第16話 二〇二五・春の京都


京都駅に着いて、二八番の市バスに乗った。朝早い時間だったので、人が少ないと思ったけれど、桜シーズンに突入した京都の朝はバスの中も人が溢れていた。

私の隣に座っている金髪の男の子は赤い色のだるまの帽子をかぶって、赤い紐でぶら下げた赤いケースにはめたスマホでスーパーマリオのゲームに夢中だった。七歳ぐらいだろうか。隣に座っている両親はそれぞれスマホに目を向けていた。

何処かで「カトク」という音が聞こえた。あれは、韓国の「カカオトーク」というラインと似ているアプリ だ。メッセージが来ると「カトク」と鳴る。大学時代の友人だったキムさんもよく「カカオトーク」を使っていたのを思い出した。

このバスには韓国人と中国人、それから欧米人と日本人が紛れていて、七割が外国人だ。京都に来て、市バスに乗っているのに、なぜか、見知らぬ外国のバスに乗っている気がする。

嵐山が目当ての多くの観光客を乗せたバスは殆ど降りる人のないまま梅宮大社前に止まり、私はバスから降りた。

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