第35話:リーダー対決と追跡劇

現在の戦況(超神威 vs 関西格闘協会):

・上空

中島 vs 山嵐


・超神威の開始地点

氷河 & 佐呂間 vs 大門寺 & 舟木


・〃から離れた場所

根藤 & 凍次 vs 猟凱 & 伏見


――――――――――――――――――――


 超神威の開始地点ではリーダーの冬海 氷河が氷のバリケードを地面から生やして迎撃態勢を取っていた。佐呂間 雪はその周りに吹雪を発生させ、雪を積もらせている。


「雪、危ないから少し下がっていろ」

「はい」


 関西格闘協会の大門寺だいもんじ 正隆まさたかは異能力「炎使い」を発動して両腕に炎を纏い、氷のバリケードに突っ込んで行く。


「おらぁっ! 喰らえぇ!」


 大門寺は氷のバリケードを一撃で破壊すると、氷河に殴り掛かる。氷河は異能力「氷使い」を発動して両腕に氷を生成し、同じく殴り掛かる。


(え、これ……!)


『ドーーーーン!』


 大門寺と氷河の激突によって爆発が発生。佐呂間は爆風をもろに受けて吹き飛ばされ、少し離れた位置の雪に突っ込んだ。


「ぎゃっ!」


(やっぱり、間違いない)


 雪から這い出ながら、佐呂間はあることを確信した。


(うちのリーダー、馬鹿だ)


 うぉぉぉぉぉ! という感じの雄叫びを上げながら、大門寺は炎を、氷河は氷を纏って殴り合っている。


(あんな漫画みたいな殴り合いある? ……あ、やばい)


 2人の戦闘を遠巻きに見ていた舟木ふなき もといと目が合う。舟木は佐呂間に向かって歩き始め、それを見た佐呂間は背を向けて逃げ始める。


(1vs1じゃ勝ち目が無い。誰かが勝って駆け付けてくれるまで時間を稼がないと)








「ちくしょおおおおおお!」


 数分後、氷河との異能力のぶつけ合いに押し負け、大門寺は氷漬けになる。氷河は凍った大門寺を殴りつけて粉々にした。


「まずは1勝……あれ、雪どこ行った」


 辺りを見回すと、遥か遠くで佐呂間が走っているのが見える。それを追いかけて舟木も走っている。


(任せとけ、とか言っといて雪が殺されたら凍次に死ぬほど怒られそうだな。まずは舟木を……)


『ドサッ』


「ん?」


 音がした方を見ると、中島 塔也の頭部が近くの地面に落ちていた。上を見ると、続けてズタズタに切り裂かれた中島の胴体が落ちてきた。


「そっちも勝負ついたところか。丁度ええやん」


 関西格闘協会のリーダーである山嵐 武が高度を下げ、氷河の目の前に降りてきた。


「入れ替え戦では直接戦えんかったからな。ここで決着つけようや」


(終わった。凍次に殺される……)


 氷河は山嵐の顔を見る。


「どしたん? そんな顔して」

「まあいい、せめてお前だけでも倒す」

「いや俺だけでもって、俺が一番強いやろ……ん、何? なんか高度なこと言ってる?」

「何でもない。こっちの話だ」



「大門寺 正隆、死亡」

「関西格闘協会、残り4名」


「中島 塔也、死亡」

「超神威、残り4名」








(大門寺と中島が脱落。ということは兄貴は山嵐と戦う感じかな。待て、雪はどうなった?)


 大門寺と中島が脱落したアナウンスを聞いて、冬海 凍次は開始地点の方を見る。


(雪がいない。それに舟木も)


 そんなことを考えていると、頭上から巨大な足が迫る。


『ドンッ!』


 凍次は難なく躱すと一旦相手から距離を取る。


「ほんま速いなあ」


 異能力「巨大化」によって身長20メートルほどに巨大化した猟凱りょうがい 大醐だいごは感心しつつも、すぐに凍次を踏み潰そうと足を出す。


『ドンッ!』


(これだけでかいとかなり高威力の攻撃を叩き込まないとダメージが入らない。かといって格闘のプロに迂闊に突っ込んだらカウンター攻撃が飛んでくるだろうな)


 近くでは根藤 滝生が異能力「植物使い」によって地面から大きな根を伸ばして攻撃するが、それを伏見ふしみ 豪久たけひさが異能力「怪力」で破壊しつつ距離を詰めている。


(あっちもまだ時間が掛かりそうだな。雪、どうにか耐えてくれ)








 凍次の心配をよそに、佐呂間 雪は舟木を大きく引き離していた。


「はあっ、はあっ……くそがっ! どうなっとんねん!」


 膝まで積もった雪の上を歩きながら、舟木は悪態をつく。


「この雪、普通の雪よりずっと体温奪ってくる。それに妙に纏わりついて動きを邪魔してきよる」


 前方を見ると、遠くで佐呂間が走っているのが見える。このままでは距離は開く一方に思えた。


「あれ……?」


 舟木は一旦立ち止まって少し考え込む。


「ええこと思いついた。俺天才やん」


 そう言うと、異能力「結界」を発動した。




 佐呂間は走って逃げつつ、他のメンバーのことを考える。


(凍次くんたちはどうなってるんだろう。大丈夫かな)


 佐呂間の異能力「降雪」は、積もらせた雪を誰かが踏んだりすると、その地点の状況を把握することができる。


(ダメだ、戦闘で雪が散らされて大事な所だけ状況を把握できない)


『カッカッカッカッカッカッ』


 突然、後方から謎の音が響く。


(足音? なんか明らかに雪の上を歩いてる音じゃないけど)


 佐呂間は後ろを振り向く。


(え……嘘)


 舟木は積もった雪の数cm上に水平に結界を張り、その上を走ってきていた。

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