第13話 逃げ出すよりも進むことを


 チリン …… チリリン♪


 縁側に吊るした風鈴が風に揺れる

 汗ばみ火照った身体に風が気持ち良い


 どこまでも青い空に太陽が眩しい


 畳の上に全裸で寝転がったまま、部屋に射し込む日射しが肌を焼いているのに気付いた和磨は、漸く身体を起こす


 いつの間にか、大分陽が傾いていた様だ


 隣には、満足気な笑顔を浮かべたプルートゥが静かに寝息を立てていた


 喉が乾いた和磨は冷蔵庫を開けると、グラスに氷を入れて泡盛を注ぎ口を付けた

「 …… ふう」

 カラン!

 と氷が音を立て、プルートゥも目覚める


 彼女はオレンジ色の3つの目で和磨を見付けると、柔らかく笑って走り寄って来た

 堪らなく可愛くて愛おしい


 互いに初めてだったが、本能とは不思議なもので、つつがなくすべき事が済んだ


 和磨の肩に両腕を回した彼女は、顔を近付けると優しく口付けをして来た


 異種族でもキスするんだな …… と、惚けた感想を思い浮かべて、そう言えば先程愛し合った時に、自分から散々キスしていたのを思い出して赤面する


 彼女に尻尾が有ろうが、全身鱗で覆われていようが、愛し合うのに何一つ不自由は無かった


 やっと口を離した彼女に和磨が聞く

「呑む?」

「うん!」


 呑みかけの泡盛を受け取ったプルートゥは一息に飲み干す


 どうやらお酒とは一気飲みするものだと覚えてしまったらしい


 堪らなく愛おしい


 和磨の股間が素直な欲情に反応しかけるが、プルートゥはそれを見て

「駄目だよ」

 と言った


「どうして?」

「もう、授かったから …… 」

 彼女はそう言い、自らの下腹部をさすって見せる


 え?

 まさか、出来たの?

 判るものなの?

 凄えな女体の神秘!?


 只の一回では無く、朝から陽が傾くまで散々求め合い、愛を確かめ合った自覚は有る


「大事でしょ?大切に育てなきゃあね」


 DTと決別したかと思えば、いきなりパパに為ってしまったらしい

 しかも相手は人間ですら無い


 だけど後悔はしていない

 寧ろこれまでの人生で、一番充足していた


「お腹空いたね、ちょっと魚採って来る♪」

 彼女はそう言って海へと飛び込むと、あっという間に見えなくなる


 彼女と一緒なら食べる物には困らなさそうだ


 そう考えると、意外とこの離島での生活も捨てたものでは無いかなと思える

 世捨て人の様な生活だとしても、彼女を人の目から遠避けるには寧ろ都合が良いかも知れない


「1日、何も出来なかったな …… 」

 迫り来る敵の事を考えると少し憂鬱になるが、過ぎた事は仕方無い


 今は愛しい彼女が捕まえて来た立派な鰤を、どう調理しようかなと考える方が先だ


 先ずはプルートゥの為に刺し身を用意して、ぶりカマを炙ったら有り合わせの野菜と味噌汁を作ってみた

 子供の頃から祖父の釣った魚を一緒に捌いていたから、魚料理なら一通り作る自信は有る


 1mを超える大物だから、2人なら充分な食べ応えがあるご馳走だ


 洗い物を済ませると、夕陽を見ながら2人並んで泡盛で乾杯した


 この何物にも代え難い幸せな時間を堪能する間、迫りつつある危機の事はすっかり頭から消えていた

 


 

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