第14話 本格的な農業の開始です!

「さてさて何から育てようか」


 ジョンとハンスは食料品だけでなく、色々な作物の種や苗、それに寝具類を持ってきてくれた。


 私は別に良いが、ルルにはなるべく良い寝具を使って欲しかったたのでありがたい。


 今はオーガ達の服も砦に残っていたのを洗って使っているけど、増やしていけば少なくなるのは目に見えているからね。


 次におねだりするとしたら布類かな……こっちでも綿を育てるつもりだけど。


「種や苗があれば色々できるからね!」


 私はレンガで地中深くまで土壌の栄養が外に出ないように囲いを作ると、その中に土壌改善を行った土を入れて、たっぷりの水を撒く。


 これを複数箇所行っていく。


 さながら小型のプランテーション農園みたいな感じである。


 そこにオーガ達やジョン、ハンスを動員して作物の種を植えていく。


 とりあえず野球場くらいの面積を耕し、そこに作物の苗や種を植えていく。


「大豆に小麦、ナス、レタス、ホウレンソウ、トマト、ピーマン……リーキなんかも植えよう」


 季節も春半ばなので植物の種を植えるにはちょうどよい季節。


 それに土壌全体にたっぷり魔力を混ぜ込み、準備は完了。


 あとは水をあげるのを忘れなければ夏から秋には色々な作物が収穫できるだろう。


 あと勿論実験も行う。


 ダンジョンに作物を植えた場合、ランダムに品種が大きく変わってしまうことがある。


 これが良い方向に転がれば良いが、可食部位が減ったり、味が落ちたりする場合もある。


 ダンジョンで作物を育てる場合ゴーレムを使った栽培が適しているが、ゴーレムを大量に生成するのは魔力が豊富な私みたいな存在じゃ無いと駄目である。


 どうしたものかと悩んでいると、ジョンが


「地上の土をプランターに入れて、そこで育てるのはダメなんですかね?」


「それだ!」


 土は地上の物を使い、日光の代わりに光源となっている石を集める。


 特に地面と接していなくても育つスイカの様な作物で実験して成功すれば……ダンジョンの中でも栽培は可能ということになる。


 私は早速石で出来たプランターを幾つも用意し、柱を建て、スライムに潰されないようにプランターを柱に固定して串団子の様に柱、プランター、柱、プランターと段々にしていった。


 そしてプランターの近くに光る石を設置し、水はせっかく近くにあるので回復の泉の水と魔法で作った水で育ち方がどう変わるのか実験してみることに。


「さてさて、どう育ってくれるかな?」


 私は楽しみで仕方がないのだった。









「あ、あの〜クラーケン娘ですぅ……よろしくお願いしますぅ……」


 ルルが新しい種族に挑戦してみると言って、ミミックを捕まえてきて、黄金スライムと合体させてクラーケン娘を誕生させていた。


「ワハハ! 結構可愛い魔族の誕生だよ!」


 ミミックの中身がタコっぽいと思っていたが、魔族化させたらタコ娘になるとは……。


 容姿としては髪の毛が触手になっていて、赤い被り物をしている様に思える。


 顔は人型で、黒い隈が目の周りをゴーグルみたいに囲んでいる。


 体は赤いちゃんちゃんこを着ているみたいになっていた。


「一応分類は魚人だね」


「ふぇぇ、私魚人なんですか?」


 なんかおっとりというかおっちょこちょいみたいな感じがぷんぷんしてくる。


 名前はタコ子に決まり、本人も気に入ったらしい。


 オーガ達に比べるとタコ子はああ見えて頭が良いらしく、ルルが助手にすると息巻いていた。


 ちなみにタコ子は元同族のミミックを食べるのに躊躇が無く……というか好物らしく、時々ミミックの居る2階層の奥のフロアに行くと、ミミックを捕食しているタコ子が見れるとかなんとか……。


「そんな訳で、ダンジョンの中に研究施設を作りたいんだが、協力してはくれないかな? ワハハ」


 博士がタコ子を生み出した理由が、自身の手足となる人材を欲したってのもあるのと、やはりと言うか本格的に魔族生成の研究を進めたいらしい。


「地上に作ったら駄目なの?」


 と私が言うが、地上だと魔力の満ちているダンジョンの中よりも実験の成功率が下がってしまう可能性と黄金スライムが日光に当たると溶けてしまうのでダンジョンの中に研究施設を作りたいのらしい。


 1階層の真ん中の道を進んだ先が活用方法の決まっていない空間だったので、そこを与えることにして、ルルが研究施設を作っていくのだが、案の定私も駆り出された。


 主に資材集めに……。


 ダンジョンの壁や床を掘ると鉱石が出てくるのは知っていたが、大規模な採掘だと魔力の消費が激しくなる。


「私よりも魔力あるから手伝ってよ〜」


 ルルにこう言われるとしょうがないなで手伝ってしまう私が居る。


 というかルル美人だから美人に頼まれるとしょうがなく手伝ってしまうのがさがってやつだ。


 1階層の右の道の坑道が幾つもある様な空間が掘りやすいので、そこで魔法を使って採掘していく。


 それをオーガ達や空中に物を浮かべて運ぶことができるルビーやリリンが採掘した鉱石をどんどんルルの研究所予定地に運んでいく。


 ルルは魔法で作り出した坩堝に鉱石をどんどん入れて製錬させていき、それを加工して組み立てて、ルルが持ってきていたモンスター合体装置……魔族生成装置を複製していく。


 他にもスライムを保管しておくカプセルだったりも作っていく。


「ふう……とりあえずこれで研究設備は整ったかな……ワハハ」


 ダンジョン内にラボが出来上がり、ルルは嬉しそうに呟いた。


 私達は限界まで働かされてヘロヘロである。


「ミディア、ありがとう! ワハハ」


「ど、どういたしまして……」


 まぁルルが研究を進めることで、魔族の増員によってできることが増えるだろうし、将来的にダンジョンに籠もって耐えることになったとしても、使える技術になるだろうし、そもそもルルは研究者だけでなく錬金術も扱える技術者でもある。


 魔族が増えれば錬金術を扱える人材も出てくるかもしれないし、そうなれば武器や防具といった装備品開発にも力を注ぐことができるかもしれない。


 その為にラボ造りは必要だったと思うことにしたのだった。







 ジョンとハンスとオーガ達は第四階層の探索に取り掛かり、そこは妖精達の生息地だったらしく、妖精達も敵意が無ければ攻撃してこない比較的安全な生態をしていることが判明した。


 これで第一、第二、第四階層が安全、第三階層だけがやや危険であるという風に分かれていた。


 そして妖精達は言葉を操ることができるが、幼い言動かつ、魔法に強い適性があるが、未発達の頭脳が魔法の行使を妨げていると判断し、ルルがこれは新しい魔族の良い素材になると興奮気味に語っていた。


 そしてお菓子で協力してくれることになった妖精と黄金スライムを合成した結果、妖精の上位種で精霊と呼ばれる美しい女性の魔族が生み出されることになるのだった。

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