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西川茜

第1話

小島を両脇において水平線と空をふたつに分けた遠浅のビーチ。穏やかな海。『石垣島』

私はきっと彼と手を握り、彼は私のペースに合わせてゆっくりビーチの端から端まで散歩する。昔は恥ずかしがって滅多に手を繋がなかった彼なのに、今はお互いシワシワのシミが濃くなった手は柔らかくて暖かい。私は足の裏に砂がじゃりじゃり入るのが嫌だからビーサンを脱いではだしになる。足裏で、指の隙間で砂を感じる。温度を感じる。それは、朝早くの眩しい時でもいいし、ゆっくり身を水平線に隠す夕陽のオレンジ色に染る空の時でもいい。

「お散歩行かない?」とビーチを指さす。いつもみたいに優しく彼が「いいよ」と言ってくれる。私は「いいの?」と顔をのぞき込む。いつも彼はほとんどのことを優しく許してくれる。

今までもそうだっけど、ふたりの生活になってからは特に。


彼は私を甘やかす。私はそれに甘える。

今までもこれからも。


『子どもたちが自立してふたりになったらゆっくりしようね』

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