作戦決行
俺達は全員ワープ装置に乗り込み、出発した。相変わらずワープ時の感覚には慣れないが、今はそれどころではない。
この作戦の結果によって、これからの戦況は大きく変わるだろう。
『世界救済の会』本部の前に、今、俺達はいる。複数の建物が複雑にかみ合ったような外見をしていて、それを塀で囲んでいる。中に入るための門の前には、武装した男が二人立っている。いや、上手く偽装しているだけで、あれは宇宙人か。
ともかく、作戦決行だ。
コハクとルリが真正面から突撃する。二人の手には、見たこともない武器が握られている。
コハクが持っているのは薙刀に近いような見た目をしていて、刃からは常に蒸気が上がっている。きっと、とてつもない熱を帯びているのだろう。
それに並び、ルリが手にするのは柄の長い巨大な両刃の斧。白銀の刃先に太陽光が反射する。
「おらおら!全員ぶっ飛ばしてやるぜ!」
「いいねぇそれ!ここで終わらせちゃおうか!」
門の前にいる男たちが驚いた顔で叫ぶ。
「なんだお前ら!?こっちに来るな!」
「止まれ!」
当然、二人と男たちは戦闘を開始した。宇宙人の身体能力は高いが、コハクとルリは例のパワードスーツを着ている。そのためか、互角以上の戦いを繰り広げることができている。
俺達はその隙に、建物の裏側へ向かった。
俺たちが侵入してしばらくすると、警報が鳴り響いた。
「あいつらどんな暴れ方してんだ?」
ザクロが呆れたように言った。実際、廊下の真ん中を堂々と移動しているのに、対して敵が現れない。
おそらく、この施設の宇宙人全員がコハクとルリの方に向かっているのだろう。それほどまで派手に暴れていると…。
「あっ!これもいただいて行きましょう〜」
メノウがそこら辺においてある目ぼしいものを片っ端から手に取っている。
すると、ヒスイが叫んだ。
「ノゾミさん!あそこの部屋、開発室と書いてあります!開けてください!」
その声を聞き、ノゾミはすぐに懐から針金を取り出し、鍵穴に差し込んだ。
「ってか、宇宙人なのに日本語使ってんのな…」
俺が呟くと、ハリが言った。
「多分、この施設内に日本人が住んでいるのでしょう。そのために…と、開いたみたいですね」
中に何がいるか分からないので、盾を持っている俺が戦闘に出て、慎重に扉を開ける。
その瞬間、不快な金属音が響き、腕に鈍い振動が走る。
「おい!なんかいるぞ!」
俺が声を上げると、ザクロが身を乗り出して、リボルバーを向けた。
「私に任せろ」
ザクロの持つリボルバーは38口径で装弾数は六発。しかし、通常のものよりも威力が高くなるように設計された特別なものだ。その分反動も大きくなるが、ヒスイのクローンであるザクロの筋力があれば、大したデメリットにもならない。
火薬の炸裂音が鼓膜を揺らし、こちらに攻撃してきた宇宙人は倒れた。
周りを見れば、すでにヒスイたちが装置や装置等の設計図。実験記録が書かれた資料を回収していた。
「よし!もう脱出しましょう!」
「そうだな。表で戦闘している二人も限界だろう」
「分かりました。二人に連絡しておきますね」
ハリがコハクとルリに脱出する旨を伝えた後、俺達は逃げ出した。
壁を粉砕し、外に出た。そして、ワープ装置が設置されている森の方へ全力で走っていく。
その時、俺たちの頭上から、何かが降ってきた。
それは、4メートル程の身長と、異様に長い手足を持った。人型の化け物だった。
化け物はこちらに向き直り、不気味な咆哮を上げた。
ヒスイは頬に冷や汗を浮かべながら呟いた。
「これは…、ヤバそうですね…?」
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