第6話爆発魔法への第一歩

「……でさ、カイはどんな魔法を使いたいの?」


 


結月が汗をぬぐいながら尋ねてくる。

訓練の合間、木陰で水を飲んで一息ついたタイミングだった。


 


「そうだな……“爆発系”がいい」


 


「え?」


 


結月がストローを咥えたまま目を見開く。


 


「……また物騒なの選んだねぇ。

ていうか、あんた絶対わざとでしょ。爆発って一歩間違えたら危ない系だよ?」


 


「まあな。でも、試してみたいことがあるんだ」


 


「試す? 何を?」


 


カイはしばらく黙っていたが、やがて静かに拳を握って言った。


 


「“拳に爆発を乗せてぶん殴る”ってのを、やってみたくてな」


 


「はああ!?」


 


結月があからさまに目を丸くする。


 


「魔法ってそういう使い方するもんじゃないでしょ!? ていうか爆発で自分の腕飛ばす気!? それ、支援魔法で包んでもアウトだよ!?」


 


「大丈夫だ。加減はできる、はずだ。

それに……これは俺にしかできない戦い方なんだ」


 


その目を見て、結月は息を呑んだ。

まるで“確信”のような何かが、彼の中に宿っているのを感じたからだ。


 


「……はあ、もう……ほんっと無茶するんだから……」


 


結月はため息をつきつつも、懐から小さなメモ帳を取り出した。


 


「わかったよ、じゃあ教える。初歩の爆発系、“【魔閃弾(ませんだん)】”。

着弾地点で小さな爆発を起こす魔法。

威力は弱めだけど、連発できるし、威嚇にも向いてる」


 


「……【魔閃弾】、か」


 


カイはゆっくりと呟くと、掌に魔力を集める。


 


「コツは“魔力を一点に凝縮して、空間に向かって放る”感覚。

魔力の中に“破裂”のイメージを混ぜて、圧を溜めて、放つ!」


 


「なるほど……やってみる」


 


──ズンッ!


 


次の瞬間、カイの手のひらから放たれた魔力が、空中に赤い閃光となって走る。


 


「え、ちょっ──!?」


 


地面に当たった瞬間、土煙がふわっと舞い、直径30センチほどの小さなクレーターができた。


 


「……はっ!? 初回で出た!? ていうか威力ちょっと高くない!?」


 


「たぶん、魔力量が多いせいかもな。

でも、悪くない。これを“拳”に込めれば……」


 


カイは拳を見下ろし、静かに燃え上がるような眼差しで笑う。


 


「爆裂魔法拳──やっと第一歩だ」


 


「……なにその中二病っぽい名前……」


 


結月はそうぼやきつつも、口元には小さな笑みが浮かんでいた。


 


「ま、いいや。せいぜい吹っ飛ばないようにしなよ、“弟子”くん?」


 


「“先生”が見ててくれるなら、たぶん大丈夫だ」


 


「──っ……!」


 


不意に真っ直ぐな言葉を返されて、結月は少しだけ顔を赤くした。


 


(ずるいよ、カイ……前よりずっとかっこよくなってる)


 


彼女の心に、小さな火花が散った──それは、魔法とは別の“爆発”の予感だった。

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