I’m a monster
@shake_ikura
第1話 i will be your MONSTER
新宿の夜は暗闇に飲み込まれることはない。24時を超えてもネオンが輝いている街のはずれ、バイト先の小さなスナックの休憩スペースで
ーー怪意!真夜中に現れる“ヴァンパイア”被害者の悲痛な声
明らかにアクセス稼ぎのデマ記事だ。しかし、その文字列が目に入るたび、スマホを操作する遥真の手はかすかに止まってしまう。広告だらけの記事の「×」ボタンを押すだけでイライラし、舌打ちが無意識にでた。
ーー黒いワンピース姿の女が深夜の歩道橋下で血を吸い上げていた!?SNSに投稿された画像では「赤い目が2つ光ってる」以外は確認できず。
SNSに投稿された画像なんて、ほぼコラ画像に決まっている。また無駄な休憩時間を過ごしてしまった。と、遥真はため息をついてカウンターへ戻った。
◇
もう30年以上前から、東京に吸血鬼……“ヴァンパイア”がいるという話がある。人面犬や口裂け女、宇宙人なんかと同じ類で、スマホやSNSが発達してからはめっきり聞かなくなってしまったいわゆる“都市伝説”だ。それなのに、ここ半年でまた噂が盛り上がっている。最近ではショート動画でも再生数稼ぎのためにつかわれていて、最近では「#吸血鬼」でタグ検索すれば、それらしい動画が山ほど出てくる。ほとんどは演出や加工だが、たまに“本物っぽい”ものが出てくると一気にバズり、そして皆一瞬で忘れていく日々だ。
バイト帰りの朝5時、うすら明るい街を歩くとき、細い路地裏を何を探しているわけでもないのに確認してしまうクセがついていることに遥真は気づいている。目に入る人間は皆ただの酔っ払いで、臭いも、空気も最悪だ。頭が痛い。早く家に帰りたい。足早に駅へと向かった。出勤する人間と逆方向の電車は、いつだって居心地がいい。
◇
「遥真くんはさ、吸血鬼、信じてる?」
スナックの天井についている小さなテレビでやっている超常現象特番を見ながら、コップを磨く遥真に話しかけたのは、たまに訪れる客、ソラだった。
「えー、うーん、いたらおもしろいよなぁ」
「なんか、このあたり出るらしいやん?遥真くんなんて美味しそうやし、すぐガブ!ってされてまうな」
「え〜、俺が吸血鬼やったら女の子いくけどなぁ」
「吸血鬼かて色んな種類おるやろ。なんやっけ、ジェンダーフリー?シュガーレス?」
「……ジェンダーレス?」
「そうそう、それそれ」
平日は客足もまばらで、今もソラ以外に客はいない。洗い物の仕事もなくなり、カウンターの中のハイチェアに遥真は座った。
「てかソラくん久しぶりやん。3ヶ月ぐらい経ってない?」
「あー、そんな?忙しかってん〜、やーっと遥真くんの顔見られたわ」
「ちょ、さわらんといて」
伸びてきた手をペチンと払い落とす。やることもなく、ナッツを食べながら2人でテレビを見上げる。
「ソラは、信じてる?ヴァンパイア」
「俺はー……信じてる。いるで、吸血鬼」
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