第31話 学年1の美少女

 普通科1年2組 学級委員長 前原祐美。


 黄金律と呼べる、均整とれた抜群のプロポーション。光沢眩い黒髪を背中まで伸ばしていて、切長目付きの超絶美女にも関わらず、常に柔らかな笑みを浮かべているから、人当たりの良い暖かな印象を与えてる。

 1年の1学期に、委員長指名を担任に受けてるから、入試成績がクラス1位なのは間違いない。その上で下ネタジョークにも理解があり、プールでも、「ご参タイムね!」と、セクシー系黒ビキニ姿で、グラビアアイドル並のちょいエロいポーズまでとってみせる。

 クラスでの人気はNo.1であり、カーストトップに君臨する姫将軍と呼べるべき存在。


 その彼女に、男子カーストトップと言える副委員長櫻井慎吾がアタックしたというのは、先日、一緒にプールへ行ったクラスメートは知ってる。


「先ずは、お友達から」


 前原の返事。

 断ってはいない?そう言い切れるのか?


 委員長って事もあり、前原のクラス男子への対応は、ほぼ中立的って言える。誰からの頼みも、確かにケースバイケースだけど、基本、断る事は無い。

 行事に対しては、ほぼ中心人物としてクラス中を仕切る。その手腕は見事なBIGマム。指示はわかり易く明確で、しかも的確・効率的。


 さぞかし、いいトコのお嬢様だろうって雰囲気あるけど、前原んちは、南駅前中央街内の個人経営ラーメン屋『麺や マエハラ』で、ここのチャーシュー麺は絶品。中学生ん時から偶に行く店で、その意味じゃ他校区男子の何名かは、開南高でクラスメートになる前から知り合いって者も多い。俺もそのウチの1人。

 前原の人当たりの良さは、ここの看板娘たる所以なんだろう。


 バイトの帰り。

 シフトの合間に帰省するからって、金井親娘は今日から休み。金井カナブンは残念がって「アタシがいなくても、ちゃんと食べてねー」って、お袋かよ。

 店前駐輪スペースにスクーターPCX停めて店内に入ったら、「いらっしゃいませー!」って前原の威勢のいい声に迎えられたんだ。


「あら、亀沢君じゃない。1人って珍しくない?」

「いや、俺もいつも金井カナブンと一緒ってワケじゃないよ」

「そう?クラスでもイチャイチャしてるって評判じゃない」

「言ってるの、柳谷だろ」

「そうね」


 言ってる間にカウンターに掛けて。

「いつもの?」

 前原に聞かれて頷く。俺も大概常連だよね。

「半チャーハンと焦がし醤油、煮卵付き」


 醤油に塩、味噌の基本3種に焦がしversionがある。しかも醤油は、濃口・薄口を選べるんだ。

 店主のオジサン前原パパのこだわり。前原も奥さん前原ママも面倒だし、寸胴鍋増えるしでメニューの整理を再三言ってるみたいだけどね。

 トッピングも煮卵やチャーシュー、モヤシ多めとか有るし、調味料も辣油や胡椒、おろしニンニクにウスターソースと豊富。


「あら、亀沢くん。久々じゃない。今日は1人?」

「さっき、祐美ちゃんにも聞かれましたよ」


 厨房にいるの、前原パパママ兄で店内でテーブル拭いたりお冷持ってきたりの前原祐美ちゃんだから、つまりは4人ともマエハラさんな訳で。

 まさかクラスメートになるなんて思ってもなかったから、俺は常連になった中学生中坊の頃から"祐美ちゃん"と呼んでた。

 学校では『前原さん』か『委員長』呼びにしてるけどね。


「クラスでも"祐美ちゃん"呼びでいいのに」

「ワザと金井カナブンと修羅場ろうとおもってない?」

「うーん。こんな早く文香と結ばれるなんて思わなかったなぁ。今からワンチャン有る?」

「無いよ」

「料理なら、文香にも負けないって思うけどなぁ」

「いや、自分のスペック、正しく認識しよーよ」

「あら。それは褒め言葉ってとるわよ」


 勿論、金井カナブンも俺と前原祐美ちゃんが、こんなやり取り出来る仲だって知ってる。何度も2人で食べに来たし。


 …初日は、そこそこ修羅場かけたけど…。


 何せ、祐美ちゃん、少し挑発したから…。

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