十九話『生贄爆誕!スラム潜入と商人ギルドの影』

「それでなにかいいたいことはある?」


 ぼくたち三人は正座させられていた。 目の前には感情がない黒い目でカレンがたち、肩に大剣をのせていた。


「い、いや、あのそうだ! トール、トールがいけないのだ!」


「えっ!? ディルさま!!」


「そうですの! と、トールがいけないのですの!」


「ええっ!? メルディ姫!!」


 二人がぼくを生け贄にしようとしていた。


 ぼくたちがアスワルドからでると、鬼の形相のカレンが馬に乗りやってきた。 逃げたが時遅くつかまり、今はこの状態だ。


「あ、あの、すみません......」


「わかっているの? アスワルドは対立してるのよ。 最悪、メルディ姫を使って戦争をしたかもしれない」


「あ、はい...... そうですね」


「そうですの?」


「メルディ姫!! 今はダメ!」 


「そうですの...... じゃない!!」


「ひぃぃぃ!」


「だが、おかげでアスワルドが安定したぞ」


「ディルさま! 今はダメ!」


「それはたまたまの結果でしょ!」


「ひぃぃぃ!」


 二人はカレンの圧に縮こまっている。


「ま、まぁ、一応商人ギルドが関わってることがわかったから、早く手を打たないと、装置も持ち出されたらしいし......」


「まったく...... 確かに商人ギルドが関わってるみたいだけど」 


 カレンの顔色がくもる。


「なに?」


「商人ギルドは各国にかなり強い影響力をもつの。 王族や貴族も彼らの影響は無視できない。 そこが裏で古代の危険な技術を持つなら、ちょっとまずいわね......」


「そう、我が国も商人ギルドとの関係はたちきれないですの。 父上たちも影響力を薄めようとしましたが、技術や資金を盾にうまく行ってないのですの。 だから彼らの商業独占をある程度黙認してるですの」


 メルディ姫がそううつむく。


「それで貧富の差が生まれておるのか。 よし、やつらのボスをしめよう」


「やめてください! 理由なく攻撃なんてしたら、我々がつかまりますよ」


「そうね。 戦闘でもないから、私たちにはどうしようもないわ。 彼らの悪事を白日のもとに明らかにしないと」


「アスワルドの研究に関与してるぐらいだから、悪事は行っているだろうけど......」


「調べづらいと?」

 

「正直、かなり危険ね。 ほとんどの国を相手にするようなものだから......」


「影響を排除しようとしているルバレスでもだめなの?」


「......多分、城には常に商人ギルドの手の者が紛れ、動きを逐一監視しているようですの」


「それなら、話は筒抜けか......」


(そもそも姫の誘拐だって、簡単にはいかない。 もし商人ギルドが関わっているなら可能だっただろう)


「調べる方法はない...... か」


「いえ、ひとつあるわ」


 カレンが険しい表情のまま、そういう。


「商人ギルドに関わっていないものたち、彼らなら商人ギルドのことをしっているかも、いってみましょう」


「いくですの!」


「姫は帰る!」


「で、でも」


「......帰るよね」


「は、はいですの......」


 カレンの圧に屈した姫を城に送り届けた。



「ここって......」


 王都の一角にスラムがあった。 そこは家ともよべない粗末な建物が立ち並び、人相の悪いものたちが遠巻きにみている。


「ええ、スラムよ...... この国で生きづらいものたちの居場所ね。 貧しいもの、罪を犯したもの、いろいろな人たちがいるそうよ」


「ふむ、蛇の道は蛇ということだな」


「多分、彼らなら商人ギルドの裏のことをしってるはず......」


「ただ歓迎されてはないね」


「それは、かれらにとって私たちは恵まれた人。 いい気もちはしないでしょうね」


 当然のごとく、すぐに囲まれた。


「お嬢さんたち、ここになんのようでちゅか?」


「危ないよ~ すぐさらわれちまう~」


「だから俺たちが安全なところまでつれていくよ。 けけけっ」


 そうからかうようにいった男たちだったが、カレンとディルさまにものの数秒で地面に転がされていた。


「カイルはどこにいるの?」


「いうのだ」


「が、カイル...... しらねえ。 ぐはっ!」


「カイルはどこにいるの?」


「本当にしらねえ! がはっ!」


「カイルはどこにいるの?」


「いうのだ」


「あんた、こいつらおかしい! 助けてくれ!」


 ぼくに助けを求めてきたが目をそらした。


(ムリ、とめようとするとぼくも同じ目に遭うから無理)


「ぐあっ」


「まて」


 後ろから声がする。 そこには若い男がいた。


「あんたがカイルね」


「ああ、アマゾネスエンプレスに会えるなんて光栄だな」


「その呼び名、次にいったら切るわよ......」


(そんな異名つけられてるの)


「商人ギルドについて教えろ」


「商人ギルド...... 教えてもなにも、商人たちのギルドだ」


「ええ、でも裏がありますよね」


 ぼくがいうとカイルは眉をひそめる。


「......何がしりたい?」


 ぼくたちは事情を話した。




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