狂愛の箍

春瀬リヴ

序章 プロローグ





純愛と狂愛は紙一重



生きてさえいれば出逢いは何度でも訪れる。




『響華』


静寂を纏う凪のような声と、


『響華ちゃん』


甘く蕩けるような声。




全く違う二つの声が重なって私の心を揺らしている。


すれ違う気持ちは、幾多もの層になって混沌を呼び寄せてゆく




あの頃を振り返って、正しい答えを探そうとすればするほど


『出会わなければ良かったのかもしれない』


と、何度もそこに辿り着く




どうしてだろう…



今でも鮮明に覚えている



『ほら、言ってみて』


『っ、…』



─────首筋を伝う柔らかい唇



『響華ちゃんは誰のもの?』



─────狂気的な視線と冷たい目



『だめ…っ、こう…がく…っ、ん…』



手慣れた焦ったい仕草が私を簡単に翻弄できる事を物語っている。恭鵺さんを愛している筈なのに心が揺蕩たゆたっている私が彼の瞳に映し出されていた



どうしてこうなってしまったのか



彼から逃げられない事を悟った自分を、殺してしまいたいとさえ思ったあの日。




彼は、



『すきだよ』



─────狂愛のタガを外した





たった一つのボタンの掛け違いが



『恭鵺さ…ッ!!』


『お仕置きされたいの?』


『っ―――』



全てを崩壊へと導いてゆく――──―






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る