第40話:開演! 皇紀2602年の|総火演《陸軍記念日》と|観艦式《海軍記念日》

 1942年、3年後の万国博覧会が大阪に確定した時期の頃である。第37回陸軍記念日の式典が行われ、年ごとの装備発表会が開催された。勿論、戦時ではないため年ごとに航空機の更新などといったことは行われなかったものの、昨年に発表された「隼」ことキ43や一昨年に制作が発表された「チハ」こと九七式中戦車の不備を洗い出した改良型、百式中戦車、愛称乃至制式符帳はやはり「チホ」だろうか、などの新型兵器がそろい踏みの行進が行われ、臣民だけではなく間諜も兼ねてではあろうが諸外国も注目していたほどであった。まあ、尤も、再来月の海軍記念日で行われた観艦式があまりに有名であるため覚えている方は当時の閲覧者以外ではあまり存在しないかもしれないが……。


さて、折角だからチホこと百式中戦車のスペックでも公開しようと思ったが、さすがに紙面の問題から字数稼ぎと思われても拙いため、要望が多ければ次回で記してみたいと思う。


 この陸軍記念日で特徴的だったものがもう一つ存在する。愛国号こと寄付による機体や車輌に限って、とされていたが、ノーズアートを描くことを許す、という許認可指示であった。つまりは、金さえ出せば絶好の広告塔となりうる、というわけである。

 勿論、軍部もまたそれを心得たものらしく、当初質問で「社号や社印などでもいいのか」と言うものに対して「兵器として運用する関係上、撃破されて無駄になっても良いのならば、いくらでも描いて宜しい」という鷹揚な態度で返答したという。

 以後、暫くは陸軍も海軍も、平時予算のままの運用である関係上から兵器及び予算の寄付を呼び込むためにそのような行動を行っていたのだが、ある艦艇が海軍記念日での観艦式の際に海軍将校はもちろんのこと、諸外国の、つまりは観艦式に軍艦を派遣した観戦武官も度肝を抜く事態になったのだが、それを知る者は今、まだ誰も居ない……。

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