第89話 1ヵ月

 その日の午後は、私はそのまま一覧作りで終わったし、新しく来た人達はたくさん果物が採れて大満足だったようだ。人数が増えても帰るのに支障は無いらしく、夕方に全員揃って帰っていった。

 それを声だけで見送って、「フィールド」画面から赤点の様子を確認。日が落ちてきたからか、全員「安全地帯」の中に移動したようだ。たぶんテントを設置したり探索の報告をしたりしているんだろう。

 その状態になるまでで書けたリストの紙は、300枚超えだ。いや書ける訳ないだろと思うんだが、実際紙の山が目の前にある。これはあれだな。きっとステータス補正ってやつ。つまりは家具効果だ。すごいな。


「1枚20個だから、6千個は書けたのか」


 なお、まだまだある。そうしている間にも「MPスケジューラー」によってガチャは回っているので、通常ガチャに混ざるよく分からないアイテムは増えている。何しろ全力MPだと、MPの最大値が雪だるま式に増えていく以上、すごい事になるからな。

 ……そういえば今日は日中普通に活動していたが、通常ガチャはどれだけ回ったんだろうか。と、ログを確認してみる。


「……全力MPで14回かー」


 ベッドで寝ていた時に比べると少ないが、「マスターホーム」に「家」と「庭付きの家」を設置する前に比べれば倍近くに増えている。という事はつまりそれだけMPも伸びてるって事で、うん。まぁ。雪だるま式……すごいな。

 というか、最大MPの桁が見た事無いところまで行ってるんだけど。カンマがこれ、4つあるな……? という事は、13桁だから……兆?


「もしかしてこれ、生き物なのか割と真剣に疑問な単位なのでは?」


 私は一体どこに向かっているんだろう。いやまぁ生き延びる為にはガチャを回すしか無くて、ステータスっていうのは高い分には困らないだろうって事でひたすら回し続けてたのは確かなんだけど。

 まぁでもそうやって回し続けてきたから、「マスターホーム」の窒息までの時間も29時間に伸びた訳だ。だから安心して、お風呂に入って着替えてベッドで寝た訳なんだけど。


「ん?」


 何故か目が覚めたんだよね。朝になったのかなと思って、実質時計代わりにしてたガチャのログを確認したんだけど、そこにはたぶん半分の、10回分の結果しか無かった。

 どういう事? と眠い頭で考えても分からないから、とりあえず「フィールド」画面でダンジョン全体を確認していく。でも、赤点の動きは変わらない。というか、ほぼ動きが無い。それはそう。皆寝てる時間だ。一部動いてるのは、警戒の人だろうか。

 そうだ夜中なら「買取所」の場所を動かして支店を追加しないと、と思い出したので、最初の「買取所」を「野原」環境階層の「安全地帯」の隅に移動。1つ目の支店を「川辺」環境階層の「安全地帯」の隅に移動させた。そこから「支店追加」を3回実行。


「「店舗間移動魔法陣」は高いんだけど、仕方ない……」


 で、それぞれの支店を「安全地帯」の隅に配置して、「店舗間移動魔法陣」を設置。これで残高が2万2千DPを切ったけど、仕方ない。うん。必要な事だったから。きっとここからたくさん依頼を受けてくれて、キャンプの人達が来てる間は、1日100DPぐらいは収入がある筈……あるといいな……。

 ま、まぁ、1ヵ月の切り変わりがあればまた55万DPの収入がある筈だから……と、残高を確認したら。


「ん?」


 1万5千412DP、という、ギリギリの数字になっていた。あれ?

 2万DPは超えていた筈、と思ってちょっと考え、「買物」画面を開く。そしてそこに表示されていた「今月の販売によるDP」が0DPになっているのを確認して、なるほど、と頷いた。


「そうか、1ヵ月の切り変わりが来たから目が覚めたのか」


 ……。自分で言っておいて違和感があったので、もう少し色々調べた。

 結果。


「えぇー……」


 私にとっては割と致命的な事に。

 ガチャが、1日1回無料の代わりに……DPでないと回せなくなっていた。

 嘘でしょ? 何で?

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