第14話 三日目③ 森の中の調査

 森の中へ入ると言えば、先程の筋肉お兄さんと復活したレズィアスがついてきてくれることになった。筋肉お兄さんはジズというらしい。レズィアスは俺が見ていることに気付いたのが不思議で気になるのか、前に進みながらもこちらをチラチラと目で見てくる。それを怪訝そうに見るのがジズだ。


「レズィアス。その尻のことに言及されたくなかったら集中しろ」

「は!?なんでジズが知ってるんだよ!くそ、あのヤブ医者漏らしたな……!」

「俺は耳がいいんだ。そうじゃなくてもあんなでかい声で泣き言を漏らしていたら誰だって聞こえる。村中皆知ってるんじゃないか?」

「最悪だ、俺もうお嫁にいけない……」

「お前は男だろ……ふん、誰も貰ってくれないようなら俺が貰ってやるよ」

「やだよジズみたいな筋肉男の嫁なんか」

「なるほど、よほど絞られたいようだ」

「冗談、冗談だって……はは……まって、今、今は尻はだめだって!」


 何を見せられてるんだと言いたいところだが、二人の夫婦?漫才のお陰で淀んだ空気が和んでいるとも言える。瘴気で負の感情が増幅されるとギスギスした雰囲気になるのはあるあるだと聞いたが、それはあまりよろしくない。これもエルフ流の戦法なのかもしれない。


 そんなことを言っているうちに早速魔物に遭遇だ。大きなトカゲのように見えるが、ギャアギャアと喚く口にはびっしりと尖った歯が並んでいる。齧られたらひとたまりもない。【千里眼】で見れば、彼らがタイニードラゴンという種なのが分かった。それを皆に伝えたところ、タイニーという大きさじゃないだろという顔をされながらも、コタローがやけに怒っていた。タイニーと名のつくものは自分だけで十分だ、ということか。戦いたいようだったので、好きにさせることにした。


 コタローは果敢に群れの中に飛び込むと、タイニードラゴンの首元を咥えて屠っていく。早業だ。


 俺も負けじと剣を取り出し振りかざすが、思ったよりも鱗が硬い。厄介だ。方針を変えて、斬るより刺すことにする。魔石の部分を狙って刺す。回収した魔石は取っておいて、後でコタローのご褒美にしよう。


 アルやイグ、ジズは力で押し切っている。レズィアスは木の上から弓で応戦している。数で襲ってくるタイニードラゴンたちは、倒しても倒しても湧いてくるようできりがない。


 もっと早く倒す方法はないものか。喚くタイニードラゴンを刺殺しているうちに気付いた。


「これ口の中は柔らかい?」

「っ、そうか!」


 早速アルがタイニードラゴンの開いた口に剣をねじ込んで斬り伏せる。アルやイグの剣は太くて頑丈だから齧られたところで早々だめにはならないし、ジズは齧られる前に斬る力技でどうにかしている。俺の剣も細身だが、うっかり齧られても無傷で何で作られているのか分からないくらい頑丈だし、多少のことでは折れなさそうだ。スキルの恩恵か、技術だってないわけじゃない。


 しっかり地面を踏み込んで斬りにかかる。落ち着いて息を吸って、吐いて、呼吸を整えて集中する。周りの雑音はもう聞こえない、今あるのは己の呼吸音だけ。集中して斬る。斬れる。気付けば、周りのタイニードラゴンは一掃出来ていた。


「お疲れ様。一旦戻って、状況の報告に行こうか」

「追いつくから先行ってて。コタローにご褒美上げてくから」

「了解」


 先に戻っていく皆を見送ってから宣言通りコタローの頭を撫でて魔石を渡す。嬉しそうに齧りながらも、警戒を頼めば頼もしく鳴いた。


 地面に手を当てて先程見つけたいいスキル【探査】を使ってみる。木や草の根、虫の巣……普通の森にあるものの中に、違和感を感じるような場所があった。木の根に包まれているナニカが、明らかに瘴気を放っている。それも一つじゃない。


「コタロー、もういいよ、戻るの手伝ってくれる?」

「がう!」


 魔石を齧った後の口で舐められるのは遠慮したかったが、これが彼の愛なのだと諦めて受け入れた。少しザラザラする。まあ、悪くはない。ベチャベチャになるだけで……。


 村に戻るとレズィアスやジズが驚いた顔をしていた。アルとイグを送ってから迎えにくるつもりだったらしい。エルフの国が隠されている関係上、エルフ以外は迷うようになっているらしかった。


 記憶は朧気だけどエルフに育てられてたことがあると言ったらもっと驚かれたが、レズィアスは仲間だと喜んでくれた。俺のコタローに舐められてベチャベチャのままの顔に擦り寄って、情けない声を上げていた。ジズはそれを見て吹き出していた。愉快な友達が増えて嬉しかった。

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