第7話 月曜日からはイチャイチャ、の筈?

 週末、俺と金井カナブンは…、その、イチャイチャ過ごした。


 アイツは、学校でもイチャイチャしたいから交際を公表するって言って。

 面倒な気もするけど、その、笑われてもいい。

 アイツとイチャイチャする誘惑に抗えなかった。


 スクーターを駐輪場に停めて、クラスへと向かう。駐輪場は、職員室とか校長室、購買部なんかがある本館の横で、通常教室は1号館にある。

 1年のクラスは1階だけど、山手にある開南高校は各館が段々になってて。

 つまり本館2階の渡り廊下が1号館1階入口に繋がってる。

 で実験室や図書館、各種技術教室なんかは2号館なんだけど、その入口は1号館2階との渡り廊下に繋がってる造りになってるんだ。

 校庭や体育館、音楽講堂やプール、武道館は本館と変わらない高さになっていて。


 とにかく、移動するのに階段をほぼ使う形の校舎なんだ。


 で、7月の階段移動は朝とはいえ一汗かく感じなんだけど、何故か、今日の我等が1-2は、底冷えする様な雰囲気があって。


 クラスの後ろ、鞄棚の辺りにを持つ少女がいて。彼女が冷気を発してる?って位冷ややかな佇まいで…。


「おは…、って、何?」


 教室入った俺は、その異様な雰囲気に驚いて。

 休み時間とか、1人でボォーっとしてたりスマホ見てたりの隠キャぼっちとは言え、クラスに入る時くらいは挨拶してる。クラスメート達も「おっ、おはー!」とか「オッス」くらいは普通に返してくる。

 で、後ろの席の、俺よりはマシって言えるその他大勢男子(失礼)柳谷奨真が話しかけて来た。


「実はさ。金曜放課後に何人かでカラオケ行ったんだけどさ」


 そう言えば、礼儀?俺も誘われたな。

「ゴメン、バイトがある」

「だよなぁ」

 俺がバイトしてるのは、クラスの大概も知ってる。乗ってるスクーターがその証だったりするし。


 バイク通学免許取得は、学校の許可が必要。これは、どこの高校も一緒だろ。で、通常許可されるのは原付免許。

 でも俺が持ってるのは普通自動二輪免許。400ccバイクまで乗れる奴で、これ以上となると大型二輪免許になるけど、16歳ではまだ取得出来ない。

 バイト先の兎波運送ラビッツ・カーゴの就労申請書もあって、俺が配送バイトである事により普通二輪免許が必要な事を学校側が納得してくれた訳で。兎波社長が、現状俺の後見である事も後押ししてると思う。

 あまり目立ちたくない俺はスクーターPCXという125ccに乗ってる。原付よりは大きいけれど、ビッグスクーター250ccやマニュアル車よりは目を引かない。

 とは言え、バイク通学生が少ない現状、その中でも原付以外に乗る俺は、ココだけで見れば特別と言える。


 俺の特徴、これくらいだけどね。

 話、逸れたね。


「カラオケで、なんかあったの?」

「断りきれなかったんだろうな。今回、陽介ゴンも居たんだ」


 それは珍しい。


 ロボ・コン同好会の三嶋陽介は、俺とは違う意味で隠キャぼっちだ。電子工作オタクの陽介は、その集大成とも言えるロボ・コンに参加する為同好会を設立したツワモノだ。部活~同好会が成立する為には3人以上の部員が必要で、辿々しくロボット工学の楽しさを訴え、同好の士を見つけ出した彼は、市販キットに改良と独自プログラムを組んで、ロボ・コンに参加していた。

 …同好の士と固まり、他との交流は皆無と言える御仁~それが陽介なんだけど。


「で、その陽介ゴンがさ。こともあろうに宮本ムサシを"モトカノ"って言ってさ」


 はあ?


 宮本ムサシ~いや、本当はムツミなんだけど。ツに横棒入れてミの下の線を撥ねてって感じで。宮本に相待ってムサシと呼ばれる様になったんだとか。

 彼女は全中個人戦を制した少女剣士でもあって。

 金井カナブンよりも、やや背の高い、スレンダーな美少女なんだ。


 性格も孤高の姫なんだけど。


 そんな宮本が、陽介ゴンのモトカノ?

 マジで?

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