貞操逆転世界の幸運者〜ただでさえ少ない男が全員草食系男子〜

@kaMITuki343

転生編

第1話  転生

 ピッ・ピッ・ピッ——。


「おぎぁ〜!おぎぁ〜!」


 西暦2225年、俺は再び命を宿した。

 目は開かないし、耳は遠い、声はまだまともに出すことはできない。

 今の俺に出来る事は泣くことぐらいだ。


「おめでとうございます!奥様!元気な男の子ですよ!」


「はぁ、んっ、本当に本当に男の子なのね!」


 一つの称賛の声、もう一つの微かに聞こえる女性の声は震え、それと同時に喜んでいた。


 と、いう事でここで一旦話を遡る。


◇◆◇◆


『私は神です。そしてあなたは死にました』


「え?」


 ただ真っ白な空間、もしくは無色、そんな空間で俺は目を覚ました。

 そして目の前には少女が立っている。


 白い肌、青い瞳、綺麗で長い金色の髪に、ギリギリを攻め過ぎて今にも色々と見えてしまいそうな格好した小柄の少女。

 可愛い、しかし唐突に意味の分からない事を口にした。

 残念美女って奴だな。


「はぁ、何言って...」


『無理も無いですね、轢かれた衝撃で記憶が少し飛んでいるのでしょう』


 轢かれた衝撃...そうだ。


◾️○◾️○


「おい、待てっ!?」


 ブゥゥゥゥー——。


 俺はあの時、ボールを追いかけ道路に飛び出した子供の代わりに...。


◾️○◾️○


『思い出しましたか?』


「あ、あぁ。そうか俺は死んだのか...」


『あなたの犠牲であの少年は肘の擦り傷ですみましたよ』


 俺の死は無駄にはならなかったんだな。

 かなり心が救われた気がする。


『あなたが生を受けた時から今日まで、拝見させてもらってましたが、お疲れ様でした』


 ん?今なんて言った?


 一人で話を進め続ける少女は咳払いをし、本題に入った。


『ゴホン。あなたは選ばれた存在。違う世界に記憶を持ったまま転生する事ができます。元の世界ではファンタジーとして伝わる、剣や魔法の世界、それは異世界。強力な魔物を倒し世界を救う勇者に...』


「あの」


『...なんでしょう』


「話を逸らさないでくれ」


『...』


「俺の不幸体質について何か知ってるのか?」


『いえ、私は知りません。地球には見切れ無いほど数多くの生物が存在します、故に多忙であり一個人だけに気を配るなど...』


 この目は...何か知ってそうだな。


「君は、さっきから矛盾してる」


『はて?』


「君が神である事は一旦信じる。だけど知らぬ存ぜぬで通せるほど俺は馬鹿じゃない。だけど教えろと強くも言えない、俺は神じゃないからね」


『...』


「...君は俺が産まれた時から見てた、そう言ったよね?」


 忙しいと言うのに平凡な人間、俺一人を産まれた時から見ていたなんて、辻褄が合わない。


 沈黙が続く、その間視線を少女から一度も外さなかった。


『はぁ、そうですよ、あなたがその体質である事、理由も知っています』


 ようやく口を開いた。


『いっそ、全て話します。その方が早そうですから』


「あぁ」


『地球に流す人間には【幸】と【災】と言う値を付与します』


 幸と災。


『大半の人間には丁度半分づつ【幸】と【災】を付与し流します。ですが例外として稀に【幸】の値を偏らせ流す事があります』


「それは何でだ?」


『世界を発展させる為です。私の思惑は良い方に働き数々の発明や改革をする幸運者達を中心に、良くも悪くも、ここまで人間は強くなりました。例を挙げるとトーマス・エジソンやアルベルト・アインシュタイン、あなたの国なら伊藤 博文とかでしょうか』


 まじか、人間が積み重ねてきたモノは所詮、神が起こした奇跡の延長線、最初から手のひらの上だったってわけか。


『【幸】を振り【災】を除く、その際に余った値【災】の行き場所は』


 何となく話は見えてきている。


『溜まり続ける【災】の値が暴走して世界が滅びる前に消費する。その為、特定の人間に偏らせる。これに選ばれたのがあなたでした』


「分かった」


『意外とあっさりしてますね、罵詈雑言を覚悟していましたが...』


 命にしがみついていた頃の俺ならそうかもしれないな、だけど。


「もう死んでしまっているからね、今更言う事はない。それに話の筋が通っている、納得...はできなくても諦めはついたよ」


『そうですか』


 俺を見つめ一言だけ返した少女の目はどこか悲しんでいるような気がした。


『先もお伝えしましたが、もう一度。あなたは地球にて【災】の消費を達成されました、ですから今度は【幸】を。あなたが世界を変えて下さい』


「それはまた大役だな、大変そうだ...」


『そんな事ありません、幸運者には都合良く奇跡が起こります。異世界なら頼り甲斐のあるパートナーから、優れた剣まで手に入れることだって』


「いやいい、勘弁してくれ、たとえ幸運体質になったとしてもそんな世界には生き返りたくない」


『...そうですか、ならどのような世界が』


 そんなの当然答えは決まってる。


「なら地球がいい」


『...理由を聞いても?』


「俺の地球での思い出のほとんどは、確かに酷く辛いものだった、だけどそれだけじゃなかった」


 目を閉じて思い出す夕暮れを。


「景色が良かったんだ」


 俺の我が儘かもしれない、でも綺麗な景色を彩る為に他の最悪な思い出を書き換えたかった。


『分かりました、あなたの要望を聞き入れます、ですが同じ時代は不可能ですので観念が大きく変わると思いますが、200年後の西暦2225年でよろしいですか?』


「地球に産まれ直させてくれるなら時代は特には気にしないし嬉しいが、観念が変わるってどう言う事だ?」


 言葉の意味は分かるけど。


『人の外見や知能が少し向上していると思われます、その他は、時代により人の評価基準が変わるのは必然、何かしら異変があるかも知れません』


 まるではっきりしない回答だ。


「詳しくは教えてくれないのか?」


『いえ、私にも分からないだけです。200年後の私は知っていると思いますが』


 神でも未来の事は分からないのか。


『ご期待に添えず申し訳ございません』


 顔に出てたか?

 咄嗟に頬を片手で叩く。


『ふふ、私は万能ではないのです。未来の事が分からなければ、過去を見落とした事もある、それに勘違いされていると思いますが、私自ら地球に干渉はできないのです、見守るのでは無く、見ているだけしか』


 俯く神が一番災難ではないだろうか、自分では伸ばせない手を握りしめながら見ることしかできないのだから。


『それでは転生開始致します、200年後の地球をお楽しみ下さい』


 深々と頭を下げる神を見つめていると、意識が途切れた。

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