第20話「初任務、出撃」


 翌日の朝、オルディナス機関の出撃準備室に緊張感が漂っていた。

 佑真は支給された黒と青を基調にした戦闘スーツに身を包み、グレイシアの首元の装具を調整していた。


「グレイ……」


「大丈夫、俺たちならやれる」


 そう言いながらも、手のひらは汗ばんでいた。

 初めての実戦――その言葉の重さが、肩にのしかかっている。



---


 ブリーフィングルームでは、神城がホログラム地図を表示していた。

 赤く点滅するのは、郊外の廃工場。


「昨日の夜、ノクス団の痕跡が確認された。アークエンゲージギアの残留反応もある。

 今回は調査を兼ねた制圧任務だ」


「制圧って……本当に戦うんですか?」

 思わず佑真が口にすると、裕太がニヤリと笑った。


「そりゃあな。俺たちは遊びじゃねえんだぜ?」


 総士は淡々と付け加える。


「本物のアーク使いは、躊躇なく殺しにくる。気を抜くなよ」


 その言葉に、背筋が凍る。



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 隊は二つに分かれ、先行調査組は神城・裕太・総士。

 後方支援と連携を担うのは佑真と綾杜だ。


「初陣は後衛からでいい。君はまだ経験が浅い。だが――」

 綾杜が佑真の肩に手を置く。

「心は前を向いて。グレイシアと、旋律を重ねてね」


「……ああ」


 ニンフィアとサーナイトも静かに頷き、仲間としての信頼を示した。



---


 夕刻、黒い輸送車がオルディナス機関のゲートを出る。

 車内で、佑真は窓の外を見つめながら拳を握った。


(ノクス団……あの路地裏で見た、あの残酷な戦い……)

(今度は俺が――止める)


 グレイシアが隣で小さく「グレイ」と鳴く。

 冷たく優しい体温が、心を落ち着かせた。



---


 目的地の廃工場に到着したのは日没直前だった。

 赤い空の下、錆びた鉄骨が影を落とす。


「ここか……」


 神城が手を上げ、全員が散開する。

 廃墟の奥から、かすかな音が響いた。


「……いるな」


 次の瞬間、闇の中から赤黒い光が瞬く。

 アークエンゲージギアの、不吉な輝き。


「全員、戦闘態勢――!」


 佑真は息を呑み、氷の粒子が右手に集まるのを感じた。


(これが……俺の初めての任務だ!)




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