はかない夜に君は言う
矢寺せん
モノローグ【君との出会い】
時刻はまもなく12時に差し掛かろうとしていた。この時間帯に外に出てしまうと、
警察に補導されてしまうのだが、慣れたように家を出た。
出てすぐに、住んでいるマンションからほど近いコンビニにへと出かけた。
コンビニ入ると、「またおまえか」みたいな顔でおばちゃん店員と目があった。
コンビニ内には、会社終わりの社会人男性が家で飲み会をするのだろうか、ビールを籠いっぱいに詰め込んで、ウキウキでレジに向かっていっていた。
そんな様子を横目で見ながら、自分はというと最近ハマって飲んでいる<ちょっと
苦めでほんのり甘い夜のひととき...>をコンセプトをしているわりにはほとんど苦い缶コーヒーを左手に、右手に缶コーヒーの値段120円を握りしめてレジへと向かった。
おばちゃん店員は先ほど社会人男性には丁寧な対応で「合計で3360円になります。
レシートはよろしいでしょうか?」とコンビニ接客の模範解答のごとく丁寧な対応をしていたが、
いざレジに行ってみると、「120円」とさっきの対応とは真逆と態度でレジ打ちをし、「レシートはよろしいでしょうか?」とは一言も言わずにレシートは捨てられた。
いつも通ってるだけあって俺がレシートを要らないことを知ってるだけはある。
そう思いながらコンビニを出た。
コンビニを出てから家の隣にある
公園内には子供用のアスレチックや飛行機の遊具、秋になるとイチョウの木が一団となって公園内を鮮やかな黄色に染め、地域の人々に秋を知らせてくれる人気の公園だ。
今は夜ということもあって人の気配は全くない。
公園内に入ってすぐ近くにベンチがあるのでそこに腰掛けて、イヤホンを耳につけた後、缶コーヒーを一杯口にした。
コーヒーを飲みながらスマホを開き慣れた手つきでSNSを下にスクロールしていくと、ヘアセットの動画やアニメの名シーンなど、次は俺かと言わんばかりに次々と垂れ流れてきた。
動画や写真投稿を見ていくと一つの広告アプリに目が入り、気づかないうちに見てしまっていた。
そこには、<自分だけの理想の彼女を作ってみよう!>と書いており、かわいい女の子の髪や目の形、性格までも自分好みの女性にできるアプリらしい。
「そんなの出来たら苦労しねーよ」
つい声に出してしまっていた。
周りに人がいないか、確認しながらふと、自分のタイプ女性像をかんがえてみた。
黒髪セミロングで下ネタなど聞いたら顔が赤くなり恥ずかしがるほどの清楚で付き合ったら一途な女の子を想像していた。
「そんな子いないかなー」
「......いるわけないか笑」
自分でツッコミをいれるほど理想が高すぎる。だから彼女ができないんだよ俺!!
そう思いながら、缶コーヒーを一口、二口...と飲んでいく。
ごく...ごく...ごく...
喉の音を鳴らし、目を閉じながら最後ま飲み切ろうとしていた時、ふと隣から声が聞こえてきた。
「君…な…て…かな?」
「大…にみ…な…け...」
イヤホンをしていたので、よく聞こえない。
だが、こんな深夜に話しかけてくる人とか大体わ
かる、響察だ。
「あーー、めんどくさい。とりあえず言い訳して帰してもらおう」
そう思いながらイヤホンを外し、缶コーヒーをべンチに置いて声を出した。
聞こえてきた方に振り向きながら、「すみません。家は隣りのマンションなんですぐ…」
言おうとしていたのに言葉が詰まってしまっていた。
なぜなら、そこには警察でも大人でもない同い年ぐらいの女の子が律儀に座りながらこっちを見ていた。
黒髪セミロングで透き通った淡い瞳、誰もが見入ってしまうほどの美しい女の子がそこにいた。
「・・・・・・」
俺の理想から出て来たかのようだった。それでつい彼女に見入ってしまっていた。
「すぐ…なんですか?」
彼女が先ほどの言葉の後を聞いてきた。
「あ、いや、その…すぐ帰りますって言うつもりでした。」
緊張のせいか、言葉が詰まる。多分だか、耳や顔が真っ赤なりんごみたいになっているだろう。
「そうですか。もう遅いから気をつけて帰ってくださいね。」
彼女はそういって微笑みながら、こっちを見てきた。
月が彼女だけを照らしたかのように彼女は俺の目には、美しく輝いてた。
「それでは私はもう行きますね。」
そう言って彼女は歩き出した。
「あの!お名前なんですか?」
この機を逃してはいけないと脳みそが言っている。
「
そう言って瀬野さんは公園をあとにした。
缶コーヒーを見てふと、「ほんと、ちょっと苦めでほんのり甘い夜のひとときだな」と思いながら缶コーヒーを飲み干した。
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