第19話 時の過ぎ行くままに
和磨は病院のベッドの上で目を覚ました
「気が付いたかね」
「 …… 彼女は?」
様態を確認しながら看護師が応える
「発見された時、君は独りだったそうだ、何処か痛む所は有るかな?」
「そんな馬鹿な!彼女は撃たれたんだ!何処です!?」
「撃たれたのかね?間違いない?」
和磨は起き上がろうとするが、ベッドの上にベルトで拘束されて身動きが取れなかった
「何だこれは!?外せ!」
「落ち着いて、少し待ってくれ」
瞳孔反射を確認し終えた白衣の男は、首から下げたPHS電話で誰かと話し始めた
「目覚めました … ええ、会話は可能です。それより ………… 」
通話を終えて暫くして、病室の扉が開いて 自衛隊の制服を隙無く着込んだ男達が入って来た
出入り口に、ちらりと黒服の人影も見える
「統合作戦司令部の桂です」
「防衛省情報部の板倉です」
2人は帽子を取ると、頭を下げる
階級章は2人とも一佐だ
「ここは何処です?」
「世田谷の中央病院です」
「世田谷って … 東京の?」
「自衛隊病院ですので、ご安心下さい」
「そんな事より、彼女は何処です!?」
「落ち着いて下さい、彼女と言うのは貴方と一緒に居た黒い肌の女性で間違いないですか?」
「そうだよっ!アンタ等見てたんだろ!あの子は撃たれたんだ、無事なのか!?」
「撃たれたんんですね?間違いなく?」
「何度も言わせるな!コレを外せ!人権侵害で訴えるぞ!!」
如何にも幹部らしく事務的な返答に、段々と腹が立ってくる
「遅れて申し訳有りません」
其処へ、今度は海上自衛隊の白い制服を着た男が入って来た
和磨も知っている、江田島でお世話になった灘瀬海将補だ
つい先日、電話で話したばかりだ
「灘瀬さん?何故東京に?」
「弘原海君、無事でなによりだ」
灘瀬も市ケ谷の海上幕僚監部に詰めて居た
「それより、コレ何とかして下さい」
和磨は恨めしそうにベッドの拘束具を見る
「残念だが、精密検査が終わるまで我慢してくれ」
「検査ってなんですか?それより彼女は何処です?一体どうなってるんですか!」
「弘原海さん、貴方が接触した相手は以前、潜水艦乗務時に録音した例の歌声の持ち主で間違い有りませんか?」
言葉遣いは丁寧だが、制服組特有の上から目線を感じる
しかも、いつまで経っても同じ質問の繰り返しだ
「そうですよ、名前はプルートゥ!海を浄化するお姫様らしいですよ」
「プルートゥ?それは当人が名乗ったのかい?」
「海を浄化するとは具体的にどう言う事か説明して貰えるかな?」
桂も板倉も、和磨の疑問に答えるでも無く、自分本位でグイグイ詰め寄って来る
まるで映画で視た軍事法廷だ
散々我慢していたが、とうとう和磨も頭に来た
「良い加減にしろっ!俺は民間人だぞ!一体どう言う了見で取り調べてるんだ!」
「弘原海君、今回の作戦にあたって、君の軍籍は復帰されているんだ電話で言わなかったかい?」
「聞いてませんよ!?そもそも自衛隊は軍隊じゃ無いから軍籍なんて言わないでしょ?」
「まあまあ」
「まあまあ、落ち着いて」
「反対に聞かせて下さい!防衛省と日本政府は一体どこまで把握してるんですか?」
桂と板倉は顔を見合わせると、ブリーフケースからiPadを取り出し、動画を再生した
「これは先日、あの島に潜入した米軍
そこには、サーモグラフィー映像だが和磨とプルートゥが楽しく食事をしたり、仲睦まじく愛し合う姿が音声付きで映っていた
「うわあぁーーーっ!?ヤメロ馬鹿!」
和磨は耳まで真っ赤になりながら叫んだが、どう転んでも既に世界中の情報組織がこの映像を共有していたであろう事は間違いなかった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます