第27話
ラクザンカ達はネモネアの通うアドニス学園に向かう為に馬車に乗っていた。しかしその学園は自分達が居た街から何十キロと遠く、何日も掛けて進んでいた。だが、街から出発してとうとう事件が起きる。
「....は、は、腹減った....」
「もう2日も....何も食べて無いのぉ....」
「ハァ....ハァ...誰か助けてくれ~...」
ラクザンカとシュンラン、そしてネモネア達が口々に空腹を嘆く。馬車に乗ってから4日、彼女達は殆ど食事を取っていなかった。しかも馬車の車輪が運悪く壊れてしまい、ラクザンカ達は仕方なく歩いて行くことにした。そのせいで余計に空腹になっていた。
「み、皆しっかりしてよ....」
「放っときましょうユリさん、この人らの自業自得なのですから」
ラクザンカ達を心配するユリを、ミザァがバッサリと切り捨てる。
「そ、それはそうだけど……ミザァさん、大丈夫なの?」
「良いんですよ。私は不老不死なので飢え死するわけではありません。お腹は空いてますが....」
ミザァがそう答えた時、ネモネアがひもじい顔をしながらミザァ達に手を伸ばしてきた。
「な、なぁ....腹減ったよ...何か食える奴ねぇのかよぉ....」
「ネモネアさん.....貴女分かって言ってるんですか?貴女の学園は街から途方もないくらい遠くにあるから何日も掛けて移動する為に多めに食料を用意したのに、それをたった3日で全部食べてしまったのはネモネアさんッ!貴女のせいでしょうがッ!」
「ふ・つ・か・だッ!」
「威張るなッ!!!」
「あだっ!?」
ネモネアにツッコミを入れながらミザァが頭を拳骨で叩き、それを見たユリが2人に注意する。
「2人とも落ち着いてよ....只でさえ腹ペコなのにこれ以上体力消耗したら駄目だよ....」
「あ、それもそうですね。申し訳ありませんユリさん……」
「ちぇ……しかしよぉ…腹減ったよ…」
ユリに注意されて冷静さを取り戻すミザァ、そして空腹に不満を漏らすネモネア。そのやり取りにラクザンカが言葉を発する。
「でもどうする?ネモネアの学園はとてつもなく遠いんだろ?これじゃ飢え死にするのも時間の問題だぞ?」
「フム....やむ終えん。お主ら、少し目を瞑っておれ....。」
するとシュンランがラクザンカ達に目を閉じるよう言ってきた。
「は?何でだよ?」
「良いから言う通りにしろ……」
「うっ、わ、分かったよ……」
シュンランの言葉にラクザンカが渋々目をつぶる。そしてシュンランの詠唱が始まった。
「ヨチタミガメクビチミヲキサクユルイニイカンテ……レクテッイレツヲロコトイタキユヲレワレワ……イコイコイコキサキユキサキイ……マップロープウェイ…!」
そう言ってシュンランが魔法を唱えて手を三回叩くと回り空気が変わったような気がした。
「.....よし、もう目を開けていいぞ。」
シュンランがラクザンカ達に目を開けるよう言う。ラクザンカとユリ、そしてネモネア達が目を開けるとそこは湖だった。
「あれ?いつの間に湖に来たんだろ?」
「一瞬で景色が変わった……?」
ユリが呟き、ラクザンカも困惑したような顔を見せる。するとシュンランがある方向を指差した。
「お主ら....アレ見るのじゃ……」
そう言われシュンランが指差した方向を見るとそこには大きな城のような建物が見えた。その建物はまるでおとぎ話に出て来る城そのものだった。
「アレがアドニス学園じゃ」
シュンランの言葉にラクザンカ達が驚く。
「あれが……アドニス学園の……」
「うむ、では行くとしよう。あ、それとこの魔法の事は秘密じゃぞ?」
そう言ってシュンランは1人先へと進んで行った。
「……行っちゃったな」
「でもさ、あの魔法ってどんな原理なんだろ?一瞬で景色が変わったけど……」
ユリがそう呟いた時、ネモネアが口に人差し指を当て、シィーと言うジェスチャーをした。
「それは言わないでくれユリ。あの魔法...バレたら結構、面倒だからな……」
「ご、ごめんミザァさん」
そんなやり取りをした2人を見てラクザンカは微笑む。
「ははっ、んじゃあそのアドニス学園に行って飯でも貰おうぜ?」
「あ、それもそうですね。行きましょうか」
そして4人はシュンランの後を追って行った。
「……なぁ、アレってアドニス学園の門だよな?」
「そう……みたいだね……」
5人の目の前にはアドニス学園と思わしき大きな門があった。その門は全員が見上げる程大きく、その大きさはラクザンカ達に威圧感すら与えていた。
「ちょっとネモネアさん……この学園は一体……?」
