ー1章ー 20話 「ウルフ車、爆誕!――動力なき村に走る牙の車」

村に戻った俺は、まずじいさんのところへ向かった。


【リュウジ】「じいさん、相談があるんだけど、荷車って余ってないか?」


【じいさん】「ふむ、 それはまた急じゃの。何か運ぶのか?」


【リュウジ】「あぁ。川の工事で出た残土を、ミズハ村で使いたいって話が出ててさ。量が多いし、何か運ぶ手段が必要なんだ」


【じいさん】「なるほどな。ふむ……そうじゃな、古い荷車なら一台、倉庫に眠っておるぞ。ちと修理が必要かもしれんが、使えんこともなかろう」


【リュウジ】「ホントに!? 助かるよ!」


俺は早速その荷車を見に行き、多少の修理を施して使えるように整えた。


だが、次の問題は──動力だ。


【リュウジ】「人が引くには重すぎるし、馬もいない……となれば……」


俺は思い浮かべた。

あの頼もしい隣人たちを。


【リュウジ】「ウルフたち、やってくれるかなぁ……?」


森の奥、ウルフたちの縄張りを訪ねると、ちょうどクラウガとリュナが子どもたちと見回りをしているところだった。


【クラウガ】「ん?リュウジか。何か用か?」


【リュウジ】「クラウガ、ちょっとお願いがあって来たんだ。実は川の工事で出た土を、荷車に乗せてミズハ村まで運びたいんだけど……ウルフたちに引いてもらえないかな?」


【クラウガ】「なっ!? 我らを馬の代わりにすると言うのか!?」


【リュナ】「ふふ、それはまた面白い話ね」


少し怒った様子だったが、恩に厚いクラウガは、全部話を聞いてから判断しようと、リュウジの話に耳を傾けることにした。


【リュウジ】「ごめん! そんなつもりはないんだけど、この荒地だろ? それに、この辺りには野生の馬さえいないんだ。この森にも川を引いてやりたいし………な? 力ありそうなの、お前らだけなんだ! 頼む!」


クラウガはしばらく黙って俺を見つめた後、くすっと笑った。


【クラウガ】「ふっ、いいだろう。我らはこの森に暮らす者。隣人のために一肌脱ぐのも悪くない。だが、条件がある」


【リュウジ】「え、条件?」


【クラウガ】「“ウルフ車”と名付けよ」


「え!?」 と思った。

予想に反して乗り気になってくれてる!? と。


【リュウジ】「あ……って、それでいいの!? もっと厳しい条件かと思った!」


【クラウガ】「ははっ、冗談だ。好きに呼べばいい。数頭、手の空いた若者を貸そう。信頼できるやつらだ」


【リュウジ】「ありがとう! 助かるよ!」


数日後、川の整備現場には荷車を引く2頭の大きなウルフの姿があった。


【村人A】「うおぉ……! ウルフが、荷車を……! しかも、デカい………!」


【村人B】「あんなにスムーズに引くとはな……こりゃぁ、馬より頼もしいじゃねぇか!」


俺はウルフの背を撫でながら、そっと言った。


【リュウジ】「ありがとうな、お前ら……おかげで工事が加速するぜ!」


ウルフたちは誇らしげに鼻を鳴らし、再び荷車を引いて走り出した。


こうして、“ウルフ車”という前代未聞の輸送手段が、この地に誕生したのだった。

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