転校初日で「彼女バレ」した俺、実は全員に好かれていた件
赤いシャボン玉
第1話
教室に入った瞬間、ざわつきが止まった。
「……え、誰? モデル?」
「転校生じゃない?
静まり返った教室で、俺はちょっとだけ苦笑いを浮かべた。注目を浴びるのは慣れてる。むしろ、それが嫌で転校したくらいだ。
「えっと、今日からこのクラスに入る
当たり障りなく自己紹介をして、空いていた一番後ろの席に促されて座る。窓側で、日差しが心地いい。ここの学校は都会の喧騒から離れていて、空気も人間関係も、きっとゆるいと思っていた。
「お隣、よろしくねっ!」
そう言って笑いかけてきたのは、隣の席の女子だった。ぱっちりした目に、茶髪のショート。明るくて、ちょっとお節介そうな雰囲気。
「
「いきなりだな。よろしく、水沢さん」
「敬語いらないよ、同い年なんだからさ!」
こうして、俺の転校初日は、まあまあ順調に始まった。
――昼休みまでは、ね。
*
弁当を開けて、ようやく一息。自分で作ってきた適当なサンドイッチを食べていると、スマホが震えた。
【はるくんへ♥ お昼ちゃんと食べてる? 愛してるよー!】
メッセージの内容は、明らかにラブラブカップルのそれだった。だけど、これはただの妹――陽葵(ひなた)。兄妹仲が良すぎるだけの話。
……の、はずだった。
「えっっ!? 今の通知、“愛してる”って書いてなかった!? ちょ、彼女!? 転校初日で彼女バレ!?」
隣の水沢が覗き込んで、全力で叫んだ。
一瞬で、教室中が騒然となった。
「え、マジ!?」「誰!? どこ住み!?」「え、早く見せて!」
わーっと女子数人が集まってくる。俺は慌ててスマホを伏せた。
「違う! これは、妹からで――」
「妹が“愛してる”って送る!? どんな家庭!?」
ごもっともである。でも、事実なのだ。陽葵は重度のブラコンで、俺が家を出てからというもの、LINEの通知が毎日うるさい。
「つーか陽真くん、イケメンすぎるし、彼女いても全然不思議じゃないよねー」
「わかるー。あ、でも彼女いるって分かったらちょっとショックかも……」
……なぜか好感度が下がるどころか上がってる気がする。なんだ、このクラス。
*
放課後、騒ぎは一応落ち着いていた。
水沢が申し訳なさそうに声をかけてきた。
「ご、ごめん! なんか私のせいで、変な誤解させちゃって」
「気にするな。別に悪いことしてないし」
「でも、妹からのLINEだって分かってたら、あんなに騒がなかったのに……私、すぐテンパっちゃうタイプでさ……」
肩を落とす彼女に、俺は少しだけ笑って答えた。
「ほんとに、気にしてないって。むしろ、助かったかも。最初の印象が“無愛想な転校生”だったら、クラスとなじめてなかった気がするし」
「……そっか。なら、よかった!」
彼女の笑顔は、まぶしかった。
――このとき、俺は知らなかった。この“誤解”をきっかけに、俺がいろんな人にモテ始めるとは。
そして、このクラスには、まだまだヤバい奴らが潜んでいるということも――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます