第14話 隠し出口
通常の古代遺跡ならば、扉は手で押したりして物理的に開けるものだ。
「この古代遺跡は一体……」
しかし、ここの仕掛けは明らかに違った。まるで見えない力が滑らかに扉を動かしているようだった。
「ネロちゃん。大丈夫?」
レトリールが心配そうに問いかけると、ネロは小さく頷いた。
「はいデス……でも、やっぱりこれ、あんまり好きじゃないデス……」
ヴラッドはその言葉に眉をひそめた。
「そりゃどういう意味だ?」
ネロは少し困ったように視線を落としながら、ぽつりと呟く。
「なんか、怖いデス……力を使うと、私じゃなくなるみたいで……」
レトリールはネロの小さな手をぎゅっと握りしめた。
「でも、使ってくれて助かったよ。ネロのおかげでここから出られるんだから」
「はいデス」
ネロは少しだけ表情を緩めたが、それでもどこか自分を納得させるように小さく頷いた。
遺跡の奥へと進むレトリールとネロ。道中、ひんやりとした空気が彼女たちの体にまとわりついていた。壁に刻まれた古代文字が、微かな魔力の明かりで浮かび上がっている。
レトリールは警戒しながらも、息を整えつつ前へ進んだ。
ネロが突然立ち止まり、壁に触れる。
「音声入力起動、コード入力――最短ルート、検索」
その瞬間、ネロが静かに呟いた古代文字が石壁を光らせた。隠されていた通路が現れ、その先には新たな道が広がっていた。
「一体、何が……」
「こりゃすげぇや」
ヴラッドとレトリールは驚きつつも、ネロを連れて通路を進む。
通路を抜けた先の広間で、レトリールはようやく腰を下ろした。ネロを抱き寄せながら、彼女は静かに呟く。
「ま、いっか。とにかく、無事でよかった」
「疲れてるとこ悪いが、休憩はあとだ」
「わかってるってば」
レトリールは不満げに立ち上がった。
ヴラッドは足元の瓦礫を慎重に踏みしめながら、再び周囲を見渡した。
「おい、これ……まじで抜け道っぽいな」
壁が開いた先は、細長い通路だった。遺跡の構造には詳しくないヴラッドだが、こうした裏口があってもおかしくはない。
「わぁ……こんなところがあるなんて」
レトリールが感嘆の声を漏らし、ネロは満足そうに胸を張った。
「これで、出口デス」
ネロは小さく呟き、そっと手を胸の前で握りしめた。
「すげぇもんだな」
ヴラッドは感心しながらも、警戒を解かず、壁の奥へと目を向ける。通路の先にはかすかに外の空気を感じさせる冷たい風が流れ込んでいた。
「よし、さっさと抜けるぞ」
そう言うや否や、ヴラッドは先頭に立ち、通路を進み始めた。
足元は不安定だったが、なんとか進めそうだった。
「よし、このまま行けば外に出られそうだ」
レトリールとネロも足早に後を追う。狭い通路を抜けると、遺跡の裏手に出たようだった。
冷たい空気が流れ込む。闇の中に、かすかに出口の光が見えた。
「やったぁ! 外デス!」
「んじゃ、さっさととんずらこくとするか」
ヴラッドが二人に逃走を促す。
それから三人はひっそりと開いた裏口から遺跡の外へと足を踏み出した。
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