第22話

あの日は今でも鮮明に覚えてる。忌々しい程に.....。その日は4人でいつものように朝ごはん用のパンを選んでいた。今日は末っ子であるコエビの誕生日。だから特別にコエビの大好きなお頭付きの魚入りサンドを探していた。

「コエビ。今日はイワシ入りサンドにする?」

「うん!そうする!」

「じゃあ、アタシはこのパンにしようか」

とコエビが指さしたパンをレダシは手に取った。

「じゃあ、あたしはこれにしよう」

とラクザが選んだのはレダシが選んだのと同じパンだった。それに続いて私達も結局、同じパンを選んで買い込んだ。それからのアタシ達は鼻歌交じりで帰路に着いた。そしてその晩、4人でコエビの誕生日パーティーをしていた。

「お誕生日おめでとう。コエビ」

「おめっとさんコエビ!」

「おめでとう~コエビ~」

「....ありがとう!」

イワシ入りパンを食べながら嬉しそうにコエビは微笑んだ。そんな楽しい夜が過ぎてお腹一杯になったので皆でそのまま寝てしまった。家に何者かが侵入してしまった事にも気付かない程に.....。

「おい、この4人で間違いないよな?」

「あぁ、身寄りのないガキ共と言えばここしかないからな。」

「起きる前にさっさと袋に詰めてやろうぜ。」

そう言って黒服を着たマスクを被った大柄の男達が私達を起こし始めた。コエビはまだすやすやと眠っており、私やレダシがなんとか目を覚まし、ラクザを揺り起こした。

「ちょ、ちょっとラクザッ!早く起きてよッ!」

「う……ん。どうしたの?」

まだ寝惚け眼のラクザを起こして何とかこの場から逃げ出そうとした。だが、その前に男達がアタシ達を袋に閉じ込めて目隠しをした。その後、足と腕も縄で縛られてそのまま馬車へと乗せられた。そしてそのまま馬車に乗せられた私達は何処かへ連れていかれてしまった。

「ねぇ……ラクザ。ここって何処?」

「分からないよ。でも、きっと大丈夫だよ。皆で居ればなんとかなるさ!」

「……そう、だよね……」

不安で胸が押し潰されそうな中、私達はただ馬車に揺られて何処かへ連れていかれた。そして暫くすると車が止まり、アタシ達は車から出された。そのまま男達に目隠しと縄を外された後、目の前には豪邸があった。

「な、何?ここ……」

「さ、さぁ....」

私達が困惑して立ち竦んでいると後ろの男達が棒で突っついて前へ行かせた。その豪邸は白を基調とした壁と汚れ一つ無い床で綺麗に保たれている。玄関を通り、中へ通された私達はそのまま大きな扉の前に立たされた。

「この先に国王陛下が居る。心の準備しとけよ」

そう男達は言ってから扉を開いた。その扉の向こうには玉座に座る一人の男が居たが、その男の風貌が明らかに普通ではない事に気付いたラクザは私達を庇う様にして立ちはだかった。その男はまるで蛇のような鋭い目付きに黒い髪。そして何より、その男が着ている服が純金や宝石で出来た装飾品に包まれたような服だった。

「な……ッ!何よあんた!アタシ達をどうする気なの!?」

「国王陛下になんて口の聞き方してんだクソガキッ!殺すぞッ!」

「も、申し訳ございません陛下!すぐに黙らせますんで!」

ラクザがそう言うと男達は慌てて頭を下げたが、その国王と呼ばれた男は全く気にした様子は無く、ただ私達を値踏みする様に見続けていた。そして暫くすると男は玉座から立ち上がり、私達の方へと歩み寄った。

