第19話


第十九章 絶対神と二人の怒り


 床に押し付けられた神が、低くうめくように声を漏らした。

 「ーーーーのため…っ…

その子は……我らのものだ…っ…⁉︎」


 ゼノの目が細く光る。

 「……“我らのもの”? 

     もう一回言ってみろ。」


 神の全身から膨大な光が迸り、

僅かにゼノを弾き飛ばす。

 

 「不敬なる者よ…‼︎…貴様は――ッ!」


 その言葉が終わる前に、ゼノは床を蹴り再び神の懐に飛び込み、拳を叩き込んだ。

 「黙れ、アルナイルは“俺の”だ。」


 神殿全体が震えるほどの衝撃。

 だが次の瞬間、ゼノの腕の中でアルナイルの身体が淡く輝いた。


 「……ゼ……ノ……」


 小さな声と共に、アルナイルの瞳から色が落ち次いで“何か”が溢れ出す。

 白金の光がホールを満たし、

ゼノは直感した。――アルじゃない


 「……やっと……見つけた……この世界を……歪めた……“偽り”を。」


 幼い声が、まるで無限の深淵から響くように重なり合い、神を睨みつける。

 神の顔に初めて恐怖が走った。

 「まさか…そんなっ…“絶対神”…だとっ…!」


 アルナイルの身体を通して降りた

“本物の神”が、一歩踏み出す。

 その足取りに合わせて、大地が唸り、空間が軋んだ。


 ゼノはすぐに察し、笑う。この気配知っている気がする

 「……へぇ、アルじゃねぇな

でもまぁいい、 一緒にやるか?」


 白金の瞳が、ゼノを見た。そして、幼い唇が小さく微笑んだ。

 「えぇこの子を…守るためなら共に。」


 ゼノの黒と、絶対神の白金。

 相反する二つの力が交わり、踏みつけられた“偽りの神”に向かう。


 「――ぶっ潰すぞ。」

 「……ええ。」


 次の瞬間、神殿に轟音が響き渡り、偽りの神の悲鳴が木霊した。


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