「ん?あぁ....ここは全世界にある魔法学校の中でも希少な高等魔法学園なんだ。何せ学んでる学問は基本的な魔法から戦闘魔法、召喚魔法、古代魔法、創造魔法もやってる。ここまでやれるのは世界に広しと言えどもここしかねぇのさ。」
ネモネアがミザァにそう説明しながら門を潜って行く、そして4人も後に続いた。
「へぇ……でも何でそんな学園がこんな森の中にあるの?」
「あぁそれはな……アドニス学園の創設者はエルフでな。その創立者がこの湖を気に入ってたからここに建てたんだとよ。」
「成る程なぁ……しかし、あんたよ。こんな学園を何で出たんだ?中退したのか?」
ユリの問いにネモネアが答えると今度はラクザンカが質問をした。その問いにネモネアは何故かタジタジしながら答えた。
「……い、いやアタシは中退じゃねぇよ……ただ……」
「ただ……?」
「ラックさん。これは彼女の自業自得ですね。いずれ分かります。」
ミザァがそう話すと5人はアドニス学園の中へと入ろうとしたがネモネアが待てと4人を止めて、学園の裏口から入る事を提案した。何か妙に焦ってるネモネアを見た4人仕方なく裏口から入っていった。
「……はい……えぇ、分かったわ。では……」
裏口から入ってすぐの場所で女性が誰かと話している声がしたのでラクザンカ達は物陰に隠れて見ることにした。そしてその女性が話を終えた後、ネモネアが女性を後ろから声を掛ける。
「よお、先生」
「!あら、ネモネアさんじゃない。どうしたの?」
ネモネアに話し掛けられた女性は驚いた後そう答えた。
「……あの、そちらの方達ってもしかして……?」
「あぁ、ウチのパーティー仲間だ」
ネモネアがそう言うと女性はラクザンカ達に向き直った。
「はじめまして、アドニス学園の学園長を務めるテリラ・リベラと申します」
女性改めリベラがそう言うとラクザンカ達は頭を下げる。
「……それでネモネアさん?裏口から入ってきたってことは....また妹さんに黙って出たんですね?全く貴女と言う人は...」
「べ、別に良いじゃねぇかよ。それにあの糞妹だってアタシが勝手に出たって……文句言いやしねぇだろ?ま、その内帰るから心配すんな」
リベラの言葉にネモネアはそう返す。するとラクザンカが口を開いた。
「……なぁ、さっきから気になってたんだけどよ……アンタが言ってる妹って誰なんだ?」
ラクザンカの疑問にネモネアが答えようとする。だがそれは別の少女の声で答えられた。
「それは私の事を言ってるのですか?」
「!この声は……」
4人が声のした方を向くとそこにはネモネアによく似た髪色をした少女が立っていた。
「……よ、よぉ、くs...あ、いや“スモネア。相変わらず辛気臭ぇ顔してんな?」
「うっさいよバカ姉……それよりまた勝手に学園から抜け出してさ……いい加減にしてよ.....」
ネモネアがそう言うとその少女も言い返して、ラクザンカ達の方を見て口を開く。
「……で?この人達は?」
「あぁ、アタイのパーティー仲間。折角だから学園に招待しようと思って。ほら、もうじき“アレ”だろ?
ネモネアの言葉にスモネアは納得したような反応を見せた後、4人の方を見る。すると今度はユリが口を開いた。
「えっと、貴女はネモネアさんの妹さん……なんですよね?」
ユリの質問にスモネアが答える。
「えぇ、そうです。アドニス学園の3年で姉と同じ“生徒会”の一員ですです」
そう話すとスモネアはローブ下のポケットから生徒手帳らしき物を取り出した。そして4人に自己紹介をする。
「改めまして、姉がお世話になっております。私はアドニス学園3年、スモネア・ディーデです。よろしくお願いしますね。」
スモネアの丁寧な挨拶に驚きつつもラクザンカ達も自己紹介をしつつ、挨拶をした。そして終わった後、スモネアはネモネアにグイッと顔を寄せ付け、睨み付けながら言った。「で?姉、何か私に言う事は?」
「あ……いや、その……」
スモネアに睨まれてネモネアはしどろもどろになる。そして観念したかのように口を開いた。
「わ、悪かったよ……黙って出て行ってさ……」
そんなネモネアにスモネアは溜め息を吐く。そして4人の方を向いてこう言った。
「……まぁ良いでしょう…よくあることなので…いや、良くないか。さっさと生徒会室に行くよ?それと、貴方達の学園祭の参加手続きもしないと...」
そう言ってスモネアがネモネアの襟を掴み、ズルズルと引き摺りながら生徒会室のある方へ向かった。するとユリが気になることを聞いた。
「あ、あの...学園祭って?」
「あぁ、そうでしたね。忘れてました。この学園で年に一回行われる学園の一大イベント。その名も“アドニスキャンバス祭”です。」
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