第16話:底辺非モテが英語会で「既婚者は来るな」発言大炎上・前編 ※よいこの皆さんは、絶対に真似してはいけません。

【プロローグ:英語会に期待膨らむ】


医学部彼氏の登場事件から一週間が過ぎた。


カラオケ界隈では、僕の悪評が目立ってきていた。参加表明しても断られることが増えている。幹事同士で情報共有されているようで、「山田さんはちょっと...」という雰囲気を感じていた。


(ふざけるなよ...前回のことでそんなに騒ぐことないだろ)


僕の心の中で苛立ちが渦巻いていく。まるで全世界が自分に敵意を向けているような被害者意識が膨らんでいった。


(まゆの彼氏が医学部だったから僻んだだけじゃないか。それがそんなに悪いことか?)


(それに彼氏は勝ち組じゃないのか?俺みたいな負け組が僻むのは当然だろ)


(結局、みんなで寄ってたかって俺を排除しようとしてるんだ)


胸の奥で怒りがグツグツと煮えたぎっていく。理不尽だという思いが僕を支配していた。


僕は懲りずに、また新しいオフ会を探していた。今度は「英語会話練習会」というものを見つけた。


「少しは英語できた方が良いかもしれないし...」


でも本音は違う。女性参加者が多いと聞いたから参加を決めた。期待という名の妄想が心の中で踊り狂っていた。


ちなみに、僕の英語力は中学レベルがやっと理解できる程度だ。英会話なんて全く不可能に近いレベルだ。


美咲は僕の部屋で呆れた表情を見せていた。今度はため息すら出ないほど疲れ切っている様子だった。


「慎也、また同じことの繰り返しじゃない?」


声に深い疲労感が滲んでいる。


「今度は違うよ。英語の勉強が目的だから」


美咲はため息をついた。もはや諦めの境地だった。


「カラオケ界隈で悪評が目立ってるのは、前回のまゆちゃんの件だけじゃないでしょ?これまでの積み重ねが問題なのよ」


「最初のオフ会での『出会いがない』連発、さくらちゃんへの勝手な決めつけ、そして今回のまゆちゃんでの医学部彼氏への豹変...」


美咲の声に深い失望が込められていた。言葉に込められた悲しみが僕の胸に突き刺さるはずなのに、僕には届かない。


「毎回同じパターンを繰り返してるから、みんな警戒してるのよ」


「英語の勉強が目的なら、オンラインでもいいでしょ?」


美咲の鋭い指摘に、僕は苛立ちを隠せなかった。


「実際に人と話さないと上達しないでしょ」


美咲はため息をついた。もはや力なく肩を落としている。


「また出会い目的じゃないでしょうね...」


「そんなことないよ!前回の反省を活かして、今度こそちゃんとするから」


でも僕の心の中では、既に期待が膨らんでいた。胸の奥で高鳴る期待感が抑えきれない。


(英語ができる知的な女性と出会えるかも...それに女性との出会いも多そうだ)


【参加申し込みと規約確認】


インターネットで英語会の詳細を確認した。

- 主催者:大野

- 参加費:1回3000円(軽食、お酒あり)

- 参加者:8人程度

- 基本ルール:英語での会話練習、相互学習

- 参加者歓迎:初心者も気軽に参加してください。一緒に楽しみましょう。

- 重要な規約:男女の出会い目的での参加は禁止

- 注意事項:悪質な場合は、他の主催者にも情報共有いたします

- お願い:「女性参加者が多い」という噂で出会い目的の男性の参加が急増して困っております。純粋に英語学習を目的とした方のご参加をお待ちしています。


僕は規約を読みながら思った。心の中でほくそ笑んでいる自分がいた。


(出会い目的禁止か...まあ、建前としては英語学習だから問題ないでしょ)


「お願い」の部分を読んで、僕の心は躍った。まるで宝の在り処を知ったかのような興奮を覚えた。


(「女性参加者が多い」という噂...ということは本当に女性との出会いが多いということじゃないか!)


(出会い目的の男性が急増って、それだけ魅力的な場所ってことだよな)


僕の期待は大きく膨らんだ。むしろこの警告文が、僕の参加意欲を高める結果になった。完全に本末転倒だった。


美咲が僕の肩越しに画面を覗き込んだ。


「ちゃんと規約読んだ?『出会い目的禁止』って書いてあるわよ」


「しかも『女性参加者が多いという噂で出会い目的の男性の参加が急増して困っている』って、まさにあんたのことじゃない」


美咲の声に呆れが込められている。もはや怒りを通り越して諦めの境地だった。


「読んだよ。俺は英語の勉強が目的だから」


「本当に?」


美咲の疑いの眼差しが痛かった。その視線に心が刺されるような感覚を覚えた。


「本当だって!前回みたいに『出会いがない』なんて言わないから」


僕は申し込みボタンを押した。指先に微かな震えを感じながら。


【当日:会場到着】


英語会の会場は、駅前のバー「Bar & English Lounge」の2階だった。


夕方18:30からの開催で、バーらしくお酒も自由に飲めるし、からあげやスナックなどの軽食も用意されている。


参加者は8人。男性5人、女性3人。年齢層は20代後半から60代と幅広く、年配女性は60代後半くらいだった。


僕は受付でプロフィールを書いた。


- 名前:山田慎也

- 職業:会社員

- 英語レベル:初級〜中級

- 参加動機:英語力向上のため


(参加動機は嘘じゃない...一応)


