TENSYOKUの話
芳岡 海
その会社
その会社は海にごろごろと流れている商品を整理して、仕分け、選別し、求めている顧客へ送る。特定の時期にまとめて出荷される商品もあるが、そこのサービスでは扱っていない。
商品は様々な特性を持っている。
その会社は顧客の要求に合う商品を見繕って薦める。海の動向なんかも伝える。この会社からはろくな商品が来ないと思われてはいけない。当然海にいるのはその会社だけではない。特定の種類の商品に特化した会社も多い。その会社は大手なので何でも扱う。
従来は、会社が紹介した商品の中から顧客が選ぶというやり方が多かったけれど、最近では最初から顧客の方で探すやり方もある。どちらにしても大海原に出るのは顧客の本業ではないから会社が案内をする。会社は商品を選別しやすいように、野生の商品をカテゴライズしてパッケージングする。網に入れてやったり、釣り竿を用意したり、かかりやすい餌や釣り竿を教えたりもする。そこで支払う手数料は必要経費だと顧客は思っている。
大変なのは商品にも意思があることだ。商品の方も顧客を選ぶ。そして金を払ってもいないのにこの会社にはろくなものがないとかサービスが悪いとか言う。
会社の仕事はそれぞれに要求のある商品と顧客を繋ぐことである。
顧客はこんな商品がほしいと会社に要求する。商品も要求をする。会社は、商品から魅力的に見えるように顧客にアドバイスをし、顧客から魅力的に見えるように商品にアドバイスをする。しょぼい餌しかないのに大物を欲しがる顧客もいる。商品も無理な要求をすることもある。売り手市場の時代と買い手市場の時代がある。
晴れて双方が合致すればおめでとうございますとなって会社の仕事は完了するが、また別の商品が別の顧客のところから出ていって海を漂い始める。
顧客と商品が未来永劫一緒にいては会社の仕事はなくなってしまうことになるので、商品が出ていってくれる方がその会社からしたらありがたいのだろうなんて言われることもある。
でも、商品が出ていきたいのに出られないとか、合わない商品を手放せない方が良くないだろうと、海は流動的であるべきだという意見が最近は多くなっている。
◆
つまり、その会社っていうのが今回の場合はリ〇ルートエージェントのことで、商品っていうのが転職する私で、転職先の会社はリク〇ートにお金を払って今回私を採用した。
私はリ〇ルートにお金を払った顧客ではないので、リクル〇トは私の頼る相手ではない。だから、どうしたらいいか教えてもらおうとしたり転職できるか不安なんですと相談しても意味はない。対応が遅いとか、担当がいるのに返信がいつも代理だとか、どこそこの辞退の話がちゃんと伝わってんのかとか、受けたはずのWeb適性検査のリマインドが違う日程で届くとかでいちいち不満を言って心を乱す必要はない。私は自分の要求が叶うようにリ〇ルートを最大限利用できればよい。この商品が採用されるように互いに連携しているのだと思えばよい。
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