11:整う社畜
11階層は先ほどのダンジョン内とは打って変わり、照り付ける太陽がジワジワと肌を焼く、砂漠地帯の様相を呈していた。
ジャリと砂を踏む感覚も、太陽を直視した時の眩しさも、地上のものと瓜二つだ。
逆だったなら……本当に危なかったな。
サウナ好きのヤスタケは、心底そう思った。
「やばい。リラックスしてしまう。速くここを抜けよう、アレンビー」
「いやダンジョン内でリラックスできる神経がちょっとわかんないけど」
これはサウナを知らない『召喚カード』には分かるまい。
ならばこの【ダンジョンアタック】が終わったなら、ちょっと贅沢して、貸し切り温泉にでも行こう。ヤスタケはそう心に誓った。
だからそのためにも、整ってる場合ではない。
早急にこの砂漠のボスモンスターである【モンゴリアンデスワーム】を倒し、次階層へ進むのだ。
『11階層も広々としたダンジョンですねー! ここも先程と同様、アレンビーちゃんでゴリ押し行けそうですが、ツトム様はどう見ますか!?』
『うん、行けるんじゃない? 【モンゴリアンデスワーム】は巨体で防御力もそこそこ高いから、大抵のAレアはもちろん、汎用SRなんかでも厄介な敵だよね。地中に潜っちゃうし。まあでも、【漆黒の魔女】くらいの攻撃力があれば、まあハリボテみたいなもんだろ。ここも軽く突破かな』
『おお!? ということは、もしかしたらヤスタケ選手は、この調子で最下層まで行けますかね!?』
『……そこまでは言ってない。このダンジョン、初見攻略の難易度は指折りだから。まあ僕はできたけどね。初見攻略』
『はい、ボンボンの自慢話は長いのでここでスルーしときますが……おおっと! ヤスタケ選手、【モンゴリアンデスワーム】と接敵ぃ! 出たぁ! またも出ましたアレンビーちゃんの新技『
スタジアムの巨大なモニターに映し出された【モンゴリアンデスワーム】は、ヤスタケと【漆黒の魔女・アレンビー】が豆粒にすら思えるほど、巨大で、砂に潜る度に舞い上がる砂煙は、さながらサイクロンのように高く渦巻いていた。
しかし、もはや落ち着きを取り戻したヤスタケにとって、解説のツトムが言うように、ハリボテのようなものだった。
むしろ的が大きい分、攻撃も当てやすい。
「
【漆黒の魔女・アレンビー】の決め台詞の後、【モンゴリアンデスワーム】は連鎖爆発の餌食となり、跡形もなく消え失せた。
『さっきからキミは! 僕になんかこう、チクチク棘のある言い方をするよね!? やめて!?』
『何言ってんですか、ツトム様! あなた今、かなり輝いてますよ! ただのいけ好かないボンボンという印象が、なんかイジられると面白い感じのキャラが立とうとしてますよ!』
『そんなキャラ付けいらないんだけど!』
実況と解説がコントに浮かれているところ、ヤスタケはさっさと階段を見つけて、次階層へと降りるのだった。
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