第46話

「四宮さーん、何見てるんですか?⋯って、あっ、これ今やってるアニメですよね?」


「えっ、青乃さんも知ってるの!?」


「気になってるんですけど、1話ずつだと続き気になりすぎるんで、今は溜めてます」


「えっ、凄いなぁ〜私は我慢できずに見ちゃうんだよねぇ」


大好きな人と大好きな趣味の話をするって、めちゃくちゃ楽しい。

次もまた、一緒に来たいなぁ⋯⋯って、あっ、あれは!!?

目の前の棚から少し横に視線をずらした先にあったグッズに私の意識は奪われた。


あ、あ、青乃さんのアクスタ⋯!!?

いや、厳密に言うと青宮 晴のアクスタなんだけど、あれ、ここ前までアニメの棚だったよね!?

VTuberコーナーはもっとあっちに⋯⋯

そう思いながら、青宮晴のグッズがあった棚――VTuberコーナーの全体を見ようと少し後ろへ下がる。


「⋯⋯でっ、でっか!!!」


抑え気味に叫んだ声が青乃さんの耳にも届いたらしく、先程のアニメのコーナーからVTuberのコーナーに目線を動かす。


「おぉ〜これは見事ですねぇ」


感心の声色を発する青乃さんは、そう言いながら何かを探しているようで――って、


「それ私のアクスタ!!!」


「え?はい、そうですね」


⋯いや、え、うっ、なんでよりによって私のなの!!?

いや、嬉しいけど、嬉しいけどさ、なっ、なんか恥ずかしい!!!なんなんだこの気持ちは⋯!!

私のグッズ(いやまぁVTuberのだけどさ!!!)が商品化されて、それを好きな人が買う、ってなんかこれ、めちゃくちゃ照れる!!!


にしてもそっか、そうだよね。ここレオレインの棚だし、そりゃ私のグッズだってあるわけで、いや、でも、レオレインって人数多いし私のグッズなんてそんなに数も――


「あっ、四宮さんの缶バッジ売ってる!!こっちにはタペストリーまで!!!」


「えぇっ!?なっ、なんでこんなに出てるんだ!!」


「あ〜、四宮さん最近めちゃくちゃ登録者数伸びてるからじゃないですか?それをグッズ管理してくれてるさくちゃんが見逃すはずないですし」


さっ、桜見さん、仕事が早い⋯!!!


「っと、とりあえずタペストリーと、缶バッジ。あとアクスタは必須だし⋯」


「って、もしかして買うの!!?」


「?当たり前じゃないですか。私、黒宮 怜のガチ恋リスナーですよ」


私のグッズを両手でしっかりと握りしめている青乃さんのその眼光に、私は抵抗することができなかった。


「それに、四宮さんも買うでしょ?私のアクスタ」


「そっ、それはそうだけど⋯!!!」


「ならお互い様じゃないですか。ふふっ、なんかいいですね。お互いのグッズを買うって」


「⋯まぁ、恥ずかしいけどね」


「そりゃそうだ」


困り眉をして少し恥ずかしそうに笑う青乃さんは、そう言うとしゃがみ込んで下段の方に置かれた私の他のグッズを取って、カゴの中に入れた。

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