第15話:軍艦武蔵
盛大に軍楽隊の演奏が鳴り響く中、大和型二番艦、通称「武蔵」の起工式が執り行われた。それは言うまでも無く抑止力のためであり、軍艦大和同様に第一艦隊を構成するための、ただの戦艦であった。我々の世界のように神秘をまとうことは無かったが、それは裏を返せば長門型の後継として存分に大日本帝国のアイドルとして周囲の人間の記憶に残ることとなる。どちらが艦艇にとって幸せなのかは、諸兄諸姉の判断に委ねたいと思う。
さて、これで終わっても佳いのだが、折角なのでこの世界の大和型というものの存在について語りたいと思う。何せ、彼女らは我々の世界と違い、永遠に語り継がれるであろう神秘と引き換えに、隠し子のような扱いでは無く正々堂々と海原を歩くことを許されたのだ。そして、着目すべきはパナマックスサイズをオーバーすることを敢えて公言したことである。だが、これは裏を返せばこの戦艦によってアメリカ合衆国の東海岸を襲うことはありませんよ、というアピールでもあった。そう、ルーズベルトさえ居なければ、日米間の緊張は激しくなることはあり得ないのだ。
むしろ、日米間の緊張を解きほぐすために敢えて大日本帝国は大和型の存在を公言したとすら言われている。
そして、此に柳眉を深くしたのは実はアメリカ合衆国ではなかった。そう、その国とは、実はフランスであった。何せ、彼らの植民地にほど近い九龍油田は大日本帝国の所有権が無事認められ、即ち作戦行動圏内となったのだ、彼らがその巨大戦艦の一報を聞いた際に大日本帝国へ「(大和型戦艦が)イギリスの味方になることはないだろうね」と訊ねたくらいなのだ、余程恐ろしかったと見える。また、それに対しての大日本帝国の返しがエッジの効いたものであり、「貴国とイギリスの仲が悪いのならば、何故先の大戦で同盟関係を組んだのですか?」である。すさまじい皮肉であった。そして、この武蔵建造の場で、更なる衝撃的事実が発表されることとなる。
……大和型戦艦の、追加建造予定および、同戦艦の廉価版の販売予告である……。
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