第6話 しゃけのホイル焼きとマヨネーズ救済

 秋風が冷たくなりはじめた頃、猫屋の厨房からはじゅうじゅうと油のはぜる音が響いていた。

「今日は……しゃけのホイル焼きだ」

猫さんの低い声に、ベスの耳がぴんと立つ。


 まずは玉ねぎを輪切りにし、人参を短冊状に切る。まな板の上に並んだ野菜は、ベスにとってはまだちょっと苦手な存在だった。猫さんは無言でアルミホイルを広げ、油をさっと塗ると玉ねぎを2、3切れ置く。その上に新鮮な鮭をのせ、さらに玉ねぎと人参をどっさり重ねた。

 ベスは思わず見とれる。「……美しい」

「……料理は盛りつける前から勝負だ」猫さんは淡々と包みを閉じ、フライパンに並べていく。


 強火で「プチッ、プチッ」と音が立ち始めると、中火に落として12分。ベスは待ちきれずに鼻をひくひくさせていた。


 やがてアルミホイルを開けると、ふわりと立ち上がる香りにベスの目が潤んだ。鮭の脂と野菜の甘みが蒸気となって広がり、それだけでご飯が進みそうだった。

「……おいしそう……!」

ベスが感動で声を震わせると、猫さんは「……食え」とひとこと。


 子どもたちも集まり、リス園のマナちゃんが「でも野菜キラーイ!」と顔をしかめる。

そのとき猫さんは無言でマヨネーズを取り出し、これでもかとたっぷりかけてやった。

「……マヨネーズは宇宙(コスモ)だ」

 マナちゃんは一瞬戸惑ったが、ひと口食べて目を輝かせた。「あれ? 野菜おいしい!」

ベスは吹き出しながらも「猫さん、ほんとマヨラーだよね」と笑った。





◎本日のメニュー◎

しゃけのホイル焼き弁当

・玉ねぎと人参、鮭をホイルで蒸し焼きに

・仕上げは猫さんの宇宙マヨネーズ・サービス

・秋の味覚をぎゅっと詰め込んだ、心も温まる一品








つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る