第7話 君にかけた魔法
(朝)
//SE アラームの音
「おはよう」
「うん。今日はね、気づいたら朝だったの。君がまだ寝てたから、寝顔見てた」
「だって、気持ちよさそうに寝てたんだもん。起こしたら可哀想かなって」
「……うん。あと、たぶん20分くらいかな」
(寂しそうな声で)
「……私も怖かった。もしかしたらもう、二度と会えないんじゃないかって」
「自分がどうなっちゃうのかも、分からないから」
//SE 手を叩く音
「なーんて、悲しい話はもう終わり! せっかくまた会えたんだもん! ね、なにする?」
「そうだ! お花見しない? このアパートの前、桜あったでしょ」
「久しぶりに、君と出かけたいなって」
「ありがとう」
◆
//SE ドアを開ける音
「桜、綺麗だね」
「一本しかない? いいの! 一本あれば」
「それとも君は、たくさんないとやだっていう、浮気性な男の子なの?」
(からかうように)
「分かってるよ。君は、私単推しだもんね?」
「……私、桜好きなんだ」
//SE 風が吹く音
「うん。綺麗だから。……でも、それだけじゃないの」
「桜の木って一つの場所に根を張って、毎年そこで咲くでしょ?」
「一年のうち、綺麗に咲いている期間は短いけど……それでもみんなが桜がある場所を覚えてて、春になったら、みんなが同じ場所に桜を見にくるでしょ?」
「なんかそれがね、アイドルみたいだなって思ったんだ」
(ちょっと照れ臭そうに)
「アイドルって、いつも可愛いわけじゃないの。でも、ファンのみんなが会いにきてくれる時は、精一杯可愛くいようって頑張るの」
「なんだか、桜と似てない?」
(拗ねた声で)
「えー? あんまりピンとこない? むぅ……」
(耳元で)
「でも、今の話、君はきっと忘れないでしょ?」
「さっきのは、魔法だったの。君が毎年、桜を見たら私を思い出すようになる魔法」
「でもね、私が君にかけた魔法、さっきのだけじゃないんだよ?」
「果物のメロンを見ても、君は私を思い出すでしょ? 緑色の物を見ても、きっと私を思い出すでしょ? 生チョコを食べても、私を思い出すよね?」
(おどけた声で)
「ホラー映画で幽霊を見ても、私を思い出すんじゃない?」
(嬉しそうに)
「ね? 他にもたくさんあるんだよ。君は一生、私を忘れられないね」
//SE 手を繋ぐ音
「他の女の子と手を繋いだ時も、ああ、この子は冷たくないんだなって、君は一生思っちゃうの」
「君にとって、一生、私は特別な女の子だね?」
(残念そうな声で)
「……あーあ、今日はもう、そろそろ消えちゃうみたい」
(泣きそうな声で)
「ねえ、また会えるかな」
「会えなくても……絶対、忘れないでね?」
「次に会えた時、私に話したいこと、私と一緒にしたいこと、君も考えておいてね」
「私、また会えるって、信じ―――」
(途中で声が途切れる)
//SE 風が吹く音
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