高級猫缶タイの男頭つき~すべてを、猫に、捧げます~
キジトラタマ
第1章 チュルリン
1. 猫島上陸
―――千葉県内の森の中で、3日前に発見された不可解な
およそ3年間の海外赴任を終え、日本に帰国してから、今日で1週間。
連日耳に入って来るニュースは、とある殺人事件の続報ばかりだ。帰国後の多忙さゆえに詳細まで把握してはいないが、不法残留中の東南アジア系外国人男性が、3日前に
惨殺遺体、不法残留外国人、暴力団、海外マフィア――。
奥の部屋から流れて来るテレビの情報番組は、視聴者の関心を
たしかに日本で起きる事件としては、一味違う様相を
けれどそんなニュースも、陽だまりで昼寝する猫のごとく穏やかに時間が過ぎるこの島では、遥か彼方に浮かぶ、
ぼんやりと頭の片隅に入り、次第に
そこら辺で自由気ままに転がる生身の猫たちへ目を向ければ、世俗的な話題は、頭からすぐに消え去る。
――そう。嫌なことは何もかも、まるで夢だったように、すべてが消えてなくなる――。
「お待たせしてしまって、ごめんなさいね」
急なもよおしではずしていた大家の高齢女性が、前掛けエプロンで手を拭いながら、トイレから玄関まで戻って来た。
「え……と」
「
「そうですか。
大家の女性から、ちりめん素材のクロネコがぶら下がった、鍵を渡される。
「本当に、部屋の中を一度見られてから決めなくても、いいんですか?」
「構いません。住まわせていただけるだけで、十分ですので」
本日から生活の拠点となる、家をお借りする。築80年を超える古民家だそうだが、リフォーム済みで家具もある程度揃っているため、すぐに住める状態とのこと。
鍵に付いたキーホルダーのクロネコに加え、大家さんの足元に敷かれた玄関マットに描かれている絵柄もクロネコ。先ほどから
どうやら大家さんは、クロネコがお好きみたいだ。
へそ天猫はケガをしているのか、口元に
「本日より、この島でお世話になります。どうぞ、よろしくお願いいたします」
深々と、頭を下げる。
こういった小さなコミュニティでは、最初が肝心。失礼があってはならない。
「こちらこそ。わからないことがあれば、何でも訊いてくださいね。それと、あの家に住んでいただく条件ですけれど――」
「はい。紹介してくださった役場の方から、すでに
猫付き物件とは、さすがは猫の島。猫とは一緒に生活してみたいと思っていたため、願ったり叶ったりだ。
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