第5話 京都の市バス、なんとかならんの…?
「ひゃああ〜高い」
熊手にぶら下がり、レピディアの腕に抱えられているミラが嬉しそうな声を上げる。
「ねえねえ、ここ何処なの?あのいっぱい建ってるのは建物?道みたいなのを箱が走ってる!馬も牛もいないんだ……あ!緑の大きな箱もある!箱は何なの?」
「あれは車と言って、人間達が古代の動植物の死骸が変化した化石燃料を掘り出して燃料とし、馬車や牛車の代わりの乗り物として使っている。緑の箱は悪名高い京都市バスだ。最近外国人観光客が増えて地元民が乗れない上に恐ろしく遅れるから使い物にならない……」
「えっ?ここって魔法の国なの?」
「まあ、ある意味そうかな……」
その内、何故かミラがどんどん重くなって来た。
「おい、ミラ、重いぞ……あっ!」
彼女は先程までの、美しいが萎れた感じの身体ではなく、3500年前の頃の様な生き生きとした少女に戻っていた。
肌や髪が艶々としていて、ボロ布の様だった古代エジプトの衣装、シースドレスまでが新品となりキラキラと生地が輝いている。
「ああ、あたしなんだかお肌がカサカサしてるから空気中の水蒸気を使ったんだ」
ミラが満面の笑みで言う。
「お前、初夏から夏に掛けての京都の壊滅的な湿度を利用するとは……く、それにしても重い……」
呆れたレピディアが言った時だった。
[もう無理っすわ……姐さん……]
重くなり過ぎた2人を支えていた熊手の今際の際の声がした。
次の瞬間熊手はボキリと折れ、2人の魔女は真っ逆様に川べりに堕ちて行った。
「う、うわああああぁ!!」
ズドンと音をさせて川横の遊歩道に落ちる。
川沿いで休む観光客達の食べ物を、横取りする為に飛び回っていたトンビが驚いて逃げた。
「あいたたたた……」
2人がお互いに打った場所を押さえて立ち上がった。
ミラが周りを見回して言う。
「ちょうど川があるじゃん!戦おう!」
「お前なあ……」
「よし!来い!ナイル!!」
彼女は手を挙げて命令する。
しかし当然ながら何も起こらない。
「……あれ?ナイル?返事しろよ聖なるナイル川!!」
[……アンタ何言うたはるん……]
川から返事がした。
[ナイル川てなんなん?うちは由緒正しい【鴨川】や……]
「鴨川?川って全部ナイル川じゃないの?」
ミラが驚いて返す。
[そんな……こっから9,500km程離れてる国の川の話されてもなぁ……ここが何処やよう知らへんの?]
「無駄に博識な川の声キタ!!ここ、エジプトじゃないの?」
[ちごてる(違ってる)。ここは日本や」
「ニホン?!異界?」
[そうとも言われる]
「言われてない言われてない。ちょ、川と話してないで……はあ、しょうがないな。一戦やらないと気が済まないようだな」
レピディアが口を挟んだ。
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