「喜べ子供らよ。お前達は我が国の平和と幸福の為に生きるのだ。私の中でな。」

「へ?何、何を言って....?」

私達は男の言ってる事の意味が分からずただ困惑する事しか出来なかった。そのまま私達に後ろを向いて男は玉座へと戻った。そしてこちらを見下しながら私達に言い放った。

「お前達はこれより、不老不死の儀式の為の生け贄になるのだ。」

「……え?」

私達はしばらく放心状態に陥っていた。その間にも男には一切の容赦は無かったが、それでも私達は何とか正気を取り戻した。

「ちょ、ちょっと待って!意味分かんないわよ!」

「国王だからって国民に何してもいい筈がありません!考え直して下さい!」

「だ、大体何だよ不老不死って....?そんな意味不明な事にアタシを巻き込まないでよ...」

「ねぇね....怖いよ....」

私達は口々に国王を説得する様に言葉を投げかけたが、男はただ私達の話し声を聞くだけで何も反応する事は無かった。そして暫くして男が玉座から立ち上がった。

「お前達は不老長寿の儀式に必要な生け贄なのだよ。」

「だから!それが意味分かんないって!」

「その儀式はな……。私の魂を永遠にするためにある物なのだ。」

そう言うと男は自身の胸に手を当てた。

「……え?それってどう言う……」

「そのままだ。私は今年、この歳になってようやく国王になった。だが、その代償として私の人生は徐々にすり減っているのだ。」

男はそう言ってから玉座に再び座り、足を組んだ。

「だから……お前達の生け贄によって私は永遠に生きる事が出来るのだ……」

「……そ、そんな!そんなのって!」

「ねぇね!あたし達どうなるんだろ!?」

レダシが不安そうな顔で私に聞いてきたので思わず言葉に詰まってしまった。そして暫くして国王はまた立ち上がり私達の元へ歩み寄った。

「さてと、そろそろ儀式を始めるか。」

「ちょ、ちょっと待ってよ!そんな急に言われても……」

「ではまず、お前達の服と装飾品を全て取り除き、その体のまま儀式を行う。そして最後に私の血を一滴入れるのだ。」

国王はそう言うと男達に指示を出して私達の服を脱がし始めようとした。私は何とか抵抗しようとしたがコエビやレダシが捕まってしまったので私もそのまま捕らえられてしまった。そして私達は一糸まとわぬ姿にされてしまい、そのまま床へ縛り付けられてしまった。

「国王陛下ッ!さっきの非礼は謝りますからッ!どうか、どうか妹達だけはッ!妹達だけは助けて下さいッ!」

「嫌だ...嫌だ....嫌だ...死にたくない.....死にたくない....」

「離せッ!離せッ!くそぉッ!」

「うわ~ん!うわ~ん!怖いよ~!ねぇね~!ねぇね~!」

私達は泣き叫んだり命乞いをしたりしたが、男達はそんなのお構い無しに私達を縛り上げた。そして国王が玉座から立ち上がり、私達の目の前に来た。

「さて、まずはお前からだ……」

「や……やめッ!やめてぇッ!!」

コエビは必死に抵抗したがそれも虚しく、国王はコエビの体にナイフで切り傷を付けた後その傷口に指を入れてきた。その瞬間、コエビの全身に痛みと吐き気が襲った。

「あ"あ"あ"あッ!!いだいいだいいだいぃッ!」

コエビはあまりの出来事に絶叫した。

「や……やめッ!やめてぇッ!!」

コエビは必死に抵抗したがそれも虚しく、国王はコエビの体にナイフで切り傷を付けた後、そのナイフを今度はレダシに向けて、レダシの体に深々と刺した。

「ぎゃあッ!!やッ……やめッ!やめてぇッ!!」

レダシは涙を流しながらそう訴えた。だが国王はそれを聞き入れる訳も無く、そのままレダシの体にナイフを刺したままにし、今度は私に向けて、私の体にもナイフを突き刺そうとした。しかしその時、ラクザが咄嗟に国王の腕を掴んで止めた。

「やめろよ……もう十分だろ……」

「……まだだ。」

国王はそのままラクザの腕を振り払うと今度はラクザの体にナイフを突き立てた。そしてそのまま今度はラクザの体にナイフを深く刺し、そのままラクザの体を床に叩き付けた。

「あ……がぁッ!うぐ……あぁ……」

ラクザは痛みと恐怖で何も言えずにただただ涙を流した。そして国王はそのままラクザの腹や胸などを中心に何度もナイフを突き立てた。その度に血飛沫が飛び散り、部屋中に鉄臭い匂いが立ち込めた。

「や、やめてぇッ!!お願いだからもうやめてよッ!!」

私が泣きながらそう叫ぶと国王はとうとう私にもナイフを突き刺した。

「あ……あぁ……。い、痛いよぉ……。苦しいよぉ……」

私は涙を流しながらそう訴えたが国王はそれを無視して私の体にナイフを深く突き立てた。

「よし、これぐらいでいいだろ。おい魔導師、さっさと始めろ。」

国王はそう言うと私の体からナイフを抜き取り、その場に捨てた。そして次に玉座の裏から茶色のフードを深々と被った年寄りが杖を付きながら現れてた。

「はい、国王陛下。では、これより儀式を始めさせて頂きます。」

そう言うと魔導師と呼ばれた年寄りが私の体に杖を向けた。そして何か呪文のようなものを詠唱しだしたかと思うと突然私達の床が光り出した。

「な、何これ……ッ!」

「ねぇ....ね....」

コエビは心配そうに私にそう聞いてきたのだが私は何も答えられなかった。だがそんな私を見た魔導師は更に呪文を唱えた後に今度は私達の流れ混じった血を触り始めた。すると、急に体全体が熱くなり始めてきた。それと同時に体中に激痛が走った。

「あ……がッ!うぐ……あぁ……」

私達は痛みと恐怖で何も言えずにただただ涙を流した。そして魔導師はその血を懐から出した瓶に寄せ集めた。魔導師と国王はニヤニヤと気味の悪い笑顔を見せながら瓶の中を覗いた。

