第18話:複合異能力の弱点
複合異能力
・八刀島 + 霧峰 → 炎使い
――――――――――――――――――――
フィールドの南西では事前予想19位の
「複合異能力、めっちゃいい感じじゃねぇか?」
「そうだな。だが、複合異能力には弱点もあるから、それを突かれないように上手く使わないと……」
「……どした?」
「私の分身が1人殺られた。後藤の仕業だ」
「こっちに来る?」
「ああ。迎え討つぞ」
事前予想10位の
数分後、2人が潜んでいる林に後藤が現れた。手には長剣を持っている。
(さっきの女の子、殺してから2分経っても脱落のアナウンスが無い。異能力で生み出した分身ってところか……おや、何だあれは)
霧峰の異能力「霧使い」によって、小さな林を覆うように濃い霧がかかっていた。
(確か霧峰とかいう奴が開会式で霧を発生させてたな。さっきの分身の子と共闘してるってことかな)
警戒を強めつつ、後藤は濃い霧の中に足を踏み入れる。
「おっと、」
霧に入ってすぐに、どこかから石が飛んできた。後藤は難なく回避すると、石が飛んできた方向に走る。
(見つけた……2人目、3人目)
後藤は異能力「怪力」を発動させて力を足に伝えることで高速で走り、分身たちを長剣で次々に仕留めていった。
(最初と同じで全員丸腰か。どうやら分身能力でも武器は複製できないみたいだな)
『ヒュッ』
(っ!)
矢が飛んできたことで少し戸惑った後藤だが、すぐに飛んできた方向に向かう。
(見つけた。分身使いと霧使い)
後藤は、八刀島と霧峰の姿を確認した。八刀島は発射済みのクロスボウをこちらに向けてしゃがんでおり、霧峰は八刀島の肩に手を置いている。そして、その2人の少し手前に、八刀島の分身が2人立っている。
(まずは手前の分身、次に分身使い本体と霧峰を殺す!)
しかし、分身2人に後藤の攻撃が届くタイミングに合わせて、八刀島と霧峰が複合異能力を発動した。
(分身が消えた? それに霧も急に晴れてきたような……っ!)
複合異能力「炎使い」を発動させたことによって八刀島と霧峰の身体が炎に包まれ、巨大な炎の蛇が出現した。
(でかい。それにあの2人自身は炎のダメージを置けないのか)
そんなことを考えていると、炎の蛇が高速で伸び、後藤がいる辺りを一周する。
(なんて速さだ。それに、普通の炎使いの炎より温度が高いな)
炎の蛇は霧峰が霧で覆っていた直径30メートルほどの円に沿うように進んで炎の壁を作り、わずか2秒ほどで後藤を包囲した。
(熱い。すぐに脱出しないと)
後藤は2人に背を向け、異能力を発動させつつ高速で走り出す。
(異能力は通常、本人から離れるほど威力や精度が落ちる。2人で息を合わせて発動させる複合異能力、特に即席のチームなら落ち方がさらに激しい)
後藤は脱出ルートを瞬時に判断し、行動に移した。
(つまり脱出に一番適した場所は能力者たちの反対側、この炎の円で2人から最も遠い位置だ!)
八刀島と霧峰がいるのと反対側の位置から炎の壁を飛び越えようとした後藤だったが、そこに炎の蛇の頭部が先回りしていた。
(何だとっ!)
後藤は炎の蛇に呑み込まれるように炎に包まれ、すぐに燃え尽きた。
「後藤 強弥、脱落。残り10名」
複合異能力を使って高速で攻撃を繰り出すには、高度な連携が必要だと言われている。通常、それを即席のチームで行うのは困難だが、今回の八刀島と霧峰は炎の蛇を進ませるルートを予め明確に決めていた。
「うぇーい」
「上手くいったな」
「ああ。元々霧があった範囲をそのまま囲うだけだから合わせやすいな」
「それに複合異能力の弱点を知っていれば私たちの反対側から逃げようとするのも想定済みだ」
作戦が上手くいき2人はひとまず安心するが、そこに他の参加者が近付いていた。
『ジュッ』
「ぐはっ」
「霧峰!」
突然、腹に光線を受けた霧峰は近くの岩に隠れた。それに気付いた八刀島は近くの木に身を隠しつつ様子を覗う。
(あれは……)
現れたのは金髪の女、事前予想8位の
「もう1回、複合異能力で倒す?」
「いや、深浅の異能力は光使い。私たちの炎使いでは相性が悪い」
八刀島はクロスボウに矢を装填しつつ、霧峰に指示を出す。
「霧峰、さっきと同じ範囲で霧を発生させてくれ。深浅は私が仕留める」
「お、おう」
霧峰が霧を発生させた直後、八刀島は深浅がいる方へ飛び出して行った。
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