第十六話「若き冒険者たち」

「あらためて、助けてくれてありがとうました」

「ほんとうに、ありがとうございます」

「俺たち、二層で狩りをしてて、疲れたから帰ろうとしてたんだ」

「ファングボアの突進で俺が気絶してしまって、そのあと吸血コウモリまで来ていたなんて……」


 三人組の、盾持ち剣士はクレス、短剣使いがラディ、治癒術師がリンジーという。クレスは十六歳、ラディとリンジーは十四歳で、クレスとリンジーは兄妹だ。

 三人ともナオやシエルと同じく八級冒険者で、余力を残して戻るべきところをつい二層で全力を使い切ってしまい、一層の魔物を相手に危機的状況になってしまったという。


「あなたは本当に命の恩人です。効き目のいいポーションに、腰に佩いた立派な剣、さぞかし上位の冒険者なのでしょう?」

「あ、いや……えっと」


 すっかり憧れの人物を見るような視線を向けるクレスに、ナオは自分が八級の駆け出し冒険者であり、かつ本業は錬金術師だと告げた。


「な、なんと……では長年、錬金術師として修業なさっていたんですね……」


 クレスは驚きの声を上げたあと、なるほどなるほどと一人勝手に納得し、ナオへ向ける憧れの視線に変化はない。

 この世界では十五も過ぎれば立派に成人とみなされる国が多い。冒険者の年齢制限は十歳とされており、街中の雑務や簡単な採取などの依頼が受託できる。討伐系の依頼も十二歳頃から受託可能であり、つまるところ二十七歳のナオは、実力を見極める目が養われていない少年からはベテラン冒険者に見えるというわけだ。


「まぁ、いろいろあってな。どうだ、みんなもうスターレットの村まで戻れるか?」

「取り敢えず入口まで出られれば小屋で休めるな。どうだ、リンジー?」

「うん……ごめんね、私の魔力がもっとあれば……」

「いいんだ。二層ではお前に何度も助けられたんだから」


 項垂れるリンジーをクレスが慰める。

 ナオはシエルとフィオに、この二人と一緒に入口まで戻るべきかと尋ねる。ファイバースパイダーの討伐は常時依頼で〆切がない。焦る必要もないがどうするかと問うたナオにフィオが応じる。


「三人で戻れるなら同行の必要はないだろう。あたしらはあたしらのするべきことをしよう」

「私は……入口まで送った方がいいと思います。そのあとまた二層を目指すだけの余力はあります」

「まぁ結局、クレスたち次第だ。どうだ? ついていった方がいいか?」


 ナオが三人に話を振ると、三人は慌てて立ち上がり首を横に振った。


「命の恩人にそこまで迷惑をかけるわけにはいかないです。それに、ポーションのお礼もまだできてないので……」

「礼なんて今度でいいさ。それこそ飯でも今度行こうぜ」

「は、はい!」


 二層へ降りる階段のある部屋の隅で休む六人の前に、また別の冒険者が姿を現す。メンバーの年齢層はナオと同じくらいか、あるいは少し下か。

 見るからに質の高そうな装備で固めた男女六人の集団が通っていく。


「うわ、強そうだな。何層まで潜ってたんだろう」

「あの人たちは最深部まで潜れるスターレットの村で一番の冒険者パーティですよ。あの人たちの後ろを進めば安全でしょうから、僕らは帰ります。ラディもリンジーもそれでいいか?」

「そうだな」

「うん、帰りたいよ……」

「おう、それがいい。じゃあな、俺たちは進むよ。また村で会おう」


 クレスたちを見送ったナオらはダンジョン二層へと向かう階段を降りた。

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