いったん解散
「だっぁしゃあら!」
俺はワープ装置から出た瞬間に倒れ込み、大きく息を吸った。
「大丈夫ですか?ハル先輩」
地面に横たわる俺に、ノゾミはそう言って手を差し出してきた。俺はその手を掴み、立ち上がる。
その横で、ヒスイが伸びをしながら言った。
「いやぁ、なんとか生きて帰って来られましたね〜」
「それに、こんなに色々手に入れられましたしね」
ヒスイの言葉にハリも便乗して、盗んできた設計図や装置でパンパンになった鞄を持ち上げた。
「作戦は成功したってことで…いいんだよな?」
「ええ!完璧でしたね!」
とりあえず、その日はいったん解散ということになった。
ヒスイたちが研究と開発に専念するためというのと、俺たちは明後日に学校があって、さすがに家へ帰らなければならないからだ。
パワードスーツをヒスイ達に返した後、俺たちはワープ装置で街の路地裏に移動し、帰路についた。
「それではハル先輩!また!」
「おう、またな」
ノゾミが俺に背を向けて小走りに駆けていくのを見届けてから、俺もアパートへ帰った。
しかし、『世界救済の会』があんな化け物を所有しているなんて思いもしなかった。
「あれは生きた心地がしなかったな」
そう独り言をこぼした。アパートまでの道は人通りが少ない。声を張り上げて歌ったりしない限り、誰かに聞かれたりすることは滅多にないだろう。
建物の陰を移動する怪しげな影が目に入ったが、俺は特に気にしなかった。
「ただいま」
俺は部屋の扉を開き、上着を脱いで布団の上に寝転がった。
そして、封筒を持った右手を頭の上に持ち上げる。
「はあ」
それを見て、ため息をついてしまった。
この封筒は、玄関前のポストに入っていたものだ。差出人は…、親。今回は母親からだ。
前に(厳密に言えば1話に)話したと思うが、俺は親の過剰な期待から逃れるために一人暮らしを始めた。
一人暮らしを始めて二年目、親はまだ諦めていない。一週間から二週間に一度、こうした手紙が届く。今回は母親からだったが、父親から来ることもある。
その内容はいつも同じだ。「帰ってこないか」とかそんな感じ。よくもまあ、こんなにいつまでも執着し続けられるものだ。
手紙が来る時点で、諦められてはいない。
中身を見ないまま、俺は封筒をゴミ箱に向かって放り投げた。が、うまく入らず床に落ちてしまった。仕方なく、封筒を拾い上げてゴミ箱の奥に押し込んだ。
「はあ…なんか疲れたな」
こういう時は風呂に入ってリフレッシュだ。
俺は脱衣場に向かった。
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