[第2話]初のお仕事



とりあえず、あのあと色々と説明受けて私は幹部になってしまいました。はい。

最終的に魔王様がOK出しちゃったのでそれで問題なしとして幹部にさせられました。

そもそも幹部は5人だったらしく、その幹部の人がやられてしまって本来なら補佐官や副官から選ばれるけどその人たちも同時に倒されちゃったから、後釜が何もなく空席の状態だったそうな。

で、そこに魔の森で大暴れしてるちょうどいい感じの少女発見。しばらく観察してたけど問題なさそうだから幹部にしちゃえ。って感じらしい。

というか私観察されてたんだ!?

それなりに感覚鋭い自信あったんだけどなぁ…


「グムシュトゥ・ディナ様、どうなさいますか?」


私の補佐をしてくれることになった鬼人のリコンさんが話しかけてくる。

あ、グムシュトゥ・ディナって私のことね?

流石に名無しというのは如何なものかという事でこちらの名を受け賜りました。はい。


「ディナでいいよ。ねぇリコン、カトゥルムからしろと言われている軍の再編の方はどうしたらいいかな?」


名前賜る時に知能テストみたいなのを受けさせられて、前世の記憶などもあり見事高得点を獲得してしまったことにより、軍の再編や一部の経済案件などをノルマとして課されているのである。そしてこれがヒジョーにめんどくさくて大変。すでに色々良くしてもらっている上に、皆さんとても良い方々であるため今更「大変なんで森に戻ります」などと言えるわけない。

本音を言えばあの魔王様から目をつけられてる時点で逃げるっていう選択肢は消し飛んでるんだけど。

ともかく、あの時わざと間違えとけばよかった…


「先代の幹部であるカスタハ・ムーントゥ様は骨人…スケルトンでしたので、その多くの戦力はアンデット系統が占めていましたが要塞への遠征失敗で、ご本人と多くの配下が失われた為、残っているのは、アンデットたちの世話などをしていた半魔人や、亜人などが殆どです。

又、のそ数も十分とは言い難いですが個人個人のスペックは良好な為、遊撃部隊や偵察部隊などの編成を推奨します」


「まぁ、人数的にも余裕なさそうだし必然的にそうなるよねぇ…

ただ確か、そういうのはナフテムさんが管轄してなかったっけ?」


古龍の幹部であるデフリヒテム・ナフテムさんは主に龍族をと統括していて、主要戦力というよりは強力な遊撃部隊や上空からの偵察という位置付けだ。

なので、私のところが新たに遊撃部隊を組んでも、既にナフテムさんで十分できてる為持ち腐れになってしまう。


「それに関しては、デフリヒテム様の行う偵察は上空からの魔力照射や視界での偵察のため森の中などは認識できません。

そしてディナ様が魔の森の実質的な支配者であった為、魔王軍に入ったことにより人間たちの国に隣接する魔の森が魔国領となりディナ様の管轄となりましたので、森からの偵察や森の監視、警備などが仕事になります」


「教えてくれてありがとね。

それじゃぁ監視と警備を主とした編成で、多少の偵察能力を持たせる、ってとこかな」


編成内容は、場所が森の中なので拠点に高火力の者を置いて速さや隠密、索敵に分がある者をそれぞれの拠点を中心に配置するのが無難だね。

まぁこの仕事自体、私が魔国側についたことにる戦線拡大の尻拭いのような気がするけど…


その後カトゥルムに編成案を提出し、可決。

私とリコンがそのまま部下たちをその編成で組むよう指示をしに行く。

本来なら幹部が直接言いに行く必要はないけど私は唐突に配置されたのもあり、まだあまり信用や支持といったものがほぼ無いのでそれらを少しでも上げる為直接行くことになった。





連絡兼お披露目に行ったところ、思っていたよりも歓迎ムードだった為、ちょっと安心した。

ムーントゥさんの配下はほぼ自身が作り出した眷属だから、残っていたスケルトンやゾンビたちはムーントゥさんがやられてしまった時に崩れ落ちてしまったそうな。

で、最終的に残ってるのはアンデットたちの管理をしていた少数の魔人や亜人、半魔人と言った者たちだ。

総勢150名程度で、もはや軍と呼べる規模ではなくせいぜい中隊程度である。しかもあるのは、整備兵、通信兵、輜重兵、偵察兵と言ったほぼ直接戦闘をしない兵科だ。

そもそも、アンデットの大群が主戦力でありあくまでその補佐的な役割を担っていた者たちなので仕方ないといえば仕方ない。

勿論、このアンデット軍団は軍の一大戦力で魔王軍はかなりの痛手を負っていた。

実際、ネイガーさんの管轄である第二軍であった剛牙軍から、ムーントゥさんの抱えてた戦線を抑える戦力を抽出している為、現在の魔王軍は薄く広く配置されていて攻勢に出ることができない状況であるどころか前線がどんどん押されて後退しているのである。

とてつもなく強い(はずの)魔王サマが攻撃すれば良いと思うかもしれないが、戦線が今までほとんど拮抗していたこととから分かるように、人間側にも切り札となる戦力がある。

単体では魔王様にはかろうじて届かないが、幹部を屠るには十分に渡り合える戦力と言える。

つまり、魔王様が出ていってる時にここ陥されたらたまったもんじゃないから基本的に魔王様はここから動けない。

とにかく話を戻すと、攻勢のチャンスなく後退を余儀なくしている今、魔の森から私のとことナフテムさんで唐突に攻め入ってしまえと言う話になった。


「よし、編成はこんなもんでいいかな」


「よろしいと思います。

私は各部隊の最終調整の監督をしますので、ディナ様は他の幹部の方との調整に行って下さい」


「ありがと。もとよりそのつもりだよ」


私はそのまま、会議室へと向かったが背後から何やら変な視線を感じたがリコンしかいない筈だし気のせいだと思ったくことにした


[sideリコン]

どうも、ディナ様の補佐を務めているリコンです。

私は元々、ムーントゥ様の補佐官…の手足でした。しかし先の大攻勢でムーントゥ様や補佐官殿諸々消えてしまいました。そして暫くしないうちに新しい幹部の方がやってきて私はその方の補佐官となることになりました。

正直、ムーントゥ様や補佐官殿に使えていた時、ムーントゥ様は魔王軍最古参で良識的な方でしたがアンデットと生者という決定的な違いもありあまりいい思いはしておらず軍務と割り切っていました。

なので次来る幹部の方が横暴で無くて生者ならいいな。と考えていましたが…

何ですかあの可愛い生き物は。

背はあまり高くなく、艶が良い灰色の髪に、大人っぽさがありながらまだ幼さの残る顔。ふとしたひょうしに見せる表情、そしてほんとに色々可愛い…はぁ…食べたい…。

はっ!?なにを考えてるんですか!?

でも…やっぱり…食べちゃいたい…


「補佐官殿どうしました?」


「ああ、何でもありません」


危ない…もしかして表情に出てたかな?

反応を見る限りはそうじゃないみたいだけど。

取り敢えず、気を引き締めていこう。


「それよりも、軍…と言うより隊の再編です。

まず小隊に分けます。

なるべく兵科の同じ者でまとまって下さい。

細かい調整は私が監督しますので取り敢えず集まるようお願いします」


指示を出しながら、これからも頑張っていこうと決意を新たにしたのだった。

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