第54話:俺の分まで

現在の位置関係(海元高校 vs 超神威):

・中間地点

津和崎 & 大橋 vs 中島 & 凍次


・津和崎と大橋の後方

水鳥 & 江上


・中島と凍次の後方

氷河 & 根藤


――――――――――――――――――――


 白金と藻部山が脱落した直後、海元高校の水鳥 雫は江上 奈瑠を抱えると走り始める。次の瞬間、周囲の地面から鋭い根が次々に伸び、水鳥たちを狙って瞬時に伸びる。


「ひぃぃ!」

「奈瑠ちゃん、予知に集中して」

「は、はいっ!」


 2人は複合異能力「未来予知」を発動して根の動きを予知し、際どく躱していく。


「嘘だろ!?」


 それを遠目に見ていた根藤 滝生は驚きつつも引き続き異能力「植物使い」を発動し、根を次々に伸ばす。


「予知による回避か。それなら、避けきれないくらい一斉に伸ばしてやるよ」


 地下に大量の根を忍ばせる根藤に対し、水鳥は江上に声を掛ける。


「解除」

「はいっ」


 2人は未来予知を解除し、水鳥の異能力「水使い」によって周囲や足元を水で覆い、伸びてきた根を防ぐ。


「危なっ……やってくれたね。次は私たちが攻撃する番だよ」


 水鳥がそう言うと、江上は異能力「分身」を発動。水塊の周りに銃で武装した20人ほどの分身が現れた。








 その頃、超神威の中島 塔也と冬海 凍次は海元高校の津和崎 徹、大橋 雷斗と戦闘を繰り広げていた。中島は異能力「念動力」を発動して前方を力場で守りつつ、津和崎に接近する。


「っ!」


 しかし、津和崎が異能力「回転操作」によって操る円盾が衝突し、力場が掻き消される。


(やはり俺では相性が悪いか……!)


 中島は顔に飛んできた円盾を回避する。しかし、同時に大橋が力場が消えた隙を突いて異能力「雷使い」を発動し、中島に雷を放つ。


『ドーーン!』


 凍次が氷柱を放って雷に当てて防ぎつつ大橋に接近しようとした。


「徹さーーん!」


 しかし、ここで津和崎たちの後方から江上の声が響く。


「あれやるのか」

「みたいですね」


 そう言うと津和崎と大橋は凍次たちに背を向け、全速力で走り始める。


「おい、待ちやがれ!」


(罠か? いやでも、予知能力使える奴らに距離を取られるのは厄介だよな……)


「凍次、少し良いか」

「ん?」


 津和崎たちを追おうとした凍次を、中島は呼び止める。




 江上の分身たちは銃を構え、走ってきた津和崎に向かって一斉に銃弾を放つ。津和崎は異能力で飛んできた銃弾の回転を操作し、無数の銃弾が津和崎の周りを飛び始めた。


(俺の回転操作は複数の対象を操るのは消耗が激しい。この感じなら保って1分だな)


 大橋も異能力を使用して上空に無数の雷雲を発生させる。水鳥は異能力で巨大な水の大砲を出現させる。


「一斉攻撃ですね」

「名付けて雫機関砲シズク・キャノン

「……ちょっと格好良いな」

「徹さん、調子乗るのでやめてください」


 次の瞬間、海元高校のメンバーたちによる一斉攻撃が始まった。江上の分身たちによる銃撃、大橋の落雷、津和崎が操る2枚の円盾と無数の銃弾、そして水鳥が放つ高圧の水塊が超神威のメンバーたちに襲い掛かる。


「おいおいマジかよ!」

「少し下がってろ」


 冬海 氷河は異能力「氷使い」を発動して前方に氷の盾を展開、同時に無数の氷柱を放ち飛んできた雷や銃弾を迎撃する。








 凍次は無数の飛び道具を掻い潜り、津和崎に向かって突進する。中島は念動力を使って飛んでくる銃弾から凍次を守る。


『グシャッ』


 円盾が命中し、中島の頭部が真っ二つに割れる。同時に、津和崎の目の前にたどり着いた凍次は氷柱で彼の喉を貫いた。



「中島 塔也、死亡」

「超神威、残り3名」


「津和崎 徹、死亡」

「海元高校ビーチバレー部、残り3名」






 津和崎を倒した凍次は次に大橋に接近するため周りを見回す。


「どこだ……っ!」


『ドンッ!』


 水鳥が生み出した水の大砲から水塊が放たれ、氷河の氷の盾に穴を空ける。ここで、凍次は近くに大橋が伏せているのを見つけた。しかし次の瞬間、大橋は氷の盾が割れた一瞬の隙を突き、氷河に向かって雷を放つ。


「リーダー!」

「っ!」


『ドーーン!』


 大橋の狙いに気付いた根藤が氷河を突き飛ばし、直後に雷に撃たれた。



「根藤 滝生、死亡」

「超神威、残り2名」








 大橋は転がって仰向けになると、歩いてきた凍次に声を掛ける。


「リーダー殺れたら良かったんだけどな……悪いな凍次、勝負はまたの機会にお預けだ」

「まさかここで力を使い果たすとは。あの2人で俺と兄貴に勝てるのか?」

「勝てるさ。ダブルスはビーチバレー部の十八番だからね。最終決戦、せいぜい俺の分まで楽しんでくれ」


 それを聞いた凍次は氷柱で大橋を貫いた。



「大橋 雷斗、死亡」

「海元高校ビーチバレー部、残り2名」

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