僕は心の中で自分を納得させた。罪悪感を押し殺すように。


主催者の大野さんが説明を始めた。


「今日はありがとうございます。英語での会話練習が目的ですので、積極的に英語で話してください」


「それから、出会い目的での参加はご遠慮いただいております」


僕はドキッとしたが、平静を装った。冷や汗が背中を伝うのを感じた。


【グループ分けでの問題行動】


大野さんがグループ分けを発表した。


「グループA:山田さん、佐々木さん、高橋さん、西田さん、鈴木さん」


僕は他のメンバーを確認した。男性3人(僕含む)と、年配女性1人。


「グループB:大野さん(主催者)、伊藤さん、中村さん、松本さん」


グループBを見ると、男性2人(主催者含む)と、20代後半くらいの若い女性2人。


僕の心の中で警報が鳴った。失望感が胸を重く押し潰した。


(あれ...英会話会って女性の参加が多いんじゃないのか?もっとたくさん女性がいると思ってたのに...残念)


男性5人に対して女性3人。しかも1人は年配女性。ガックリした。膝から力が抜けるような落胆だった。


(これじゃあまり期待できないな...)


その様子を見ていた美咲は怒った表情を浮かべた。


「失礼じゃない!年配の方だって英語を学ぶ権利があるでしょ!」


「あんたのその考え方、本当に最低よ」


美咲の声が震えていた。もはや失望を通り越して憤りが込められている。


でも僕には美咲の声は聞こえない。僕は既に、どうやって若い女性のグループに入るかばかり考えていた。


(このグループつまらん!男ばっかりで年配女性。出会いにならない。せめてBグループに行きたい。)


でも、そんなことを直接言うわけにはいかない。何か理由が必要だった。心の中で必死に口実を探していた。


その時、グループAの男性の一人、佐々木さんを見て気づいた。


(あ、この人...確か以前のカラオケオフ会にいた人だ)


そのカラオケオフ会で僕は出禁になった経験があった。気まずい。胸の奥で嫌な記憶が蘇ってくる。


(いや、待てよ?これは好都合じゃない?むしろ利用させてもらおう)


僕は内心でほくそ笑んだ。狡猾な思考が頭を駆け巡った。


僕は大野さんに申し出た。


「すみません、実は、グループの中に気まずい関係の方がいまして...」


「え、そうなんですか?」


大野さんが困惑した表情を見せたが、おそらく善意の人だからこそ、僕の嘘に疑いを持たない。


「過去にちょっとしたトラブルがあって。もしよろしければ、グループBに移動できませんか?」


美咲は僕の行動を見て呆れていた。


「またそうやって都合の良い理由を作って...」


「英語の練習が目的じゃなかったの?」


美咲の声に深い失望が込められている。しかし僕にはその声は届かない。


予想通り、大野さんは親切だった。


「分かりました。それでは移動していただきましょう」


僕は内心でガッツポーズをした。胸の奥で勝利感が沸き上がった。


(よし!若い女性2人のグループに移れた!)


美咲は、さらに呆れていた。

「あー、本当に移動してしまった・・・。もし、女性陣に彼氏や旦那がいたらどうなってしまうんだろう?その後の展開が想像できてしまうから怖い」



【自己紹介での期待と失望】


グループBで自己紹介が始まった。


まず女性1人目、中村さん。


「私は中村です。英語を勉強して、将来は海外旅行をもっと楽しみたいと思っています。私には小学生の子どもがいて、一緒に海外に行けるように頑張りたいです」


僕の心の中で第一の警報が鳴った。まるで頭上に雷が落ちたような衝撃だった。


(え...既婚者?子持ち?)


続いて女性2人目、松本さん。


「松本です。実は今度、彼氏と結婚するんです。2週間後に新婚旅行でヨーロッパに行く予定なので、英語を練習したくて参加しました」


僕の血の気が引いた。目の前が真っ暗になるような絶望感に襲われた。


(え...婚約者?結局、既婚者と婚約者じゃないか!)


僕の表情が一気に暗くなった。またも出会いがない状況に直面したのだ。心の中で怒りと失望が混ざり合った複雑な感情が渦巻いた。


美咲は僕の顔色の変化を見て心配した。


「あ、また例の顔になった...」


「やっぱり出会い目的だったのね」


「英語の勉強が目的じゃなかったの?なんで男女比なんて気にしてるのよ」


美咲の声に深い悲しみが込められている。


僕の番になった。


「山田です。英語を...勉強したくて...」


声に元気がなかった。期待が一気に萎んでしまったからだ。まるで風船の空気が抜けていくような虚無感だった。


【英語会話での集中力欠如】


英語での会話練習が始まった。


僕は前回のオフ会事件を避けようと、極力我慢しようと努力した。でも、明らかに集中していなかった。相手の話をほとんど聞いていない。心ここにあらずの状態だった。


中村さんが話しかけてきた。


「My child loves to play soccer. He practices every weekend.」


僕は全く聞いていなかった。上の空で、心は既に他の場所にあった。


「Oh... nice weather today, isn't it?」


中村さんが困惑した。


「Excuse me? I was talking about my child's soccer...」


困惑の表情が顔に浮かんでいる。僕への失望が見て取れた。


続いて松本さんが話しかけてきた。


「We're planning to visit Paris for our honeymoon. I'm so excited!」


僕はパリの話なのに、なぜか東京の話をした。


「Yes... I like... Tokyo...」


松本さんも困惑した。呆れたような表情を浮かべている。


「Paris, not Tokyo. Are you listening to me?」


「Yes, yes... very interesting...」


僕は的外れな回答を連発した。実際は全く聞いていなかった。相手への敬意もない、最低の態度だった。


主催者の大野さんも首をかしげていた。


「山田さん、大丈夫ですか?」


「大丈夫です...」


でも全然大丈夫じゃなかった。心の中は失望感でいっぱいだった。

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