第27話 六日目④ コタローとお散歩

 夕食の時間まではまだ少しあるようだったので、コタローと散歩をすることにした。宿を出て、街中を歩いていく。


 魔王国に来て驚いたのだが、意外とコタローのような魔物を連れている人が多いということだ。宿を取るときにも、魔物を連れているといえば専用の部屋を用意してくれた、それくらい魔物と共にいるのがメジャーだということだ。


 俺よりも小さな子供が連れているのもおかしくない。愛玩用としてでなく、護身用として魔物を持たせているところもあるということだ。


 どちらにしろ、俺がコタローを連れて街を歩きやすい事には変わりない。コタローも様々な魔物と交流できるのが楽しいようだ。(こんなに大きいタイニータイガーはいなかったが。)


 今まで移動でお世話になったり、戦いに参加してもらう一方でコタローとただ遊ぶ機会は少なかった。なし崩し的に出来た仲間ではあるが、俺にも愛着心は芽生えている。自分に懐いてくれる動物がこんなにも愛しいものだとは知らなかった。コタローはペットではないけれど、動物を飼っていた人はこんな気持ちだったのかなって。


 コタローはいるが、一人になって考えるのはやはり地球のことだ。明日でここに転生して七日ということになる。怒涛過ぎて、あまり一週間経ったという感覚もないが、もう一週間だ。向こうの虎太郎は元気だろうか。まだ課題が終わらなくて地球にいたりしてね。流石に無いか。あいつのことだから、諦めて帰ってきた後に全力を出すのかもしれない。そうなったら泣き付かれるのが目に見えている。絶対に手は貸さないつもりでいるけど、何だかんだ手伝わされるんだろうなあ。まあいいけどさあ。


 家は……相変わらずだろう。両親は俺に興味なんてないし、食費が浮いて助かるくらいにしか思ってなさそう。俺がいてもいなくても変わらない。どうでもいいか。


 ホームシックにはならない予定だったが、今までずっと俺が生きてきた世界のことを思い出すなという方が難しい。ファストフード店のポテトやファミレスのパスタ、何より米が恋しい。


 魔王国のスパイシーな味付けの肉で白米をかき込んだら……想像するだけでよだれが出そうになる。地球と同じような食材が多いのに、米のような穀物は見当たらない。何処かにあるのかもしれないが、早々に出会いたいものだ。


 若干目から汗が出たり口からよだれが出てたりしたのを、コタローが舐め回して余計ベチャベチャにするから、ごまかすのは完璧だった。段々慣れてきたが、このベチャベチャの状態でコタローに擦り寄っても嬉しそうにするのを見ると、愛されている実感があって心の奥がジンとした。

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