転生兄妹の異世界冒険譚 ~ブラコン妹を異世界に道連れした結果?~

紅色の図書館

第1章 転生編

第1話 エピローグ

 夏休みが始まった次の日。俺は我が最愛の妹とともに歩いている。今日は、明日のご飯を買いに近所のデパートまで買い物に行ってきたのだ。


 俺の名前は『白瀬しらせ けい』17歳で、高校2年生である。そして妹の『白瀬しらせ 花音かのん』は、12歳で、中学1年生だ。ものすごく可愛いので、変な輩が出てこないか、目を光らせている。


 実際、学校では一週間に一回は告白されているらしい。黒髪のショートカットで赤い瞳は反則級の可愛さである。俺としては周囲の人にその可愛さが知られて俺のもとから離れてしまうのではないのか心配で、絶対に守らなくてはならない大切な妹だ。

 幼い頃、両親が事故で他界してからは、一層可愛くなったように感じる。もっとも最近は尻に敷かれている感じもしないではないが。


そんな俺たちがなぜデパートに行っていたかというと、明日は妹の誕生日なのだ。五ヶ月前から貯めていた小遣いで買ってあげたプレゼントを抱えて家に帰っている最中だ。

 先程から、後ろで嬉しそうに歩いているのもそのためだ。ところどころ転びそうになっているのも、また可愛い。


 家からあと少しの交差点で、信号が青になるのを待っていると、花音が話しかけてきた。


「お兄ちゃん、明日の時間空いてる?」


「ああ、たぶん空いてると思う。……どうした?」

(頼られると嬉しすぎて顔に出そう……いや、出てない出てない……たぶん)


「あのね……ちょっとだけ、一緒に来てほしいところがあるんだけど……だめ、かな?」


「いいよ」

(......ハッ! つい可愛すぎて反射で答えてしまった!)


「やった、ありがと。楽しみにしてるね♪」


「お、おう」


 青になった信号をみて、渡りながら答えた。


 その時だった。妹を見ようと横を向いたとき、ある一台のEV車がこちらに速度を上げたまま、信号を無視して突っ込んできたのだ。


 ブレーキをかけようとする様子もなく、運転手は驚いた様子でこちらを見ている。そしてEV車は俺たちとぶつかった。一瞬のことだった。そのとき、色々な考えが頭の中を巡った。


 何が起きてる? なんで……止まらない?

 音が遠い。目の前の光景が現実じゃないみたいだった。

 あの車、こっちに来てる? 本当に?

 誰か、止めてくれよ――

 動けない。足が――動かない。


……あ。

ダメだ、これは――本当に死ぬ。

守らなきゃ。花音を――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る