第11話

「お、おはようございます」


「あ、四宮さん!すみません、わざわざ。やっぱり直接話すほうがいいかなって」


「いえいえ全然!よ、よろしくお願いしますっ!」


今日は土曜日という事で、青乃さんと一緒にコラボの内容を決めます!

正直言って青乃さんが誘ってくれないと私一人で永遠に悩むことになってただろうから、助かったぁ⋯⋯

で、打ち合わせの場所は今回も青乃さんが決めてくれたんだけど⋯⋯こりゃまた良いカフェですわ。


白と水色で統一感のある店内は、そこかしこにある船や白い看板などの小物とうまくマッチしていておしゃれな雰囲気が出ている。

また、天井からぶら下がっている照明もちょうどいい明るさで、ゆったりリラックスできそう。

そう思いながらあたりを見渡していると、正面に座っている青乃さんと目が合った。

目元を緩め、コテンと顔を斜めにする。

かっ、可愛い子やぁ〜〜〜

もうとっくに同業の嫉妬などはなく、可愛い後輩という認識だ。


「おまたせしましたー、こちらブルーハワイジュースになりまーす」


「ありがとうございます!四宮さんは何か頼まないんですか?」


「ま、まだいいかな」


それにしても、薄い生地で涼しそうな白色ブラウスを着た青乃さんがなんかいつもより大人っぽく見える⋯

そして綺麗で青く透明感のあるブルハ(ブルーハワイジュース)がこりゃまたよく似合う。

いいねぇ、まだ5月だけどもう夏を感じるよぉ〜

目の前の光景をほんわかと見ていると、またもや青乃さんと目が合った。


「あの⋯」


あっ、やばい見すぎた!!?

なにか言われ―――


「私と、連絡先交換していただけませんか!!」


耳の少しを赤くして、膝の上に両手で拳を握りながら勢いよく青乃さんがそう言った。

良かったぁ〜、怒ってはないみたい。

ていうか、ん?連絡先?連絡先!!?


「えっ、いいの私で!?」


「はい!四宮さんが良いんです!」


「うえっ、あっ、ありがとうございます!よろしくお願いします!」


いやったぁぁぁぁ!!!!!

ついに初のV友ゲットだぁ!!!

喜びを噛み締めながら、カバンの中に入っていたスマホを取り出す。

レインを開くと、青乃さんが私にスマホの画面を見せてきた。


「こっちが仕事用、青宮 晴でこっちが青乃 奈緒です。両方登録してください!」


「わ、分かりました!」


表示されたQRコードを読み取る。

ふっ、仕事用のアイコンは青晴だけど個人用だと少しぽっちゃりした犬のアイコンだ。可愛い〜

にしても私は仕事でもバリバリ個人の使ってるけど、ちゃんと青乃さんは分けてるんだ。偉いなぁ。

そう思っていると、青乃さんが突然目の前で俯いた。


「?どうかしました?」


「⋯⋯ふっ、ふふっ、いや、あのっ、このアイコン、前に行われた黒宮似顔絵大会の時に、ご自身で描いたやつですよね。ちょっ、なんかこの顔ジワるんですよ、私すごく。ふ、ふふっ」


「そっ、そんなに笑います!?」


「いや、あの、一生懸命描いたのは伝わるんですけど、なんかこの虚無顔っていうか、ポケーってしてるのがほんと、ぶふっ、す、すいません。ちょっと、ツボに入っちゃいました。それに、こ、この真っ青な背景も絵を引き立てていてーーー」


「ちょっ、まずは落ち着きましょう!ほら、一旦深呼吸。吸ってー、吐いてー。ほら、ご一緒に!」


青乃さんは結構浅い人なのか、なかなかツボから抜け出せず、落ち着くまでに時間がかかった。

それにしても、こんな爆笑してるのは珍しいな。配信でもあんま見ないし、なんか新鮮だなぁ〜


「⋯⋯はぁ、笑ったぁ。⋯あ、褒めてますよ!個性的な絵で良いと思います!私は好きです!」


「それは褒めてるんですか、」


「はいっ!私のなかの独創的でセンスを感じられる絵のトップに君臨してるんですよ!」


そう自信満々に目を輝かせながら、前のめりに答える青乃さんを見て思わず顔がほころぶ。


「なんですか、それ」


「———っ」


「⋯どうしましたか?って、あ、またツボ入ります?」


「いっ、いえ、もう流石に、大丈夫です⋯!」


前のめりになっていた体を引っ込め、椅子に座り、顔と耳を真っ赤にさせながら俯き気味に青乃さんはそう言った。

なにかおかしなことでも言ったかな?いや、言ってないよな⋯⋯ま、いっか!


レインを開き、ぽっちゃり犬のアイコンをタップする。

えぇっと、“よろしくお願いします”っと。あっ、それとスタンプも⋯⋯⋯にしても、友達かぁ。私に友達⋯⋯

改めてまた実感する。段々と込み上げてくる嬉しさに、顔が少しニヤついた。

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