「こ、これが...不老不死の調薬....!」

「左様です陛下。これを体全体に浴びれば貴方様は永遠なる肉体を手に入れられるのです。」

「はぁ……ッ!ハァ……ッ!く、薬が……完成したのか……!ついに……!」

国王は興奮の余り、荒い息遣いでそう呟くと嬉しそうに笑った。そしてその液体の入った瓶を手に取ろうとしたその時だった。突如、外で爆音がした。それと同時に部屋のドアが勢いよく開き数人の兵達が入ってきた。

「何事だ!?一体!」

「国王陛下!反乱軍です!!速やかに撤退を!!」

一人の兵がそう叫ぶとグサグサと槍が兵達に突き刺さった。その後ろから大勢の男達が雪崩れ込んできた。

「国王ッ!!!貴様の悪行もここまでだッ!!その命を持って償ってもらうッ!」

反乱軍のリーダーらしき男が剣を構えて国王に叫んだ。そして反乱軍の男達が次々と私達を庇う様にして国王達を囲んだ。

「貴様達には捕まらんよッ!おい魔導師、逃げ道を開けろ!」

「承知致しました。」

すると魔導師の杖から魔法陣が浮かび上がりそうになったが数名の反乱兵が矢を数本国王達に目掛けて放った。その矢の一本が国王の手に刺さり、その瓶を離してしまった。

「あぁッ!しまっ....!!」

その瓶が私の方に落ちてきて、中身が全て私に掛かってしまった。するとどうだろうか....。さっきまで深々く感じていた激痛や苦しさがすぅっと消えていって、刺し傷も綺麗さっぱり無くなっていた。

「こ、これは一体....?」

だが私が困惑する間もなく、大勢の反乱軍と国王軍が入り乱れて入ってきて、王室は大混乱になった。だが私はこれがチャンスだと思い、急いで他の姉妹達を逃がそうとした。だが、10代の子供がケガで動けない3人を持ち運ぶことは出来なかった。3人の体温がどんどん冷たくなっていく。どんどん体か固まってくる。それでも私は何とかして皆と一緒に逃げようとした。するとラクザが微かな声で私に言った。

「ミザァ……。お前だけでも、逃げろ……」

「い、嫌だッ!何言ってるんだよ姉さんッ!一緒に逃げようッ!レダシとコエビと一緒にッ!」

「ミザァ姉さん....あたしらはもう無理だよ....」

「駄目ッ!絶対に駄目ッ!レダシッ!諦めちゃ駄目だからッ!」

「ねぇね.....生きて....」

「コエビまで何言ってるのッ!?しっかりしてッ!」

私は涙で顔をグシャグシャにしながら3人を担ぎ上げようとしたが、足がプルプルと震えてそこから一歩も動けなかった。

「ミザァ...アタシらはもう無理だ....。だかミザァ....お前は違う....!お前は生きれる。生き残って....アタシ達の分まで....」

「駄目だッ!!そんなのは駄目だぁッ!死んだら許さないからなぁッ!!」

私はそう叫んで3人をもう一度担ごうとしたが力が入らなかった。それでも必死に彼女達が私を逃がそうとした。皆を置いて行けない。4姉妹で力を合わせて生きるって約束したんだから。すると国王軍が放った爆弾が天井まで飛び、上空で爆発した。その衝撃で天井が崩れ、私達を押し潰そうとした。すると3人が私を押し出して庇ったのだ。

「駄目……ッ!駄目だよ皆ぁッ!」

私はそう叫んで戻ろうとした。だがもう遅かった。3人の体は瓦礫に押し潰され、そのまま血溜まりが広がった。

「……あ、あぁ……。う、嘘だよね……?皆……」

3人が死んでしまった事の事実が受け入れられず私は呆然としていた。すると国王軍達が私の元までやって来て私を捕まえようとしたので私は無我夢中で逃げた。そして城から出ようとしたが、その途中で反乱軍と国王軍の激しい戦いが繰り広げられており、私はその混乱に乗じて城から逃げる事が出来た。私は泣いた。泣き叫んだ。今までで一番泣いたのだと思う。その後、目がカラカラに渇いて泣き止んだ後、私は覚悟を決めた。

「姉さん達は私が必ず生き返らせる……だから今は待っててね……」

真っ赤に燃える城の前でそう呟いていた時、ふとあの国王の言っていた事を思い出したのだ。不老不死になる為の瓶を被った者は不老不死になると。私は不老不死になった事をしっかりと受け止め、その国を出た。

それから私は姉妹を蘇らせる為に永い年月を掛けて世界中を旅した、世界が大きく変わろうと、歴史が大きく変わろうと私の歩みは止まらなかった。その途中で私は研究の末、遂に3人を生き返らせた。形はそれぞれ違うけど、私はまた4人で仲良く暮らせるのならどうでも良かった。その後、私はネモネアさん達に出会い、便利屋として生きている。いつか不老不死を解くために....。この呪いを解いてまた皆で一緒に仲良く暮らす為に....。

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