第9話 このカップルは理不尽?ほっとけ

 衝撃の幕開けで始まった月曜日。

 とは言え、教室移動とかもあり、休み時間では真偽の詳細を詰める訳にもいかず…。


 宮本ムツミ氷の剣姫三嶋陽介隠キャオタクの彼女。


 昼休みに、根掘り葉掘り聴きまくろう。

 クラス中が思っていた矢先の事。


 だが、それを察したのか、陽介ゴンは早々と姿を消していた。


 そして、俺も失念してた。

 ぼっちが手弁当を持って来てる意味を。


「ちょ、待てよー!どういうこった?カメ!」


 後ろの席の柳谷が、俺が開けた弁当箱を見て騒ぎ出す。


「それ、コンビニじゃねぇよな?購買部なんてボケかますなよ?」


 いつもなら一人飯の宮本も、事の詳細を話さざるをと思っているのか、前原達のグループでサンドイッチを広げていた。

 まさに、陽介ゴン宮本ムサシの交際が語られようとしていた時の、新たなる爆弾炸裂。


 笑っていいよ。

 彼女カナブンの手弁当を食える事に俺は浮かれてたんだ。


 ペットボトルのお茶を握り潰す勢いで、柳谷が俺に突っ込んでくる。


「ね、あのお弁当袋、フミカのと色違いよね?」

 同じグループで弁当を広げている前原が金井カナブンに問い掛ける。

「どうも、おかずも一緒見たいだし」

 量は兎も角、中味が変わらないのは一目瞭然。

「文チャン?」

 兎波や望月も金井カナブンを見て。

「うん、アタシが作ってユキヤに渡した」

「あら?名前呼びなのね」

 揶揄うように微笑む望月。

「ちょ、いつからなの?文チャン、カメを誑かしてるの?」

 勢い突っ込む兎波。

「なんで、そうなるのよー。普通にお付き合いしてるだけ!お弁当やご飯作ったり、お掃除お洗濯したり。だから」

 少し赤くなりながら、焦り気味の金井カナブン

「普通を超えてるわよ、フミカ。もう、通い妻じゃない」

 やはり揶揄う様な前原。と、我関せずとサンドイッチを食べる宮本。


 昼休みの教室は、別の意味で騒然となって。


「此間の金曜日、色々あって帰宅が遅れて土砂降りにあってさ。ユキヤんちで雨宿りさせてもらったの。そのお礼」

「雨宿り?え?文チャン、まさかカメんちに泊まったの?」


 連弾炸裂。


「マジかよ、カメぇ!どうなんだぁー‼︎」

 柳谷、血涙流してる様に見えるのは気のせい?

 こえーよ。


 まぁ、開き直るしかねぇから。

「いや、あの土砂降りじゃ仕方ないだろ?駅まで送るにしてもさ。外出無理っぽい降りだったじゃん。だから土曜日に送るしかなくてさ」

「泊まったのかよ」

「仕方ないだろ?で、今独り身freeって言うからさ。せっかくだし」

「泊まったのかよー!」

「びしょ濡れだったし。着替え渡して…さ」


 改めて金井カナブンを見た前原が、

「亀沢君ちで入浴したんだ。着替えって彼の?」

 聞いてくる。

「新しいTシャツとカットパンツ、貸してくれたよ。まぁ、彼シャツ姿位はお礼に見せてもバチは当たんないと思うけど」

「ほほう。つまり、文チャン、そのたわわなお胸をお礼に差し出した、と」

「ちょ、まどか?言い方」


 盛り上がる?女子グループの声。

 それを聞いて、男子からは怨嗟の声が響く。


「カメぇ!お前、カナブンπを味わったよかよ」

「まぁ、俺シャツ姿は堪能させてもらったけど…」


 言えない。

 シャツの中身も充分味わえさせてもらった事。


「とりあえず、今、金井カナブンは俺と付き合ってるって事で」

「くっ!カメといい陽介ゴンといい、時代は隠キャなのか?」


 何だよ、それ。


「それも聞かなきゃ、ね」

 前原が自然に宮本へ聞いて来て。

「隠してはいない。私と陽介は同じ中学で、今も同じ部活ロボ・コン同好会だ」


 ウチの学校は、運動部と文化部、1つずつ所属する事が可能だ。運動部の掛け持ちとかは出来ないし、文化系も同様。


「そうなの?」

「つまり、3人目は私」


 同好会設立には、部員3名以上が必要。

 ロボット工学オタクなんて、陽介ゴンと5組の高橋くらいしか思いつかないから、確かにコイツは盲点だ。


「あと、私は陽介の家、空手道場"健道館"の門下生だ。だから陽介とは幼馴染に近い」

「え?ムッちゃん、空手もやってたの?」

「空手が先だ。まぁ、剣道の方に私は才があったらしいが」


 昼休みは、騒然と過ぎていく。


 

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