第十一話「クルーア・ダンジョン2層」
「こ、ここ……ダンジョンの中だよな? 俺ら、さっき階段を下りたんだよな?」
ナオは目の前に広がる景色に思わず唖然としてしまう。そこには視界一杯に草原と青空が広がっていたのだから。
「クルーア・ダンジョンの第二層は草原フィールドになっています。ここにはファングボアの他にワイルドゴートやグラスウルフといった獣系の魔物が多数出現します。剣士だけではなく、弓使いにも非常に好まれるフィールドですね。魔法も大規模に撃ちやすいので、戦いやすいです」
「ダンジョン……恐るべし」
「空は晴天の青空から変化しないので、時間の変化に気付かないところは注意点ですね」
ナオはカンテラを仕舞い収納から槍を取り出す。神狼の森でも討伐したグラスウルフが三体の群れでナオたちの様子を窺っている。
「魔法で仕掛けます――風の刃よ斬り裂け!」
シエルが放った魔法が背丈のある草ごと戦闘にいたウルフを斬り裂く。すかさずその眉間にナオが槍を突き立てる。確かな手ごたえと共に、ウルフの一体が霧散し、ナオは槍を構え直して一体のウルフを斬りつける。
「でやぁあ!!」
裂帛の気合とともに二撃目を繰り出し、後詰でシエルが今度は水魔法を放つ。飛び掛かってくる最後の一匹を槍の柄でいなし、収納から剣を抜身で取り出し突き出す。トドメと言わんばかりにウルフの鼻っ面を蹴り飛ばし、ギャウンという鳴き声の後にウルフが消える。
ドロップしたのは骨や爪、それらを回収して収納に入れる。
「ダンジョンの外にいる魔物を倒してきっちり解体した方が得られる素材は多いんじゃないか?」
「多くの冒険者はナオみたいに倒した魔物を丸ごと入れられるような収納スキルを持ってません。だから倒したその場で解体するのですが、会敵の危険と隣り合わせでの解体は……私は嫌ですね」
「それは……確かにそうだな。そういや、討伐した魔物ってどうやって数えるんだ? 討伐依頼、今回は何体倒せばいいんだ?」
「ダンジョンであれば魔石が証明になりますね。今回は魔石を三つ、納めることが以来の達成条件です。肉を落とすことが多いので実際には三体以上討伐しなくてはならない場合が多いですが、運が良ければどちらも一度に手に入りますから」
ダンジョン以外なら? とナオが尋ねると、エルは討伐証明部位を提出すると答えた。
「ファングボアなら牙、グラスウルフなら尻尾、ゴブリンなら角と、それぞれ討伐を証明する最低限の素材があるんですよ。だから解体が手間な場合は、そこだけ回収することになります」
「一応、覚えておくよ」
その後もクルーア・ダンジョンの二層で魔物の討伐を続ける二人。視界が開けている分、他の冒険者たちとバッティングすることもなく、討伐したファングボアも既に五体。魔石もあと一個ドロップすれば依頼は達成だ。
「あそこにファングボア発見、ナオに任せてばかりだし、私が先行します」
シエルが魔法を唱えると、彼女の足元に風がそよぎだす。移動速度を高める補助魔法だ。短杖を腰に吊り、ナイフを逆手に構える。真後ろは足蹴にされる危険があるため、斜め後方から飛び掛かり、ナイフで切りつける。
補助魔法により発揮された高い跳躍力でファングボアの頭上を取り、そのままナイフを突き立てる。
「雷よ、迸れ!!」
一度間合いを切ったシエルの手にナイフはない。短杖を構えたシエルがナオには初めて見せる雷の魔法を、突き刺したままのナイフ目掛けて放つ。
ファングボアは唸り声を上げながら大地に突っ伏す。ほどなくして体組織がほどけるかのように霧となり、残ったのはシエルのナイフと魔石だけとなった。
「シエル、あんな戦い方もできるのか」
「……あの雷の魔法が暴発して、トレントを怒らせてしまったんです。だけど、また使えるようにならないと、私は……魔法使いとして生きていけないと思ったんです」
神狼の森でシエルのパーティが壊滅したのはシエルのミスが原因だった。その過去に打ち克とうと奮起する彼女の頭を優しく撫でながら、ナオは笑った。
「依頼は完了だ。帰ろうぜ、ファングボアの肉、焼いて食っちまおう」
「……はい!!」
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