ー2章ー 14話 「小さな巨人と、積まれた罪の壁」

その地鳴りにも似た足音は、まさに探していたロックゴーレムだった!


ロックゴーレムが姿を現すと、リュウジは思わず身構えた。

ウルフは臨戦態勢に入り、リュウジの前で威嚇する!


だが、目の前に現れたその姿は――


予想外にも、リュウジよりも一回り小さな、小学生くらいの大きさのロックゴーレムだった。


想像していたのとはあまりにも違い、思わず拍子抜けしてしまった。


【リュウジ】「え?これ……君、ロックゴーレムなのか?」


小さなゴーレムはしっかりと目を合わせると、うん、と頷いた。


【リュウジ】「ひょっとして……お父さんかお母さんがいるのか?」


想像していたイメージとは、あまりにかけ離れた大きさにリュウジは思わず聞いてみる。

するとゴーレムはしばらく黙ってから、静かに答えた。


【ロックゴーレム】「ここには、オレしかいない」


リュウジは驚いた表情を浮かべた。


【リュウジ】「それにしても、こんなに小さいなんて……まさかお前が、あの岩壁を作った……なんて言わないよな?」


【ロックゴーレム】「アレはオレが作った。そしたら小さくなった」


リュウジの目がさらに大きく見開かれる。


【リュウジ】「え?そんなことができるのか………。で、なんで岩壁なんて作ったんだ?人も襲うって聞いたぞ?」


【ロックゴーレム】「オレ、王都の近くの岩山で静かに住んでいた。王都の人間たちが魔物を追いやったから、そこには住めなくなった。そして、ここに流れ着いた。でも、元々住んでたゴブリンやここを通る人間たち、うるさい!……だから岩を積んで、ここ通る人間威嚇した」


その言葉に、リュウジは納得しきれない。


(また王都の話か……スライムたちもそんな事言ってたな)


【リュウジ】「お前の気持ちはよく分かった。ただ静かに暮らしたいだけなんだろ?」


【ロックゴーレム】「そうだ。ここなら静かに暮らせると思った。でもうるさい。だから岩壁作った。オレは、生きるためにやったことだ!」


リュウジはその言葉をじっと聞きながら考える。


(ホノエ村同様、被害者が、新たな被害者を作る……しかも、まるで人為的に……この構造、何か頭にくるな!)


リュウジは心の底で怒っている自分に気がつく。


【リュウジ】「よし、分かった。いつか必ずお前の住んでた岩山を取り返してやる。約束だ」


【ロックゴーレム】「本当か?」


リュウジの真剣な眼差しにロックゴーレムの気持ちが少しだけ軟化した。

その時、風が吹きリュウジの首元のネックレスが少しだけ姿を見せる。


【ロックゴーレム】「!?ソレはドラゴン様の………!」


リュウジは身につけてはいるが、ネックレスの力が魔物を萎縮させる気がして、できるだけ隠すようにしていた……が、風が吹き、結局ロックゴーレムにバレてしまった。


【リュウジ】「あはは………いやぁ…これに頼らずに解決したかったんだけど…まぁ、仕方ない!」


リュウジは少し黙ってから、真剣な表情で話し始めた。


【リュウジ】「お前の気持ちや言い分は分かった。でもな、あの岩壁のせいでゴブリンは食べ物を失い、何の関係もない近くの村まで被害が出た。お前だけが悪い訳じゃないが、岩壁さえなければこんな被害は出ていなかったんだ」


ロックゴーレムは少し考え込み、それから頷いた。


【ロックゴーレム】「オレが悪かった……どうすれば良い?分からない」


リュウジは安堵した表情を浮かべた。


【リュウジ】「じゃぁ、俺も一緒に行ってやるから、ゴブリンたちに謝りに行こう。まずはそこからだな!」


【ロックゴーレム】「分かった。ドラゴンの友が言うなら従う」


【リュウジ】「いや、友達みたいなもんだけど、そんなんじゃないから!……まぁいいか」


そもそもの問題解決にはならないが、この周辺での問題は何とかなりそうだとリュウジは思った。


【リュウジ】「よし!じゃぁ行くぞー。ウルフも一緒に頼むな!」


【ウルフ】「お任せ下さい!リュウジ様!」


新たな被害者(魔物)との出会い。

なぜ魔物が住処を追われなければならないのか。

疑問と怒りを心にしまい込んで、リュウジはキングの元へ向かうのだった。

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