第23話 幕間② その頃セレティア国内では
テディは通信が切れ、ホログラムが消えたのを確認すると椅子に座ったまま伸びをして、それから軽くため息をついた。彼らの報告を聞いてから、一言「報告がある」と言えれば良かったのだが、今の彼らには伝えるべきではないかもしれないと勝手に判断してしまったことがあったのだった。それは数日前に遡る。
王城の大広間。普段は貴族が集っているこの場所に、この日はテディのような王国魔術師団だけでなく、騎士団や衛生兵までもが集められていた。
明らかにただ事ではない雰囲気に会場はざわついていたが、テディとしてはあまり驚きもなかった。じきにそうなるだろうということが分かりきっていたからだ。
「静粛に」
宰相の一言で静まった会場に小さな国王が入ってくる。その口から語られたのはここ数ヶ月の話し合いによりでっち上げられた「魔王国と戦争をする理由」だ。
無論、馬鹿馬鹿しいという声が上がる。が、宰相が国王の言葉に続けてこう言うのだ。
「賛成できぬ者共は退出したまえ。まあ、退出した後に自分がどうなってもいいなら、だが。フフハハハハハ!!!!」
腹の立つ笑い方だ。馬鹿げている。腹が立つ。この様子をニヤニヤと眺めているだけの腐れ貴族にも、イエスマンにしかなれない彼らにも。
もし自分だけの判断でいいのなら、テディは今すぐこの場で抜け出して退席していた。追手を遣わされても殺せる自信があったし、これ以上王国に仕えずとも生きていけるだけの資金は十分にあるのだ。だがそうしなかったのは、ひとえにこの世界を救わんとする誰かのことを思ってのことだった。
「よいよい。開戦は十日後、何の問題もなかろう?戦うためにそなたらは普段から訓練しているのだからな。ハハハ」
過ぎた言葉に会場がざわめく。宰相の目の奥で、我々が駒にしか見えていないのが分かる。気持ち悪い。テディの心のなかでは現国王に対する失望と、前国王に対する哀れみとが渦巻いていた。
まあそんなこんなで、報告すべきだろうとは思っていた。が、テディにはこれから皆が魔王国に入り、何かしらのアクションを起こしてこの戦争を止めてくれることに期待したいという気持ちもあった。そんなタイミングでの彼らからの報告だ。
この期待半分と、これから大変なことが待っているであろう彼らに無駄な負担をかけたくないという気持ちもある。
開戦まであと一週間。王国魔術師団ではスキルを駆使した魔法の実践訓練が盛んに行われるようになったが、皆死を覚悟している。勿論、テディもだ。
二日。二日待って、何も報告がなければ、このことを伝えよう。きっと彼らなら。
そんな期待を抱きつつも、不安のため息は止まらないのであった。
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