第11話:軍艦大和
1937年11月4日、大日本帝国が新型戦艦を起工したというニュースは直ちに列強に伝わった。否、敢えて大日本帝国はそれを列強に伝えたのだ。それは、大日本帝国らしく緻密な作戦に基づいたものであった。
「……本気かね」
ネヴィル・チェンバレンは石井菊次郎と会っていた。互いに、高齢ではあったがロートルではなくまだまだベテランの域にあった。
「これを、貴国に真っ先に伝えた意図が解らぬ程貴公は愚者では御座いますまい」
伝えた情報、それはイギリスにとって非常に価値の高い情報であった。無論、その対価もまた、高かった。
「……なんともやれやれ、大日本帝国が平和を維持するための努力を行っていることは理解した。要求は何だね」
「日英同盟の復活と、国際連盟への復帰」
そして、石井菊次郎は遂にネヴィル・チェンバレンとある密約を交わすことになる。
「……高く付くよ?」
「承知の上」
「……なんともやれやれ……」
……そう、この世界における大和は飽くまでも「見せ金」、即ち抑止力としての起工であった。さすがに詳しいカタログ・データこそ非公開であったものの、その存在は如何にも強大であった。そして……。
「以上を持って、大日本帝国の国際連盟への復帰を勧告する!」
~ 1938年の国連決議より
1938年1月のことである。国際連盟より大日本帝国へ復帰の勧告が行われた。通称、「昭和十三年の奇瑞」である。
この要請を受け、大日本帝国は国際連盟へと復帰。流石に常任理事国へ即時復帰とはいかなかったものの、時間の問題であった。
そして、この時期にはもう一つの「奇瑞」が存在していた。それは……。
1938年1月19日、満州は黒竜江省にて。
「本当か」
「ほぼ、間違いなく」
「でかした!!」
……通称、「満州某重大事件」と称される、大規模な油田地帯の発見である。さらに、間の良いことに作戦行動圏内にもうひとつ、海底油田が発見された。通称、「九龍油田」である。この二つの油田は大日本帝国の国力を大いに助けることとなる。
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